見出し画像

長男とバレーボール1

 「先生、うちの子バレーボール打つみたいな動きするんです。まだ小さいのにこの動きって身体に無理がかかりませんか?」

 これは実際に私が小児科の先生に長男のことを相談した時のセリフである。今思えばこんな質問されて先生も困っただろう。「別に無理やりさせてなければ…」とポカンとした先生の顔を今も思い出す。でも、当時の私にとっては本当に真面目な質問だった。それくらい長男のバレーボール狂いは常軌を逸していて、それが現在(小学1年生)まで続いている。

 きっかけは石川祐希選手の春高バレーの映像だった。ハードディスク整理のためにたまたま録画していた2014年春高バレーを再生した時。長男はまだ1歳8ヶ月くらいだったと思う。一瞬にしてテレビに駆け寄り舐めるように画面に見入っていた。ていうか、実際ちょっと画面も舐めてたし。それからはもう毎日その映像を見せろとせがみ、男子決勝が終わると「いしかあ、もおかっい」とリピート再生。その年の女子決勝、九州文化学園VS東九州龍谷の熱戦に私は心打たれていたのだか、その映像まで辿り着くことは稀だった。当時住んでいた2DKのアパートの和室で流れていたのはアンパンマンでもおかあさんと一緒でもなく石川祐希。畳の上でバレーボールの真似事を始めたのもこの頃からだった。

 長男のバレーボール狂いを私たち両親が好意的に受け入れていたかといえば正直言って否だった。この頃の旦那はバレーボールが嫌いになっていたし(彼のバレー経歴については個人を特定されるものなので割愛する)、私自身も幼い頃は色んなことを体験して欲しかったし、そもそもバレーボールってこんな小さい子がやるスポーツなの!?という気持ちでいたので、どうにか他のものに興味を持ってほしくて毎日毎日バレー鑑賞とボール遊びに興じる長男に一生懸命に他の遊びを勧めたりしていた。私としてはできればピアノとかダンスとか習わせたかった。私、中学生の頃にゆずの『夏色』を鼻唄で歌ってたら友達に「私も好きだよ、T.M.Revolution!」て言われたことあるくらいの音痴なんで憧れなんですよね、音楽できる子って。しかし、色々と勧めたりした中でたまにやってみてはくれるものの長男にとってバレーボール以上にヒットするものはなかった。

 そんな風に長男がバレーボールに狂いながら、誰からも相手して貰えずに過ごした期間は実に2年半。正直、どっかで飽きるだろうと思っていた。しかし、彼は数字や仮面ライダー(戦いごっこではなく図鑑等でひたすらに名称を覚える)、ポケモンといったものに興味を示してくれるようになったものの、相変わらず中心にはバレーボール。途中、偶然にも福山汰一選手という長男のどストライクイケメンに出会いVリーグにハマり、母子で観戦に行ったりして、4歳になる頃にも彼のエネルギーはいつもバレーボールに向けられていた。この頃には旦那も私も他の遊びや習い事を勧めたりすることは諦めていたが、同時にまだバレーボールの相手をしたりすることはほぼなかった。長男はバレーボールする時はもうずっとひとり。幼稚園に入る前だったのでお友達も少なく、本当にひとりでボール遊びしている映像や写真が多く残っている。

 我が家に転機が訪れたのは長男が幼稚園に入園した年だった。旦那が中学校の男子バレーボール部の顧問になったのだ。今までは女子部しかない学校にいて「女子の指導はできないから」とバレーボールから遠ざかっていた。それがこの時期に初めて男子バレーボール部の指導に携わることになり、旦那自身が再びバレーボールを受け入れていった。


この記事が参加している募集

#育児日記

49,725件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?