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2022年に見た美術展の感想

昨年見た美術展を振り返り、感想を綴る。
展示のジャンルは絵画、写真、立体、工芸品など何でもあり。思い出したことがあったら順次追記していく。

ミケル・バルセロ展(東京オペラシティ)

これはよかった。去年観た中で3本の指に入る展示。
古典時代のような大らかさと雄大さを感じる絵画の数々が並んでいた。一部立体の作品もあった。

圧巻は、油画の大型の作品。騙し絵のようにさえ見えるほど荒々しく画面から盛り上がった絵の具。伸び伸びとしてまさに雄渾な作品が多く、難しいことを考えずに目でなぞるだけでも楽しめた。


ゲルハルト・リヒター展(国立近代美術館)

こちらもバルセロに並んで巨匠の展示。現代最高峰の作家と聞いていたのでだいぶ期待感が高く、半年前からフライヤーを部屋に貼ってニタニタしていた。同じアブストラクトペインティングでも圧迫感があったり遠近感を感じられたりと、異なる効果が生まれていた。

「ビルケナウ」などテーマがかなり重く、描かれているものに対して無自覚に目を動かしているだけでは後ろめたくなる感覚があった。


アヴァンガルド勃興 近代日本の前衛写真(東京都写真美術館)

奇抜にして洒脱、ときに愉快なモノクロプリントの展示。多くは戦前に制作されており、戦争さえなければ…この後にどれだけ豊かな作品群が生まれたのだろうという呟きが思わず溢れる。
地方の写真家コミュニティがこうした前衛作品制作の母体を支えており、中には戦後にも活動を継続した団体もあったようだ。

最後の展示が東松照明が終戦の日の太陽を撮った写真だったと記憶している。


第46回木村伊兵衛写真賞受賞作品展 吉田志穂展(ニコンプラザ東京)

2021年の都写美の新進展で目にして気になっていた方の展示。ややこじんまりとした展示ではあったが、インスタレーションという特性上スペースの制約で展示数が限られてしまったのかもしれない。


石が降る──二人(横田大輔、宇田川直寛)展(TALION GALLERY)

一見すると写真展には見えない、印画紙の折り紙や、画材がホルマリン漬けとなったような物質的な作品が並ぶ。
印画紙を折って作られたポケモンの「折り紙(?)」が肌のような肉のような色をしていて妙に生々しかった。人造人間を作り出そうと意気込むかのような、横田さんの「錬金術」と、いうテーマが見え隠れする。


ジャム・セッション 石橋財団コレクション×柴田敏雄×鈴木理策 写真と絵画−セザンヌより 柴田敏雄と鈴木理策(アーティゾン美術館)

こちらも今年のベスト3に入る展示。いまだに部屋にポスターを飾っている。特に柴田敏雄の美しく、構図が厳格な風景写真に見とれた。郊外の道路斜面や、山奥のダムを堤防から眺めた風景など、人工建造物の無機質さの中に見え隠れする幾何学的な美しさは、頻繁に目にしている、ともすれば退屈にも感じられる風景の中にも、造形面の美しさが宿っているということを伝えているように思われた。海外から日本に訪れた人たちの眼にはこの風景はどう映るのだろうか。そんな疑問も浮かぶ。日本各地にこのような無名の彫刻作品(?)があると思うと、これから何の変哲もない郊外を旅する時にもちょっとした楽しみがあるというものだ。

渡部さとる写真展 午後の最後の日射(ギャラリー冬青)

プリントが美し過ぎて、額がつきそうなほど顔を近づけてしまった。モノクロプリントは微粒子の砂絵のようなものだと思うが、限られた解像度しかない眼にとっては、無限に奥行きがありそうな一枚というものもある。渡部さとるさんご本人も在廊していたが緊張してしまい話しかけられなかった。


フィン・ユールとデンマークの椅子(東京都美術館)

自分にしては珍しく工芸品を観る展示。椅子と一口に行ってもその形状はさまざま。華奢で優美でどこか骨のようで危なげな曲線を持ったものから、北欧の人々のがっしりとした体型を余さず包み込む、頑丈なものまで。

実際に座ることもでき、作品鑑賞を楽しむだけでなく部屋に置きたくなること請け合いの展示だった。



イメージ・メイキングを分解する(東京都写真美術館)

アート・エクス・マキナの版画が特に好きだった。幾何学的で複雑な構成の平面ではあるが、デジタルに出力されたものではなく、版画として作られているため、どこか手仕事の味わいが残っている。自分の持てる几帳面さとまめまめしさの限界ラインを発揮できれば何とか作れそうな感覚があり、手を伸ばしたくなってしまった。


見るは触れる 日本の新進作家 vol. 18(東京都写真美術館)

書きかけの感想の記事がある。続きはいつ書くことになるのやら…。


メメント・モリと写真──死は何を照らし出すのか(東京都写真美術館)


死というテーマのもと、ペスト流行時代の銅版画から、一度は名前を聞いたことがある作家の著名な写真のプリントまで(ダイアン・アーバスの双子の写真があった!「シャイニング」の双子の元ネタになったと言われる写真だ)、満足感が得られる展示だった。


コレクション Highlight ジョゼフ・コーネル─新収蔵品を迎えて─(DIC 川村記念美術館)

しみじみと眺めていたくなる小品の数々だった。経年劣化のようで美しい紋様のようでもある作品表面のひび割れ。秩序と偶然性が入り混じった感じ。想像力を刺激される余白の使い方。この日は初めて茶室で抹茶をいただいた。ススキを眺めながら一服したのを思い出す。


マン・レイのオブジェ(DIC 川村記念美術館)

渡部さとるさんが、最近マン・レイの写真がオークション最高落札額の記録を更新したと言っていたっけ。
後半はビートたけしを彷彿とさせるナンセンスさを感じるオブジェの連続で、マン・レイは意外とコメディアン気質なのかもと思わせた。


国立新美術館15周年記念 李禹煥(国立新美術館)

絶妙に館内の展示スペースの配置からズラされ、配置された展示。未加工で、あるがままで、悪くいえばただあるだけの展示、剥き出しの野菜が皿の上に並んでいる展示。
現代美術はコンテキストと作者の営為を探ることにあると思っている筆者にとっては、逆にすべての些末なズレがなんらかのメッセージに思えてきて、フリーズしがちな鑑賞体験だった。今年の展示でいうと大竹伸朗と真反対に位置している。


展覧会 岡本太郎(東京都美術館)

岡本太郎というとどの作家にも影響力を受けていなさそうなイメージがあった。過去と隔絶した作品を作っているんじゃないかということ。まさに本人のいうところの「何だ、これは!」という訳だが、そうはいっても一定の量の作品を眺めてみると、おや、これはもしやカンディンスキー?というように誰かの影響が見えてきて、ちょっとだけ作家の系譜を書けるような気がしてくるのだった。


写真展「はじめての、牛腸茂雄。」(渋谷PARCO・ほぼ日曜日)

画面全体にピントが合い、モノクロプリントの美しさを余さず伝えながら、どこかもの寂しく影のある被写体が多かった。


大竹伸朗展(東京国立近代美術館)

今年のベスト3。鑑賞中のメモをそのまま載せる。脳内言語が垂れ流されていて恥ずかしいので後で編集する。

記憶

残景14
セピア色の展示が続く部屋の中で唯一の極彩色のコラージュ展示
何かしらないとを感じる
もの派とも違う、料理をしていて野菜の皮が並んでそれが綺麗に思えたような瞬間。工場の壁のシミを見て綺麗だと思えた瞬間のような鑑賞体験。

221好きや

白昼夢みたいな展示

時間
既にある作家の方法論のコラージュに見える

068
印画紙っぽい

どの方向から来たのかどこに向かえばいいのか分からなくなる
ひとりグループ展

映像
21世紀のBUG男
新しい絵の具は一日乾くまで待つ
効果を見極めながらつづけてる
足し算の検証
カオス一辺倒ではない
建築家のような構図感覚?
解体現場みたい

https://www.momat.go.jp/am/exhibition/shinro-ohtake/


アーツ・アンド・クラフトとデザイン ウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで(府中市美術館)


宗教や神話といったモチーフから離れ、庭先や郊外の自然に感じる季節の移ろいや動植物のざわめきといったものから抽出されたパターンが展開された、日用品の数々が展示されていた。

展示の特設サイトもアニメーションが凝っていてかっこいいので是非覗いてみていただきたい。


野外×アート×まちなか トロールの森2022(善福寺公園・西荻窪一帯)

もう10年住んでいるがはじめて足を運んだ。いい天気だった。見慣れた公園を散策しながら、構内に点在するアート作品を鑑賞できた。

野外の展示だと、近くに作者がいても来訪者と紛れてわからなかったりするので、すぐ感想が口から出てしまう筆者などはややヒヤヒヤしていた。

鉄道と美術の150年(東京ステーションギャラリー)

ステーションギャラリーは初めて行ったが、東京駅丸の内方面改札出てすぐの立地でアクセスしやすい。建物自体も開業当時の煉瓦造りを残した壁面が見られたりと、場所柄を生かした鑑賞体験ができそうだった。そんな会場に完璧にマッチしていたのがこちらの展示。

錦絵の鮮やかさ、油絵の重厚感で鉄道、駅、そこに行き来する人々が描かれいた。余談だが、ここで目にした佐伯祐三の展示が、2023年最初に見る展示となった。


ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展(国立西洋美術館)

以下、鑑賞しながら書いたメモを載せる。こちらも脳内言語がダダ漏れている。

座るアルルカン
 あつがみできれい

庭師ヴァリエの肖像
背景の色彩が綺麗

グラスとトランプのある静物
パピエコレが貼られてる?
コラージュっぽさもある

幅広すぎでしょ
雄鶏
パステルが綺麗
朝焼けみたい

両大戦間のピカソ
新古典主義でありつつやっぱりはばひろい

「踊るシノレス」
3人の男性の描き方が全く違う
線の太さ、書き込みの多さ
解剖学的に正しそうな人と
ゴムでできてそうな人
賑やかで開放的な印象

水差しを持ったイタリア女
この前の絵もだけどずいぶん手が大きい
わざとやってるのか?
顔を覆えそうなくらい大きく、活動的で声が大きそう

4 女性のイメージ

横たわる裸婦
描き初めと後で明らかに手法が違う

飽きたのか?

色んなイメージで物事を見ていたのではないか

花の冠をつけたドラ・マール
顔を詳細にかいて
上半身はクレヨンを引っ掻いた感じ
クレーっぽい感じ

多色の帽子を被る女
眼が描き込み多く陰影ついてる
集中力高まってそう

黄色いセーター

セーターの上に黄色のっけててモフモフ感出そうとしてるのが伝わる
他は全体的な迷いがない感じ

クレー

黒魔術師
油彩転写素描
チョークで厚塗りした紙

クレーは自分の線に毛を生やしたかったのかな
そういう強調の仕方
滲んで見える世界

厚紙に貼った紙に
油彩転写素描
古代の壁画の色褪せた感じを人為的に表現しているのでは
グリッドで区切られたデジタルなグラデーション

マティス
シンアプリケとは?

六本木クロッシング2022展:往来オーライ!(森美術館)


O JUN の油彩と工事用照明器具を組み合わせた立体が好きだった。
と、書いてみたらモロにポスターに載っている組み合わせなってしまいミーハー度が高くなってしまった。それもまたよしとする。

違うフロアで開催されていた冨樫義博展の行列が凄まじかった。


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