伊川津貝塚 有髯土偶 10:蛇との関わり
愛知県西尾市吉良町の小山田神明社から、同じ吉良町の北北西720mあまりに位置する、青龍山 金蓮寺(こんれんじ)に向かいました。本来は「有髯土偶 6」の記事で取り上げた岩谷山第1号墳から蛇穴(じゃあな)に向かう予定でしたが、予定外で途中、多くのものに遭遇し、蛇穴も金蓮寺にやって来てから金蓮寺の境内地内に存在するらしいことを知りました。
農道をたどって青龍山 金蓮寺に着くと、金蓮寺は農道に面した南側に石門があって、その右手に駐車場があったので、そこに愛車を入れた。
石門には「三河海岸大師 二十九番札所」とか「東海三十六不動尊霊場第二十番札所」、「三河三十三観音霊場二十七番札所」らしき文字が彫ってあるのだが、数字に関しては変動があるようで、現在の数字とは一致していないものもある。
この刻まれた文字から、元は真言宗寺院であったことが解るが、現在は曹洞宗寺院になっている。
石門の両袖は表道路に向けて複数の石仏を並べた鞘堂(さやどう)になっていた。
これも密教寺院の要素だ。
しかも石門の正面奥に見えている堂は弥陀堂だということを後で知ることになった。
ここに奉られているはずの阿弥陀如来は大乗仏教の一尊だが、真言宗では阿弥陀が如来に到達する前の段階の法蔵菩薩であった時に師事した仏として、別尊(修法のために特別に勧請される一尊)としている。
金蓮寺の前身が真言宗だとしたら、おそらく、この弥陀堂には法蔵菩薩が奉られているのだろうと予想したのだが、後で案内板を読むと、現在は阿弥陀如来が奉られていることが判った。
途中で、浄土真宗の墓を受け入れるようになって変更されたのだろうか。
石門を抜けると、左手にも複数の石仏を収めた南北に長い鞘堂が設けられていた。
この鞘堂は三河三十三観音霊場の移し本尊が奉られており、この鞘堂は石門の両袖の鞘堂とは逆で境内の方を向いていた。
多くの石仏が並んでいる場合は馬頭観音だけチェックすることにしているが、ここの馬頭観音は以下の石仏だった。
三面六臂(ろっぴ)の坐像だったが、廃仏時に水平に真っ二つに割られたようで、補修されている。
両側の千手観音に被害が見られないので、「三面六臂」という異形の姿が、割られる原因になった可能性がある。
この馬頭観音の向いている東側の駐車場への出入り口脇に南向きに面白いものが設置してあった。
3つのまったく異なった形態の石を組み合わせて、玉石に当たる部分に瓦に焼いた弁財天像を乗せた常夜灯だ。
下から二番目の石には円筒形の穴が貫通していて、火袋石に当たるものだと思われる。
本来は駐車場へ出入りする人たちの足元を照らすのを目的に置かれたもののようで、弁財天像だけ新しい。
扇型の表面には千鳥の飛ぶ波を背景にした岩の上に座した弁財天が琵琶を演奏しており、その周囲に蛇像が漂っている。
ここを目的にやって来た蛇穴と関係のあるものを装飾にしているのだ。
この常夜灯の裏面から真っ直ぐ奥に向かうと、正面にあるのが不動尊だった。
瓦葺切妻造平入の建物で、これが金蓮寺の本堂のようだ。
この不動堂の左端の方に地蔵菩薩像だけを集めた一画があった。
頭頂部が欠けたりしているものがある。
その南側に「お不動さんの名水」と銘のある井戸があり、その西側に西向きに不動明王石仏が奉られていた。
脇に掲示された案内板『お不動さんの名水』には以下のようにあった。
井戸の北隣には「阿吽(あうん)の鬼瓦」が展示されていた。
案内板『阿吽の鬼瓦』には以下のようにある。
江戸時代に阿吽の鬼瓦が乗っていた弥陀堂は現在は以下の写真のように桧皮葺(ひわだぶき)に改修されている。
柱は細く、非常に開放感のある建築物で、優美な建物だ。
教育委員会の製作した案内書『国宝 金蓮寺阿弥陀堂』には以下のようにある。
案内文にも「優美な建物」と記されていた。
金蓮寺では「弥陀堂」と表記しているが、西尾教育委員会は「阿弥陀堂」と表記している。
この違いに意味はなく、「弥陀」は単に「阿弥陀」の略称のようだ。
案内板には阿弥陀堂に奉られている、三尊像の写真が記載されていた。
左から勢至菩薩・阿弥陀如来・観世音菩薩だ。
平安時代に阿弥陀如来を奉ったのは浄土宗なのだが、この寺院は真言宗→浄土宗→曹洞宗と改宗が行われたのだろうか。
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真言宗が奉った法蔵菩薩ですが、唐、百済、日本にそれぞれ法蔵という僧侶が実在しました。
唐の法蔵=644年〜712年
百済の法蔵=生没年不詳/飛鳥時代(593年〜710年)の僧侶
日本の法蔵=905年〜969年
3人の中で個人的に興味を魅かれるのが百済の法蔵です。この人物は白村江の戦いを契機に倭国に亡命して来た渡来人とされています。当然、同郷の天智天皇とは関わりがあったでしょうが、天武天皇、持統天皇とも関わりのある人物で、陰陽博士になっています。
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