誰もこの世界の真実を知らない(1)【短編集:創作1000ピース,45】
【はじめに】
これはオリジナル短編小説です。6話に分けて投稿していきます。
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あの日から、俺はいつも空を眺めるようになった。それは職場の同僚が異様だと感じるほどだった。
「川本。最近ずっと空見てるよな。どうしたんだよ?」
「……あっ。いや、別に……」
言い訳に困る。理由を語れないからだ。
適当に誤魔化そう。俺は精一杯作り笑顔をした。
「今日も空、綺麗だな……って」
「なんだよ。たそがれやがって」
同僚が俺を強く小突いた。
だが、そんなこと。空に比べればどうでもいい。
俺の空にはナイフで刻んだような割れ目が入っている。
今にもヒビ割れが広がって、硝子のように空が砕けてしまいそうだ。
不安で、気になってしょうがなくて。俺は空を見上げる。
俺の不安は誰も理解してくれない。
そもそも、これは俺にしか見えないらしい。
空がヒビ割れて見えるようになったのは、あの日からだった——
<続>
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*** 「創作1取り組みについて取り組みについて ***
たくさん書いて書く練習をするためにまずは1000の物語を書く目標を立てました。形式は問わず、質も問わず、とにかく書いて書いて、自信と力をつけるための取り組みです。
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