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「硫黄島上陸 友軍ハ地下ニ在リ」書評 緻密な取材から明らかになる硫黄島の真実

第二次大戦の激戦地、硫黄島には未だに一万人の日本兵の遺骨が取り残されている。

硫黄島上陸 友軍ハ地下ニ在リ 酒井聡平

一般人の上陸が制限されている硫黄島に、遺骨収集団員として4回上陸した著者は、北海道新聞の記者だ。また、硫黄島から送信された最後の電報を受けた父島の兵士の孫でもある。

硫黄島で戦死した日本兵は二万人。その内、遺骨が見つかっているのは一万人だけで、残りの一万人は戦後70年を過ぎても見つかっていない。

なぜ、見つからないのか。その謎を解き明かすべく、著者が取った行動には、父島兵士の孫として、新聞記者としての強い使命感を感じる。

硫黄島への上陸は制限されており、遺骨収集団も推薦されなければ入ることができない。硫黄島に上陸するハードルは高いのだか、著者は関係各所へコンタクトを取り、父島兵士の遺族として、硫黄島の遺骨収集団へ加わり、その後、4回も上陸を果たす。

さらに、硫黄島兵士の遺族への取材を行い、公文書の公開請求を行い文書を読み解いた。そこには並々ならぬ思いがあったということは、想像に難くない。 

緻密な取材から読み解く、日米関係に翻弄された硫黄島の歴史、滑走路下の遺骨残存説の検証。硫黄島の現実を多くの国民に知って欲しい。
その思いが随所に現れている。

近現代史や戦後補償関連の報道の第一人者である、毎日新聞の栗原記者の言葉の中には、メディアが果たすべき役割について、以下のように言及している。

硫黄島の遺骨収集が進まないのは、国民の関心が高まらないからです。国民の関心が高まらないのは、メディアが報じないからです。

硫黄島上陸 友軍ハ地下ニ在リ

戦争を知っている世代が少なくなる中、戦争を風化させないために、伝えなければならない。
著者の記者魂に強く胸を打たれる一冊だ。

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