ドクターとの上手な付き合い方

「ドクハラな医師達、どう関わる?」

チーム医療のトップである「ドクターとの関わりについて」考えてみたいと思います。

医療安全のトップや感染委員会のトップがドクターであるということはめずらしくなくなりました。

でも、まだまだ接遇委員会の委員長がドクターであるという病院はめずらしいと思います。

前回は小倉第一病院でハッピー思いやり委員会の代表を務める石井先生と「ドクターの接遇の悪さ」について対談を通して考えていきました。

昔はドクター自身に「接遇」ということへの意識がとても少なく、先輩医師をモデルにすると「よくない接遇の体現者となってしまう」ということが分かりました。

結論的にドクターの接遇をよくしていくためには、要するに接遇の悪い上司の影響を受けていない30代後半~40代後半くらいの医師の接遇から変えていくのが望ましいという話になりました。

新人研修の一環として医師も一緒に接遇研修へ参加する仕組み

今月の始め、横浜市の済生会病院で新人向けの接遇研修に伺いました。

この病院では新人研修にはもちろん医師もメンバーに入っています。

でもまだまだ医師を集合研修に組みこんでいないというところも多いのではないかと思います。

(考えてみるとチーム医療と言いながら医師だけが別研修というのもおかしな話です)

前回対談させて頂いた石井先生は研修医時代に当時の師長から清拭などのケアは医師でも経験した方がよいと言われ、たくさん経験したと言います。

その経験は今、チーム医療を実践する上で非常に役に立ったとおっしゃっています。

またドイツで医師免許を取得されたドクターは学生時代におむつ交換や入浴介助など日常生活援助の全般を経験され、人の尊厳を大切にする上で本当に貴重な体験だったと話されます。

どちらのドクターも接遇力が高く人を大切にされます。

やはり「鉄は熱いうちに打て」の通りでフレッシュな時期に受けた教育はのちの医療者人生に大きな影響を与えるようです。

私の研修では敬語や物の指示しや授受などといったマナー研修の形だけでなく、私自身の長男が病院の救急外来で亡くなった時の体験を話して

「医療者にとって本当に大切な接遇とは何か」ということを深く考えてもらうようにしています。

息子のCPRの最中、私のことは一切見ずに「家族、外に出しとけって言っただろ?」と、看護師に怒鳴る心ない医師の態度

自分自身が医者に怒られたくない一心で「困りますから処置室の外にでてください!」という若手看護師のこと。

反対に「速斗くん、なんとか生き返ろうって痛いの我慢して一生分がんばったんだからあんまり悲しんじゃダメ」と、必死で叱ってくれた師長さん

指に指サックしたまま急いで出てきて私達の車が見えなくなるまで最敬礼で見送ってくださった医事課職員の対応

良くも悪くも私たち医療者の一挙手一投足は患者や患者家族、遺族に影響を及ぼすことを肝に銘じてほしいと思う気持ちからこうした体験を伝えています。

接遇に関してのクレームを頂戴すると、「うちの部署はそんなに悪くない。悪いのは〇〇でしょ」と、とかくこんなふうになりがちです。

入職してまもなく自信もない頃にこうしたケースを聞き、「自分だったらどう対応するか」

「どうすればいい対応ができるようになるのか」といったことを部署の垣根を超えて真摯に話し合うことが大切だと私は思います。

新人の頃から他部署のスタッフと話し合いチーム医療を実践していくという姿勢を身に着けられる機会を作ることが大切であると思います。


あきらめずに気持ちを伝える。「捨てる神あれば拾う神あり」

 「武藤君も医師1(医師いち)なんだよ!貴重な人材を切れって言うのか!」この言葉は私が新人看護師だった頃、院長に言われた言葉です。

私は新人の頃、小児科と婦人科の混合病棟で勤めていました。

小さな病院で外来当直などのシステムはなく、夜間に婦人科の病気が疑われる人が受診するときは外来に下りて当直医師の診察の補助をしなければなりませんでした。

当直のアルバイトを専門でやっている医師で武藤先生という方がいました。(もう26年前の事ですのでその病院はなくなり、武藤先生も行方不明です)

そのドクターは我々への接遇の悪さは天下一品でしたが、それだけでなく患者さんへの対応が本当によくない人で看護師たちは常に困っていました。

例えば、子宮外妊娠を疑われる症状の患者さんにダグラス窩穿刺をするときなども、何の説明もせずいきなり太い針をブスっと刺して「ギャー」と言わせたりする。

そんな嫌な先生でした。

患者さんを守ろうと「少し痛いですからね」なんて声かけをしようものなら「看護師の分際で余計なこと言うな!」と怒鳴る始末。

困り果てた私たちは看護師同士で集まって、武藤先生の対応をなんとかしてほしいと院長先生に直談判に行きました。

すると返ってきた言葉が上記の「武藤君も医師1なんだよ!貴重な人材を切れって言うのか!」でした。

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