仕事中の電気工事士

⑪初出勤、其の一。

カナダで電気工事の会社で雇われた初日。

技能士の朝は早い。大体朝7時か7時半には仕事が始まる。と言うことは初日なので現地には30分早めに着いておく必要がある。何せ30分かかる遠方だし、市内の30分と高速を使った30分では意味が違う。

初秋のカナダの朝は寒い。当然オートバイ出勤ではフル装備でなければ高速を走るのは無理だ。したがってオーバーパンツに手袋は当然。ジャケットはイギリス系の仲間の家に入り浸っていたとき、家具と一緒にもらったシープスキンのジャケット。これは本当に暖かだった。

実は初めての場所だったので事前に現地へ行って見ておいたのだ。紙の地図しかない時代の話。本当に郊外の外れにある看板もない場所だったので、迷いに迷ってたどり着いた。これが当日だったら辺りはまだ暗いので絶対に見つからなかっただろう。

念には念を入れて会社には6時半くらいには到着していた。しかし会社の門は閉まっており。その前で門が開くのを待つしか方法がない。もちろん中には誰もいない。そのうちに他の人もやってきて門の前や路上に車を停めて、暖かい車内で待っている人が増えてきた。

こちらはオートバイなので車から丸見えであり、視線がこちらに注がれているのが更なる緊張を産んだ。もしも現地人だったら車に近づいて「おはようございます。今日が初日なんですよ!」などと話を始めて打ち解けたであろう。しかし誰が誰だかわからない上にそんな勇気はない。

そのうち一台の車が7時ぎりぎりに到着して門を開けてくれた。それを待っていたように一同が敷地内の駐車場へと動き出した。無論そこには暗黙の了解、もしくは決まっている自分の駐車場があるのだろう。とりあえずオートバイなので端に寄せて駐輪しておいた。

その人は課長で、私を見つけると手招きで導いてくれてその流れに沿って中に入っていった。そうでないとその巨大なビルは何処から入ればいいのか見当がつかない。中には大小さまざまな設備や、並んでいる配線中の機器が目に入った。

そこは電力会社が所有する巨大な倉庫でした。『Warehouse』(ウエアハウスとい言います)私を雇った会社はその電力会社の下請けで、そこへ納品するパネルをその倉庫内の一角を借りて経営をしているのでした。

程なく朝のミーティングが始まった。見ていると遠慮がちに話の輪に入っていない人が私を含めて3人いた。今回の募集では3人の新人を必要としていたのだろう。面接を急いでよかったと胸を撫で下ろす。

ミーティングの後に我々新人は、鍵のかかった親会社の別室へと連れて行かれた。簡単な自己紹介の後に、オリエンテーションが始まった。ここで働くための説明が始まりました。

どんな仕事をするのだろう、、


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