見出し画像

あわてんぼう

3月も終わりに近づくと、冬と春の季節が交互にやってくるような感覚がある。冬の間来ていた上着を脱ぎ捨てた翌日にはめっぽう寒い日がやってきたり、その翌日にはまたポカポカ陽気になったり、と冬と春は交代ごうたいバタバタと忙しそうだ。

そんな時期になると、木々の蕾ははちきれんばかりに膨らみ、どんな顔で澄ましているのだろうか?ふと蕾の中を覗きたくなる。1年に一度の桜の季節はもうそこまでやってきているのだ。


桜が満開になる時期は大体毎年4月上旬ころだが、3月末ごろからチラホラと花を咲かせる木々も出てくる。公園によくある同じ種類の木々でも、結構な花を咲かせている木もあれば、まだまだ蕾のままの木、すぐにでも蕾から顔を覗かせそうな木、熟睡中の木、と色々な姿を楽しめる。彼らの姿を見る度人間と同じで木それぞれ違う性格なんだなぁと面白くなってくる。つけている蕾もバラバラで一つ一つ違っているのも見ていて飽きない。


先日桜の木が植えられている川沿いを歩いてみたら、桜はまだ咲いておらずまだまだ肌寒かった。そんな中、思いっきり咲いている桜の花びらを見つけた。

「まだちょっと寒いね。」

「ちょっと早すぎたかな?」

桜の花たちの会話が聞こえる気がした。彼らはもしかしたら「あわてんぼう」なのかもしれない。もう少し蕾の中にいたら、沢山の人間たちが愛でてくれたのに、肌寒いその時期にはお花見をする人間の姿はまだどこにも見当たらない。

誰かに見てもらえるわけではないが、1年間花を咲かせるのを楽しみに待っていた蕾はきっと、自分の居場所で自分のために自由にのびのび咲くのだろう。人間の私も見習わなきゃという気にもなってくるもんだ。


満開の桜の下お花見をする時間も風情があって楽しいが、「あわてんぼう」の彼らを観察することも、それはそれで勇気を貰えるのだった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?