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僕だよ!のあなた!

毎週土曜日は植物との時間。先日の土曜日も毎週恒例の≪時間と空間≫を手に握りしめていた。店の中で仏花を作成していたら、入り口で、自転車にまたがった若きメンズがこちらを覗いていた。私をじっと見つめるその目が私を呼び寄せた。会ったことがないメンズ、白いTシャツに黒い半ズボン、スポーツ自転車にまたがる彼の姿は、白馬に乗り迎えにきた王子様みたいにキラキラしていた。

≪僕だよ!≫
その彼が大声で叫ぶ。
≪僕?僕?僕?誰だ??≫

入り口まで行って、顔を覗き込むと、隣には30代後半ぐらいの女性が自転車に乗っていた。

≪いつもいつもお世話になってます。帰りにいつも寄ってお仕事の邪魔をしているみたいですいません~。≫(ニコニコ)
彼女が言う。

こちらを見つめる顔をよく見てみると、毎日学校帰りに寄ってくれる、近所の小学校の子どもだった。いつも制服を着ている姿に慣れていたから、パっと見た感じでは彼を彼だと認識できなかったのだ。

その彼はいつも2時半頃、お友達4人で店に寄ってくれる小学生2年生の男の子。その日は学校がお休みで、お母さんと自転車でお買い物にでも行っていたのだろう。颯爽と自転車にまたがる姿はいつもと違い、少し大人っぽく、そして、とても力強かった。

思わず、≪今日、カッコいいやん!!≫と声をかけた。
お母さんと一緒だったからか、カッコいいの言葉に反応したのか、少し照れた感じで私を見ていた。
お母さんにご挨拶をして、彼と少し話し、2人は店を後にした。


2人が帰った後、彼が発した言葉が残像となり、私の身体をかけ巡った。

≪僕だよ!≫

その言葉、可愛すぎるだろーーーーーー!!

もう一つ私をホッコリさせたことが、お母さんの言葉だ。
お母さんは、息子がいつも寄り道することを知っていた。だから、私に挨拶をしてくれた。よく考えてみると、彼は家で私の事を話していたことがわかる。でないと、お母さんが花屋に寄り道をする息子の事を知るはずがない。
毎日の生活の中で、私との時間が彼の心の中にあったことがとても嬉しかった。

心臓はキュンキュン、顔はニタニタ、私は彼の言葉と姿で揺さぶられまくった。

余韻は暫く長引き、それを見ていた隣の人間が、その姿の残像を引き取って、次なる妄想を膨らませた。

≪どうする?
大きくなったら僕と結婚してください!とか言ってくるかもよ?≫

その想像力何かに使えるぞ笑
そう思いながら、真面目に考えてみた。

≪いいけど、私が死ぬ前にプロポーズしに来てね♡≫

だって、彼と私の年齢差は40歳。早くしてくれないと、私はあの世にいってしまう…。

8歳が発する言葉で、40代男女の想像力が暴走する一日は、私の暮らしの中の大切な一日だ。

日常にドラマがある。そのドラマは、自分の想像力で果てしなく広がっていく。それをシェアする時間も今の私のお楽しみとなっている時間でもある。


8歳の男の子の言葉、可愛いね♡
いつか目の前に≪待たせたね。僕だよ!≫の言葉と共に、白馬に跨った王子様が迎えに来る日を夢見る若者がもっといてもいいのに、と48歳の私は思う。


私が死んじゃう前に、迎えに来てね~笑
48歳の私は、いつまでたってもやっぱり、≪夢見る夢子ちゃん≫でいたい。


≪僕だよ!≫の≪あなた!≫笑

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