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全国のお味噌販売「佐野みそ」さんにお邪魔しました。

昭和9年創業。東京の老舗味噌専門店「佐野みそ」亀戸本店さんにお邪魔しました。

全国各地の個性的なお味噌を厳選し、量り売りで販売している佐野みそさん。
70種の味噌がずらりと並び、「噌ムリエ」の社内資格をもったスタッフさんが、相談に乗ってくれ、試食をさせてもらった上で購入することができる。

味噌は地域や原料、蔵によって味は種々様々。
いろいろな味を楽しみたいけれど、スーパーなどでパッケージから味を想像するのはなかなか難しくて。挑戦したい気持ちはありつつも、結局我が家の定番ばっかりリピートしてしまったり。
せっかく個性的な味噌を買っても、いまひとつ活かせていないような気がしたり。

「いつもと違うお味噌にチャレンジしたいな!」
そう思ったらまずは行ってみよう。

「こんな味噌が欲しい」「この味噌はどんな具材に合うの?」スタッフさんが丁寧に相談に乗ってくれ、味見もさせてくれる。

いい味噌の共通点

「木桶で仕込み、天然醸造でじっくり丁寧に作っている味噌。」
佐野みそさんが選ぶ味噌は、ベースにそんな基準がある。

木桶仕込みの味噌蔵は全国に数ある中でも、佐野みそさんが思う「いい味噌」に共通しているのは作り手さんの「お客様の為」という言葉だそう。

木桶で仕込む味噌は苦労が多い。
温度管理、衛生管理・・・。ステンレス容器で速醸、オートメーション化すれば失敗も少ない。
『「木桶はもうやめたらどうだ」と周囲から勧められるが、笑って誤魔化してます』という話も作り手さんから聞くという。
そんな苦労の多い味噌蔵を支えるのは、お客様の「ここの味噌じゃないとダメなんだ」という言葉。

少しでも味が変わるとお客様がいち早く気づき、声をかけられる。そんな客との関係性と、「そんな風に言ってくれる、このお客様の為に」という作り手の想いが、いい味噌を支えている。』

作り手の想いのこもった味噌に、客の心が乗り、作り手は一層よい味噌を追求する。
一方通行ではないその想いの循環が、いい味噌を作っている。

「客が店を育てる」という言葉があるが、そういうことかと妙に納得した。
現在は、よくも悪くも遠方の食材を手に入れることができ、作り手と客の関係性が疎遠になってしまっているように感じる。
作り手に、感謝や感想を伝えるやりとりの重要性に改めて気づいた。

「日頃から作り手と客との間に、しっかりとしたやりとりがある」というのは味噌に限らず、食品選びの一つの目安になるかもしれない。

「もちろん基準はあって要望もお伝えするけれど、細かい部分は作り手さんにお任せしている。」
様々な味噌を扱う佐野記子さんの言葉は、包容力とやさしさに満ちている。

ブレンドを楽しむ

佐野みそさんに並ぶ味噌は、どれを選んでも、そんな手間暇・想いがたっぷりこもった味噌たち!

ではその中から、どう選べばいいか?
「楽しく選ぶこと!」と佐野記子さん。
いろいろ試してみて、「おいしい」と思ったらその味噌がその家庭の正解。

中でも佐野みそさんが推奨されている「ブレンド」。
『別々の味噌を掛け合わせることによって、新たな味わいが生まれるのを楽しんでほしい』
赤味噌と白味噌、甘めのものと辛いもの、産地が遠いもの同士など、真逆のものを組み合わせるのがポイント。

「味噌の魅力は多様性だから。」
お味噌汁一つでも
「ベースとなる味噌」×「ブレンドする味噌」×「出汁」×「具材」!
その多様性と組み合わせで、無限の可能性が広がる。

そうか、無理に一つに決めなくっていいんだ。それが魅力なんだ。
新しい発見があった。

ママたちへ

『子供達への食育として「一緒に味噌汁を作る」の前段階として、味噌を選んでもらうというステップも面白い。
同じ具材でも味噌が変わると味が一気に変わる。
「今日のお味噌は私が選んだ。」
「組み合わせを考えて、自分で溶いた」
それだけで子供はお味噌汁を特別に感じ、食に向かう気持ちが変わってくる。
家族もその工程を喜び味わうことで、子供にとっての成功体験となる。
難しいことはしなくても、日々の身近なことを探求してくことは子供にとっては楽しいし、大切なこと。』

子供達にも味噌を味見させてくれ、その反応を楽しそうに伺う記子さん。
味噌ってこんなに楽しいものなんだ!大人の私もとてもわくわくした。

娘も試食させてもらった。生まれて初めて味噌そのものを舐めて、「おいしい!」と叫ぶ1歳8か月。

最後に

子供の未来の為に、どんな味噌を選べばいい?
調味料や味噌を学び始めた頃にはぱっと答えられたその解が、いくつか味噌蔵を回る中で私の中でぶれ始めてきた。おいしくて体に優しい味噌って、日本にたくさんあるから!
どれも正解なような気もするけれど、コアな部分はどこなんだろう。
全国の味噌蔵を回って厳選し、日々お客様と向き合う佐野みそさんにしか見えていない世界がきっと、あるはずだ。
「味噌の神髄」のようなものが知りたくて。

でも、たった一つの答えなんてない、なくていいんだ、と佐野みそさんは教えてくれた。
味噌の多様性そのものを楽しめばいい。それが味噌の楽しみ方。
米味噌、豆味噌、麦味噌・・・。
辛いの、甘いの、赤いの、白いの・・・。
混ぜ合わせて、掛け合わせて、考えて。
この日本にいて、いろいろな味に出会いながら、探求していける。
その楽しさそのものを未来にも残したい。



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