掬うときから、すでに始まっている。
ゼロール社のアイスクリームスクープ。1935年に発明され、もう90年近くが経つという、ロングデザインなアイテムだ。我が家にもひとつ、食器棚の一軍エリアで、大御所の雰囲気を漂わせ控えている。
アイスクリームを掬うのはもっぱら私の仕事だ。妻の分と自分の分を均等に盛る。男女平等に、アイスクリームは我が家に平和をもたらす。
ゼロール社のアイスクリームスクープは、ハンドル部分を握ると、手の温かさが熱伝導によって先の部分に伝わり、硬く冷えたアイススクリームを削ぐように溶かしながら、掬いあげることができる。
ひとつの塊から、剥がれながらくるくると弧を描き、別の形になっていくアイスクリーム。口に入れてないのだけれど、ひょっとしたらすでに頬張ってるかのような、美味しさを味わっているような、そんな不思議な感覚になる。アイスクリームは掬うときから、すでに”美味しい”が始まっているのだ。
そうなると、アイスクリームを掬うのは、仕事ではなく”抜け駆け”なのかもしれない。妻より先にアイスクリームを味わっているのだから。それでも(いや、それが故に)、アイスクリームをテーブルに運ぶときに、平静を装い「アイスだよー」「おんなじサイズだよー」と必要以上に、説明に走る私が在るのだ。
アイスクリームよ。いつも我が家に平和をありがとう。
ここで、ささやかな提案。アイスクリームは、ガラスの器に盛って、特別感(ハレ)を楽しむのも良いけれど。”そば猪口”なんかに盛って、気取らずに食べるのもおすすめです。ちょうどいいサイズで、アイスにほどよく生活感が加わり、より日常(ケ)としてのアイスクリームを愛でることができます。
もしよかったらお試しあれ。
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