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こうして私はアーティストからxRデザイナーになった(後半:xRデザイナー爆誕編)

進路についてお話する機会が増えたことがあり、アーティストデビューからxRデザイナーとしてお仕事するまでをメモしてみることにしました。
前半の学生編はこちらから。

転職編はこちらから。

VTuberとの出会い。身体性に衝撃を受ける

ある先生に「よーへんは作品は芯が通ってるのにフラフラしてるイメージがあるなあ」と言われたのですが、読み返してみたら相当行き当たりばったりですね…友人たちとの縁がなかったらと思うと、ゾッとしました。
結局、女神の前髪をいつでもつかめるように準備しておくこと。ただそれだけなんだと思います。

子供たちと大学生の先生。二足のワラジを履きながら、時々広告代理店でおぜぜを稼ぐ日々。何とか生きてはいるのですが、本当にこれでいいの?ともうひとりの私が語りかけます。
そんな悶々とする中、VTuberと出会います。これがその後の私の活動や専門を決定づけるターニングポイントとなりました。きっかけはTwitter上でどなたかがRTしてくださった「ねこます」さんの動画だったと記憶しています。

女の子の姿から殿方の声が出ている…?!それも不自然に見えない。何なのこの身体性…!とショックを受けます。調べると「Vive」というVR機器で動かしているとのこと。ちょうどWindowsPCを新調しようかと思っていたタイミングだったので、思い切ってVR機材一式を購入してしまいます。そこから運命がいい方向に転がっていきました。

よーへん、はじめてのアバター。

当時clusterがVR対応したばかりのころで、VRMと格闘しながら3Dフルスクラッチでオリジナルデザインのアバターを作成、鏡をみる。(当時clusterはアバター確認画面があって、そこで鏡を通じてアバターを確認できた)
これがバーチャル上の私。自分の物理身体にバーチャルな身体が追従している驚き。

何なのこれ、何なん?!
どうしてアバターが私と思えるの?待って、どういうことなの?
いや脳が自分を騙してるに過ぎないことは分かるけど、感覚としてついていけない!
生々しい身体に対して、このアバターの身体って何?!

たくさんの???が浮かびます。ワクテカ(インターネット老人会風味)も止まりません。そう、本来の私はこうだった…!
ラバーハンドやラマチャンドランを知り科学的には理解できたのですが、当時の私は感覚がついていかない。そこがアーティストっぽいところですね。感覚として納得できなければ、知識も自己の体験も消化できない。
ちなみにちょうど今日、「VRは人間のセキュリティーホールを突くもの」との考えを教えて頂きました。

たくさんの疑問とワクテカを抱え、日々思考の海に浸っていたところ、知人さんより朗報が入ります。
「情報科学関連のイベント、何かやってみない?」

こう来てくださったらVR以外の選択肢はありません。Twitter上ではVTuberという存在が知られるようになった頃です。
急いでVR関連の研究をしている知人さん・身体論をご専門とされているIAMASの先生・演劇界の知人さん・身体表現の知人さんに連絡を取ります。
「VRでこういう(私にとっては)すごい体験をしたんですが、普及に伴って似たような体験をされる方が増えるかもしれません。この体験がどういうことか一緒に考えてくれませんか?あなたのこんなお話が聞きたいんです」
ラブレターを送りつけ、無事承諾。あなたのこんなお話が聞きたい。こういうことやりたいんですが、あなたのこの力を貸して欲しい。真摯に一筋、あなただけ。

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VTuberもイベントテーマのひとつなのに、すべてが物理空間で完結していいのか?そう考えた私は配信で前夜祭を行うことに決めます。私のVTuberデビューの瞬間でした。
私が持つひとつの能力として、事象に対して関連分野・要素を即座に文理問わずピックアップできることがあります。これはIAMASで、左を向けば工学部出身・右を向けば元哲学専攻・前を向けば現代美術作家・後ろを向くとデザイナー・上を向いたら音楽家…・下を向いたらキュレーターと、とにかくごった煮の環境でみんなから知識を授けてもらったからでした。かつ学部の経験から実装までの道筋も分かるので、現在はPMや実装もできるリサーチャーとして可愛がって頂いています。

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VTuberのコンテンツ文化・VRアバターのジェンダー面・VRを科学的に分析・ユーザとしての驚きの共有…研究者さんからユーザさんまで様々な方々にお話頂くという配信コンセプトは、この時期からすでに出来上がっていました。
「このアバターの身体って、いったい何なんだろう?アバターによって作り出される社会はどんなものなんだろう?」
私のこの素朴な問いに、今もたくさんの方々が巻き込まれています。

この後に後に相方となる相方にゃんと出会い、アイドル活動を通じて「テクノロジーを楽しむこと」の重要性を覚えます。それまでは楽しんでいたとしても常にすべてが創作につながる分析対象で気が抜けず、一歩引いた自分もいました。研究・制作バカとはこのことです。友人たちもほぼそう。すべてがネタになる。そうやって生きてきました。
純粋に楽しみ何かに対して一緒にキャッキャできるという意味において、彼女は初めての大事な友達です。

電卓

るろうに転職、ふたたび。

様々な方々の手を借りて、配信のために久しぶりに3DアプリとUnityを起動、テクニックを身につけていきます。そうするうちにxR業界で研究的なお仕事してみたいと思うようになりました。そこで具体的な会社さまをピックアップしているうちに、友人から連絡が入ります。

「東京来ない?来るならウチで働くのはどうかな?」

またるろうに転職の始まりです。
もちろん現在の会社さんのことをきちんと調べた上で、自分のやりたいことと合うかどうかは確認しました。
決め手のひとつは、初顔合わせの面談がバーチャル(アバター)だったのにそれを許して下さったこと。急にお手紙が来て、その指定時間がバーチャル登壇1時間前だったんです。もうひとつは実写VRという私にはそれまで縁がなかった分野を長年研究されていること。同じような考えを持つ方ではなく、自分の視野を広げるためにも違う分野の方々とお仕事したかったんです。これは完全にIAMASの影響ですね。
ちなみに肩書きの「xRデザイナー」は社長さん方から「デザイナー」とか何か立場を表す言葉を考えておいてと言われて、とっさに出てきた言葉でした。

幸いエンタメコンテンツ分野のドンさんがいらっしゃっることもあり、VTuberとしての私もスムーズに受け入れられました。研究開発が主で学生さんに対して投資を厭わない。コロナ前からリモート勤務もOKという、本当に恵まれた場所にお誘い頂きました。社長さん含めてほとんどの方が大学の非常勤講師や特任なことから、営業さんいわく「先生たちの憩いの場」だそう。
新しいオモチャがワークスペースを圧迫しているので、新しく買うと営業さんに怒られるのがたまにキズ。でもみんなオモチャ大好きなのは仕方ないよね。
「(穏やかな性格の)よーへんが来たら落ち着くのかと思いきや、余計にカオスになった」
やかましいです。

また数年後に流れ流れて違う場所にいるかもしれませんが、今の私は楽しくやっています。結局最終的には4度の転職を繰り返すことで、もう私は何も怖くない。嘘です。そう冗談で言える度胸はつきました。

「恩返し」に対して「恩送り」、あなたがいるから生きている

「恩返し」に対して「恩送り」という言葉があります。恩を受け取った本人に返すのだけではなく、困っている人たちに縁をつなごう。そのような意味の言葉です。
今までに本当にたくさんの方々に縁を繋げて頂きました。そのおかげで生きているという恐ろしいことが、今回まとめてみて分かったのですが…
私はこれから少しでも多くの方に恩返しと恩送りがしたい。だから生きなくてはいけない。

あなたがいてくれたから、今の私があります。
関わってくださったすべての方々へ、ありがとう。

結局偶然なのか。女神の前髪をつかむこと。

改めて振り返ると、友人の縁によって行き当たりばったりの根無し草のように見えます。
アーティストとしての考えはこちらのように「テクノロジーと社会について様々な方々と知見を交わす」と学部から一貫して変わっていないのですが、お金を稼ぐこととしての具体的な目標はありませんでした。

大学教員としてサイエンスコミュニケーションに関するデザインの研究をしたかったのですが、病んでいく学生さんたちに何もできない。そんな無力さから、一時諦め別の道を探すことにしました。彼女たちに何かできるほどの人生経験がなかったこともあります。
非常勤のお誘いもあってこの先大学に戻る可能性もありますが、今はxRデザイナーかつR&Dとしてやっていきたいと思っています。

私サイドから見たら偶然に頼って生きているように見えますが、お誘いして頂いた方にとっては、その場に自分の目的に沿った適切な人物がいたということになります。
女神の前髪をいつでもつかめるように準備しておくこと。それがいちばん大事なんだと思います。


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