オタク差別は本当に解消されたのか?

そもそも、オタク差別ってなんだ。

オタク差別は、1980年代~2010年代前半にかけて、テレビや新聞、雑誌などのメディアや地域社会、政界などで行われていた、オタク(本来は広い意味を持つ言葉ですが、私のアカウントでは、特に注意書きをしない限り、アニメやゲーム、漫画の愛好家の事を表す言葉として使います)に対する差別のことで、大きく分けて5つの種類の差別にわかれます。

1 テレビや新聞など、メディアからの偏向報道

2 家庭や親族などからの差別

3 学校や職場、地域社会などからの差別

4 インターネット上の個人など、匿名での批判やいじめ

5 政界など、権力者からの法規制や条例規制など


オタク差別は大きく分けると、上記の5つですが、細かく分類するともっとたくさんの種類があります、ただし文字数が大変な事になるので、今回はこの5つについて説明します。また、この5つについて説明した後、2010年前半以降の差別、クールジャパンの推進やアニメやゲームといった趣味の一般化に伴って、減ったと考えられたオタク差別の現状について説明します。


1 テレビや新聞などからのオタク差別【偏向報道】

はっきり言うと、これは2021年現在では比較的減ったので、マシになった部類ではあります。現在では、少なくとも、アニメや漫画に対する過度な偏向報道はあまりありません。あったとしても、すぐにSNSなどで問題になり、著名人や政治家が反論したり、有名芸能人のいわゆる「オタク趣味公表」の動きもあり、昔のようなひどい報道はないです。しかし、新聞ではいまだに「萌えキャラ」などに対する偏向報道不定期で行われています。なかには「萌えキャラは差別に繋がる表現」と決めつけ、問題になったケースもありました。

また、かつては、特定のアニメや漫画を名指しで批判する特集を組んだ番組や新聞、週刊誌もありました。

これは2014年の時の有名な、アニメに対する偏向的な特集であり、当時は、今では考えられないような、名指しで批判都合のいい編集オタクに対する人格の否定を含む特集が、まだまだ残っていました。


2 家庭や親族などからの差別

実は、これは現在進行形の問題でもありますが、家庭内や親族からのオタク差別もありました。例えば、親からアニメを見る事を厳しく制限され、理由を聞くと「オタクになってしまうから」と言われたり、ゲームを禁止する理由を「依存症になるから」と言われるというケースが結構ありました。実際私も、初めて深夜アニメを見たときは、家族会議になりました。

さらに、ひどい例では、ラブライバーの学生の方が、親に勝手にグッズを捨てられる。ゲーム好きの子どもが、目の前でゲーム機を壊されるなどの問題も複数、ネット上の記事やブログ、Twitterを検索していると、見つけることができます。このような、親から子どもに対するオタク差別は、現在でもあります。最近では、高性能なフィルタリングの普及のより、一般的な深夜アニメや年齢制限のないスマホゲームまで制限する親がいます。各家庭の教育方針に、深く介入する発言は慎みますが、決して「子どもや未成年のオタクの権利や自由が認められている状況」とは言えません。

3 学校や職場、地域社会からの差別【主にいじめに関する問題】

現在では、比較的良くなっていますが、今でも一部のジャンルや種類のオタクに対する差別や偏見は、学校でも残っています。職場でも、趣味がアニメ関係だとわかると、すぐに「年齢相応の趣味を持ちなさい」と注意される場合が今でもあるようです。


かつての学校でのオタク差別はひどい状態でした。学校ではいまでも「暗黙のルール」のような形で「スクールカースト」があります。これは否定する先生方が多いのですが、確実にあります。今でこそ、オタクは多少良い扱いですが、昔はオタクというだけで批判されるという事が頻繁にありました。正直、ここでは話せない内容もあります。特にひどかったのが、男の子のプリキュア好きと女の子の仮面ライダーなどの特撮オタクです。今は、時代が変わり、許容されつつありますが、かつては「男児がプリキュアを見るなどありえない」「女の子が戦隊ヒーローが好きなんてありえない」という時代があったのです。


4 インターネット上の個人など、匿名での批判やいじめ

これは、2010年代以降、急速に増えてきたタイプのオタク差別でもあります。簡単に言うと、SNSや個人のブログなどにおいて、オタクを過度に批判したり、病気扱いするような発言をして嫌な思いをさせる行為です。また、2010年代後半からは、一部の人たちにより、萌えキャラや美少女キャラ、深夜アニメ全般、暴力的な描写のある作品、女性が登場する広告などを対象にした行き過ぎた苦情も問題になりました。特に問題になったのは「献血ポスター問題」「プリキュアの抱き枕、プリパラ抱き枕問題」「環境省萌えキャラ問題」などです。

インターネットやSNS社会は匿名でやり取りができるため、実名では難しい話や趣味の話などをしやすい、別人格になることができるなどのメリットがありますが、その一方で、匿名性が高いため、身勝手な正義で行動を起こしたり、正しい事をしているつもりが、逆に他人を傷つけるような発言をしていたというケースが増えています。

5 政界など、権力者からの法規制や条例規制など

これは、話すととても長くなるので、大きな問題のみを説明します。

今回説明するのは「非実在青少年問題」「香川県ゲーム依存対策条例問題」です。それ以外の問題は、次回以降に順次説明します。

・非実在青少年問題とは何か

非実在青少年とは、かつて東京都の青少年健全育成条例において、用いられた言葉であり、意味はそのまま、実在しない青少年つまりアニメやゲームなどに登場する未成年のキャラクター(厳密には18歳未満のキャラ)をことです。これは、非常に条件が曖昧であり、基準も不明瞭なものでした。そのため、実際に決まれば、子どもに見えるキャラクター自体を登場させることが難しくなった可能性もあり、子供向け作品を含む、非常に幅広いジャンルのアニメやゲーム、その他小説などが影響を受ける可能性があったのです。この条例案は当時の都議会で否決されたのだが、多くの課題や問題点が明らかになった。当時の記事は「非実在青少年」あるいは「非実在青少年問題」などで検索すると、多数ヒットする。一つ一つ紹介していると、とんでもない量になるため、気になる方はぜひ調べて頂きたいと思います。

・香川県のゲーム依存対策条例問題とは

「ゲームは1日60分」これを条例で決めようとした。罰則規定はないものの、このような条例が成立すれば、全国の自治体でも同様の条例が検討される可能性が高くなり、非常にゲーム業界だけではなく、子ども達が自由にゲームで遊ぶ権利、家庭が監督する権利を侵害するもので、多くの問題点がある条例である。この条例は、最終的に可決されてしまったが、罰則はないため、どこまで効果があるかは不明である。しかし、ゲーム業界が自主規制を始めたりする可能性は否定できない。個人的に気にしているゲーム業界の動きがあるが、それについては後程紹介します。


最近のオタク差別の動向と、これからについての見立て


・増え続けている「オタクからオタクへの差別」

最近のオタク差別として、特に深刻になったのは「オタク同士の差別」です。先ほども述べましたが、テレビなどによるオタク差別や学校などでのオタク差別は改善傾向ですが、この「オタク同士の差別」は、ここ数年、目立っています。まず、インターネット上でも、いわゆる「意識高い系オタク」「自称オタク」と呼ばれる方々からの「オタク向け作品への批判」あるいは「こんな作品では世界に恥ずかしい」とか「オタク向け作品を名指しで批判するオタク」が登場しました。実は「ツイフェミ」「規制派」と呼ばれる人たちのなかには一定人数の「オタク」や「元オタク」がいる、と言われています。なかには、オタク向け作品が大好きなのに、オタク向け作品のグッズや広告を撤去させる運動に参加していた方や、性的な表現などに対して批判的なツイートをしていた方が、裏では性的なツイートに好意的な反応をしていたケースなども複数報告されています。どうして「オタク」がある日突然「規制派」になってしまうのかについて、明確な理由はまだわかりませんが、推測であれば、すでにTwitter上などで、意見を発信している方がいます。こうした「オタクや元オタクによるオタクへの差別」という行為が、ここ数年でかなり増えています。以前からあるにはありましたが、特にネット上でこのような行為が増えています。

なかには「私はオタクだ」と宣言したうえで、今のオタクは性的なものしか反応しないから規制が必要、昔はもっと厳しくゾーニングされていた。と言っている方もいました。

しかし、これは大きな間違いで、今の方がはるかに厳しい年齢確認や自主規制が行われています。これは絵師様やイラストレーターの方に聞けばよくわかる事だと思います。ここ数年で、18禁の規制はかなり厳しくなっています、コミケなどの即売会はもちろん、同人誌販売店などでも取り扱いは厳しくなっています。

このようなオタク同士の差別や批判、論争は今後も止まらないと思います。ネットやSNSの普及もあり、もっと増えると思います。彼らの中には、本気で青少年健全育成や社会秩序を考えている人もいるかもしれませんが、なかには「楽しそうなオタクが気に食わない」とか「趣味がある人が羨ましい」などの理由から、軽い気持ちオタク差別を始める人もいます。もし批判されても、あまり深刻に考えず、スルーすることも必要だと思います


・カイが個人的に気にしている最近の自主規制について


最近のスマホゲームの起動画面などで、こんな表示増えてませんか?

「未成年の方へ、ゲームの利用時間は保護者と相談して決めましょう」

これは、ゲームによって、若干違う内容ですし、このような表示がでないスマホゲームもあります。しかし、ここ1年程度で、この表示をするスマホゲームが増えました。具体名は出しませんが、私が知っているスマホゲームだけで「5つのゲーム」がこのような表示を出しています。以前は未成年者の課金についての注意勧告がほとんどでしたが、そこに突然「利用時間は親と決めましょう」という文章が、昨年あたりから追加されています。

個人的には、これは大変危ないことであると思っています。

なぜなら、今まではほとんどのゲームで健康上の注意などのページを開かない限り出てこなかった「未成年者(小さなお子様)は、保護者とゲームの利用時間を決めましょう」と言った文言が、起動画面に出てきているのです。しかも、時期的にはゲーム障害が国際的な機関で採択されICD11に載ることになった事が決まった時期から、このような表示が増えています。

考えすぎと言われるかもしれませんが、個人的には、注意して観察しておく必要があると思ってます。

また、一部の報道では「ゲーム依存の治療は自然体験や療養が望ましい」という文言も登場し、隔離治療を彷彿とさせる文章がいくつも出てきています。また、アニメや漫画に対する偏向報道が減りつつあるなかで、いま急増しているのは「ゲーム依存やネット依存に関する特集」です。今年に入ってからすでに数件確認されており、新聞などの報道も含めると、もっと件数は多いです。

さらに、ゲーム依存症に関する誤った広告が品川駅に貼られ、その後問題になりました。

ゲーム依存、ゲーム障害をめぐる動きは、この1年で非常に速いスピードで進んでおり、引き続き注視したいと考えています。

ゲーム依存に関する対策が進むのは悪い事ばかりではありません、しかし、ゲーム依存対策によって、ゲーマーへの差別が起きているのも事実です。ネット上でも「香川県なのでこれ以上は遊べません」などの合成画像が作られるなど、心配な案件が発生しています。


・今後のオタク差別はどうなるのか?

今後のオタク差別について、改善されるのか悪化するのか、まずはまとめてみました。

〈改善する〉

テレビからのオタク差別

【理由】

昔よりも、反論や抵抗をする方法が多い、またあまりにもひどい偏向報道があった場合は、著名人や政治家、芸能人なども一緒になって反対してくれる「空気」がある程度できたため。そして、テレビもアニメ関係の事業に関わることが増え、昔よりは批判しにくくなると考えたため。ただし、オタク差別的な特集は低い頻度で、地味に継続されるとは思う。


新聞や週刊誌からのオタク差別

【理由】

これもテレビと同じ理由です。ただし、こちらについては、ある程度の頻度でオタク差別の記事や報道は継続されると思います。ただし、かつてのようなひどい特集は少なくなっていくと思います。今は、新聞社の方針や考え方も変わってきているだけでなく、オタクに寛容な世代が中心を担うようになるにつれて、差別的な記事の頻度は低くなっていくと思います。


政界からのオタク差別的な法規制【国政】

【理由】

これは、ある意味オタクたち、表現規制反対派の得意分野です。実は、自治体の条例規制よりは、比較的止めやすく、また反対する声が一か所に集まるため、比較的反論しやすくなっています。オタクに好意的な議員さんも増えつつあり、かつては表現規制派であった自民党のなかにも、いまでは表現規制反対派、慎重派の議員が複数います。ただし、完全に安心とは言えません。不定期で青健法案などを出してきたり、表現規制に関する請願が行われることはあり、油断したらいつ規制されるかわからない、という状態に変化はありません。


〈悪化する〉

個人間、オタク同士でのオタク差別

【理由】

SNSやネットの普及により、匿名で活動できるようになったため、政治的な発言もしやすくなった一方、こうしたオタク差別や過剰な批判が起きるようになったのも事実です。今後も増えていくと思いますので、注意が必要です


企業からのオタク差別や過度な自主規制

【理由】

最近では、オタク文化の国際化が進み、海外でも日本のアニメやゲームが親しまれるようになりました。それは良い事で非常に喜ばしいのですが、海外の法律や文化、自主規制に合わせるため、大変な修正や場合によっては販売禁止になる事例も相次いでおり、最近でも海外の通販サイトでの美少女フィギュア販売停止やラノベ販売停止、厳しすぎる修正が問題になりました。また、国によっては日本よりもはるかにオタクの権利状況が悪く、看過できない事態になっている場合もあります。企業も海外展開を見据え、必要以上の自主規制をすることがあり、問題は今後も続くと思います。


政界からのオタク差別的な条例規制【地方自治体】

【理由】

先ほどの国政の場合とは異なり、地方自治体の場合は、オタク差別がひどくなると考えています。これは「過度な条例規制や反ゲーム教育などもオタク差別である」と考えた場合です。まず、オタクはどうしても大都市圏に集まりやすい特徴があり、これは国政選挙の獲得票などを地域別に調べるとわかる事です。そのため、どうしても地方の条例となると「自分達には関係がない」と考えるオタクも出てきます。国政の場合とは違い、反対の声が一極集中しにくいのです(そう意味でも香川県の条例のケースは全国ニュースや新聞、ネットでも話題となり、ある意味異例でした)

ただ、希望は地方自治体における表現規制反対派の議員さんが増えているという事です。それにより、以前ではできなかった、表現規制に繋がる動きを早期発見することができ、協力体制を構築できるようになりました。これにより、少しでも地方自治体におけるオタク差別に繋がる教育や表現規制が減ると良いなと思います。


以上です、長文、乱文失礼しました。