Wat Paknamに行ってきた話

タイのお寺、といえば何が思い浮かぶだろうか。巨大な寝仏像のあるワットポーや三島由紀夫の作品にも出てきた〝暁の寺〟ことワットアルンなどが有名どころだが、最近じわじわと人気が出てきている寺院がある。それがワットパクナムだ。

SNSやタイの日本人向けフリーペーパーなどで写真はよく見ていたのだが実物を見てみたくて行ってみることにした。

行き方としてはBTSのシーロム線沿いにあるウタカート駅かタラートプルー駅からタクシーなどで行くのが一番分かりやすいと思う。
駅から歩いて行けないこともなさそうだが少し分かりにくい場所にあるので初見だと迷いそうだ。

私はウタカート駅からバイクタクシーで行ったのだが寺までの道中「こんなところ通るの?」と思ってしまう道を走られた。

地元の人じゃなければ分からないような細く狭い道を抜け、屋台などが立ち並ぶ広い道をバイクで駆け抜けながら眺めるのはさながら映画のワンシーンを観ているようだった。

5分ほどで目的地に着きバイクを降りると運転手が「ここを真っ直ぐ行くとあるよ」と教えてくれた。

近くにあった地図を見てみると、どうやらワットパクナムは有名なエメラルド色の仏塔のある建物以外にもいくつか建物があるようだった。

とりあえずエメラルドの仏塔を見る前に他の場所をぶらついてみることにした私はすぐ近くにあった入り口で靴を脱ぎ歩き始めた。

平日だったこともあり観光客の姿は全く無く地元の人達がベンチに腰掛けながら談笑していた。

近くには煌びやかな装飾が施された本堂らしき建物や木造の建物などがあり、その近くには犬や猫がひんやりとした大理石のような床にぐたっと伸びて寝ていた。

散策をし終わった自分はエメラルドの仏塔がある建物の方へと向かった。

少しすると5階建ての白い建物が現れ近くで見るとかなり大きい。

基本的にタイのお寺は土足禁止なのでまた裸足になり広い階段を登った。

階段を登り終えると警備員がこちらを見ながら『入れ』と手を招いてきた。
すると「ジャパニーズ?」と聞かれそうですと答えると日本語のガイドブックを渡してくれた。

すると警備員さんも暇だったのかこういう決まりなのかは分からないが私を連れ立って案内をし始めた。

ガラスケースに色々な仏具などが入っていてそれを一緒に眺めながら千葉にも別院があることを教えてくれた。

更に上に上がると沢山の仏像が飾られた階がありうろ覚えだが警備員さんがこの真ん中にいる仏像がここにゆかりのある偉い高僧なんだよ的な事を話していた。

そして遂にエメラルドの仏塔のある階へ。

階段を登り終わる前から見事なエメラルドグリーンとカラフルな天井画が目に入ってくる。

正面に回ると想像していたより巨大なエメラルド色の仏塔は下に蓮の花を模したランプが置いてありうっすらとライトアップされていた。

天井には極彩色で仏陀の一生が描かれておりその天井画と仏塔が生み出す風景は私にはいたく刺激的で思わず息を飲んだ。

美しいという言葉をここまで分かりやすくぶつけてくる光景はなかなか見ることは出来ないだろう。

しばらくぼーっと眺めていると警備員さんが端っこの方でこっちこっちと手招きをしていた。

向かってみると外を眺められる場所に出てさらに警備員さんがあれを見てごらんと指を差した場所に目をやると少し離れた場所に寝仏像が川沿いに寝そべっているのが見えた。

どうやらワットクンチャンという別の寺院らしく是非行ってみるといいと言われた。

川沿いののどかな景色と心地良い風が清々しく素敵な気持ちになりながら寺院の中へ。

途中でこれでもかというぐらい細やかに神々が彫られた金色の柱を警備員さんに写真撮りなよと促されパシャパシャと撮りつつ出口へ向かった。


親切な警備員さんにお礼を言い寺院を後に。
相変わらず近くでは犬と猫がごろんと転がってのんびりとしていた。

そこから私はせっかくなのでさっき教えてくれたワットクンチャンへ向かおうとしたのだが、近くにあるはずなのに見事に道に迷い汗が吹き出して来たのでリベンジを決意しつつ帰路に着いた。

ワットパクナムに関する記事でよく〝フォトジェニック〟〝インスタ映え〟などと書かれているのだがまぁ確かにそう思われるのも頷ける。

捻くれものの自分はそんな言葉に少しの嫌悪感を示すものの、結局気になるものがあればそそくさと写真を撮ってしまう現代人だ。

だが他のものでもいえるが、やはり実物を見てしまうと写真で感じとれるものはあくまでも断片でしかなく、あの空間が生み出す雰囲気を伝えることは出来ないということを痛感する。

ワットパクナムはまさにそれを具現化したような場所だ。

のどかな日常の中で宇宙を感じたい方、犬と猫が好きな方にもおすすめです。