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3月作品集ー少女は卒業しない、エブエブ、山田詠美 など

ネタバレ含みます!

神様のビオトープ 凪良ゆう

死んだ旦那さん(鹿野くん)と住んでいるうる波ちゃんの話。うる波ちゃんのまわりには何か大きな癖を背負ってる人たちがたくさん。頭が良すぎてロボットとしか仲良くなれない小学生や、いとこなのにストーカーと間違われてると思ったら女の子のほうに複雑な思いがあったり、小学四年生が好きな高校生、同じように彼氏が死んでしまって幽霊になってるという友人を突き放すこともある。凪良ゆうさんの本は、主人公と周りの人との関係はさまざまだけれど、誰かと一緒に住んでいる、個人対個人の関係が丁寧に描かれている、やっぱり傍から見て幸せかどうかなんてわからない。幸せはその人のものであって、理解されなくていい、ってことが描かれている。

嫌なら呼ぶなよ 綿矢りさ

一話目、整形オタクの話。包帯ぐるぐるにして嘘つく狂気さがスカッとしてていいよな。二話目、馬鹿にしてるYouTuberに固執してその人のカバンを燃やす話。三話目、浮気を責められてるのに全然反省しないどころか相手を馬鹿にしてる男の人の話(綿矢さんの男の人の話はめずらしい?新鮮)四話目、ライターとインタビュー対象の作家の板挟みになる編集者視点で書いた二人のでぃすりあうやりとり。どれもコロナネタが練り込んで合って、例えば口よりも目の方が本心が見えるとか、コロナの価値観の違いとか、在宅勤務とテキストのやり取りの難しさとか。

少女は卒業しない

小説を先に読んでしまったので対比しながら見るとちょっと物足りなさがあるかも。小説の記憶があやふやだけど、河合優実の役はふたつが一緒になってた気がするのと、弁当の話は小説の厚さがないと深読みしないといけなかった。軽音部の話が一番小説に近かったな。本に描かれている感情やその人の状況を映像で伝えるのは難しいと、それはそうなんだけど改めて思った。
いくつかレビューを読んで、自分なりにピリオドを打つ行動、いくつかのストーリーが組み合わさってるのに違和感なく見れること、会話が自然であることが良かったのかもしれない。私自身が高校に思い入れや思い出があまりないからか、感情移入できなかった。けど、それぞれ葛藤や思い残しはあるけれど、次に進もうとしている気持ちの強さは今の私にも当てはまるところがあるかも。
全体的に髪型(軽く巻く感じ)とか服装(ハイソックスのパターン)とかカバン(微妙に丈が長い、リュックとスクバ派がいる)とかが微妙に幼い感じがリアル。

号泣する準備はできていた 江國香織

なんで江國香織さんの本は、何度も読まないとわからないのか。まず、これも短編集なのだが、登場人物の関係を掴むのが難しい。その人たちの関係に名前がついてなかったり、シンプルではないことが多いから。

高校のときの初恋の話

何ひとつ、ちっとも愉快ではなかった。美しくもなく、やさしくもなかった。それ でも思いだすのは、あの夏の日のことだ。やけに天気がよかったことと、自分が不機 嫌な娘だったこと。精肉店で働いていた河村寛人。紫の口紅。 でたらめばかり信じる 十七歳だったこと。

じゃこじゃこのビスケット

女の人同士で愛し合ってる話。 

「言ってごらんなさい。何が不満なの?」「何も」私は微笑んで答えて、「あるいは、何もかも」と言い換える。「だって私たちは行き止まりにいるのよ」

熱帯夜

「人生は恋愛の敵よ」私は、最後にひとことだけ秋美に釘をさす。「何のことだかわからないでしょうけど」「人生は危険。そこには時間が流れてるし、他人がいるもの。男も女も犬も子供も」

なんかこういうところが好きなんだよなぁ。あまり意味はわからないのだけれど。

浮気をしていたなつめが夫の母親である静子と旅行をする話。

私は独身女のように自由で、既婚女のように孤独だ。

洋一も来られればよかったのにね

情事をやめさえすれば家に帰れると思っていた。しかし、無論、恋に落ちるということは、帰る場所を失うということなのだった。

海外で恋愛をしてきた友人と会う話

この一年、ほんとうはいろいろなことがあった。でもそれは指で砂をすくうみたい に、すくうそばからこぼれていき、あってもなくてもおなじことに思える。日常というのはそういうことかもしれない、と、最近は考えるようになった。

どこでもない場所

妹にそそのかされて絶妙な距離感の男性が家に来る話。

自由とは、それ以上失うもののない孤独な状態のことだ

私はかつて愛した男をいまも愛 している。かつて愛した男と共に生きていたころの自分のまま、暮らしていたいと思っている。それを孤独と呼ぶなら、孤独万歳、と言いたい。

浮気をされてる女の人と、その姪の話。

私は変化に上手く対応できない。 隆志も私も変化しているのに、どちらも変化を望 んでいない、ということの方が重要に思える。私たちは二人とも、砂漠でまわり続け スプリンクラーのままでいられると、らくらくと信じた。たとえば、ここはノーフォークじゃないのに。

私は隆志のやさしさを呪い誠実さを呪い、美しさを呪い特別さを呪い、弱さを呪い 強さを呪った。そしてその隆志を心から愛している自分の弱さと強さを、その百倍も 呪った。 呪ったくせに、でも、小さななつきがいつか恋をしなくてはならないのだと すれば、なつきが強く強くなってくれることを祈った。

最後のあとがきに、江國さんの小説は肉食だと言う話が書いてあった。「彼女たちはやっぱり江國香織の女なのだ。なぜなら、本能で生きているから。ここに登場する人たちはだれ一人としてうまく立ち回ろうとしない。保険をかけておく小狡さもない。そういう生き方に付きものの、孤独を真正面から引き受けている」

君は永遠にそいつらより若い

なかなか噛みごたえのある話。
処女を自分の欠点に紐づけちゃう気持ちが大変良く分かる。途中まで、ホミネくんの自殺、行方不明の少年、安田くん、なおちゃんの過去がどうつながるかわからなかったけど、レビュー記事を読んでからは一気に見やすくなった。ホリガイ(佐久間由衣)みたいに私は人の痛みや理不尽に正面から向き合わない。わからないことの悔しさすら感じない。感じないようにしてるのかな。最初の飲み会でホリガイを人のことがわからないから児童福祉士に向いてないって言ってた男子がまじでむかつく。私はそんなことないよ!!!っておもうけど、ホリガイはそれも真に受けちゃってるのか、だから、そう思っちゃってるのか。私なりの汲み取り方かもしれないが、処女であること=恋愛のコンプレックスをそんなに自分の根本的な性格に紐付けなくてもいいのに、と思ったけど、私にもその時代があったので、みんなそう思いやすいのかもしれない。
あ、あと、タイトルのセリフの使われ方はちょっと違和感があった。

月まで三キロ 伊与原新

Chaptersbookstoreで送られてきた小説。タイトル通り、宇宙系のものがキーワードで、全然違う所にいる人たちがひょんなことから出会って、お互いの人生を変える話の短編集。

アカペラ 山本文緒

お久しぶり!な、山本文緒さん。どの話も家族同士で距離が近くなりすぎてる、変態感がある。家族でいがみ合う話はよくあるけど、近すぎるってのはあまりない気がするね。おじいちゃんを好きになる孫とか、いとこ同士で恋に落ちちゃって惰性的な生活をしてるとか、不思議な依存関係にある姉と弟とか。

三四郎はそれから門を出た 三浦しをん

読んでて思ったのは、私、三浦さんと気が合いそうだということ。(恐縮しろ私)お酒好きで、独身で、本やコンテンツを紐づけて考えるのが好き、普段自分が読まない本を読みたいから電車に乗り合わせた人の本を見ちゃうとか。三浦さんは見るだけでなくて、その本を買って読むのは、私はまだ到達できていない領域。この本は三浦さんの読んだ本の感想で構成されている。いくつかの本をまとめて、一つのテーマにつなげて解釈するのって面白い。私も三浦さんくらい古典から漫画から何でも読めるようになりたいな。

やがて海へと届く

どこにもつかずなお話だった。LGBT系と震災と死との向き合い方と。光石研の死が何を意味したのか(人は理由なく突然いなくなるということ?)まながすみれにキスされそうになったときの涙の意味がまだわからず。すみれは人と距離をとりつつ、どこか達観してて、まなはコンプレックスまみれだけどたどたどしさが人間らしく。すみれがコロコロ髪型を変えていたのはなんだったのか。大学生独特の自分探し?すみれの大学生時代がまじでいるわーって感じの大学生で浜辺美波さすが。
「君はそいつらより永遠に若い」と偶然立て続けに見て、両方とも大学生の女の子ふたりの関係と死が絡み合った話で、一緒に考えたほうが面白いかもしれない。

血も涙もない 山田詠美

やまだえいみ〜〜〜何冊か並行して読んでるんですが、なんかぶっ飛んでる感じがして好き。この本は不倫に登場する人物、夫婦と愛人(女性)の3人の視点で話が展開される。ちなみに、妻は不倫していることがわかっている、それも妻の仕事のアシスタントと不倫しちゃうっていうエグ泥沼。夫は妻と愛人は全く別の役割と捉えているので、そんなに罪悪感を感じてなさそうだし、愛人も割り切っているので「なんで私は愛人なの・・・つら・・・私と結婚して!!!」とかいうメンヘラでもない。

非日常は、日常よりも強烈な魅力を備えているから、それを味わってしまった人は、目く らましに遭ったのも同然。読書とか、映画とか、旅とか、非日常に使われるものは色々あるけど、すぐに日常に戻っ て来て目が覚める。でも、恋は、時々、そうじゃない。本気と思い込んだら最後、なかなか 日常に戻れない。それまでの日常を壊すほどの力を持ってしまう場合もある。でも、そうや って猛威を振るった非日常だって、やがて、新たな日常に取り込まれてしまうのに。妻って、日常なんだなって、つくづく思う。そして、その日常のありがたみを夫という人 種は全然解っていない

さすらいの男とは笑わせてくれる。ものは言いようってやつ?でも、考え てみれば、男と女の親密な関係って「ものは言いよう」で成り立っているようなもんだ。好 きに理由なんていらない、なんて嘘。自分だけが納得出来る好きの要素を積み重ねて、相手 をかけがえのない存在に仕立て上げるのだ。

想像しても絵が浮かばないので、考えないことにした。 元々、私の恋愛は、「事情」や 「しがらみ」や「義理」などとは無縁であるべきなのだ。そして、その信条を貫こうとする と、 「身勝手」や「冷酷」などの称号をいただくことになる。 やんなっちゃうね。 でも、知 ってる? ある面で冷酷になればなるほど、その反対側では熱く熱くなる。そうやって、ど とかでバランスを取っているのが人間。太郎の自由なたたずまいだって、その背後にある不自由が開花させたものだと思う。光あ るところには影がある。逆もまた真なり。明るければ明るいほど、その影は濃くなる。私は、 男でも女でも、そういうのを感じさせる人が好き。

愛人

醍醐味は、はかない。だからこその愉悦なのですが、馴染み過ぎたら、もういけ ません。気をつかわずにすむようになればなるほど、服は着たままでいてねっ、と頼みたく なる。で、そうなると、服を着たままの女と、どれほど楽しめるかが問題になる。スカート をまくり上げてことに及ぶとか、そういうんじゃないですよ。時々、服を脱がなくなっても、おもしろさを保つ女がいる。でもその人は、もう、おれの 女じゃなくなったって感じがする。 じゃあ、友達になれたのかっていうと、それも違う。 わ だかまりのない、昔の女。 それだけ。おれ、かつて付き合っていた女を、友達呼ばわり出来 ないんです。なんか図々しい気がして。

この御時世、年を取るのを「年齢を重ねる」なんて言う。年増を「熟女」なんて気持の悪 名称もてはやしたりする。 女をヴィンテージのワインにたとえたり、外国のどこかの国 めんども では「年取った雌鳥からは良いスープが取れる」なんて言ったりもするみたい。でもね、はっきり言わせてもらうわ。 女がいくら年を取ったって、世知に長けたとか、物 の解ったとかの、大人の女の役割を当てはめないで欲しいの。もう若くない女を便利づかい するために、無理矢理誉めたって無駄なのよ。こと嫉妬に関しては、年齢が物解りの良さに 役立つことなんて、ぜーんぜんないんだから。理不尽にも、自分が欲しいものを、あの人の 方がより多くものにしていることへの腹立ち

桃子への思いは、それまでのどの女に対する気持とも違っていた。もしも未経験の若者 に、恋ってどんなものですか、と尋ねられたら、これか!とすぐに解るよ、と答えるでし ょう。何十人、何百人の女と寝ても、感じなかった未知の光を、たったひとりと出会った瞬 89 間に見てしまう。 考える前に感じてしまう。などと、ドント シンク、フィール! とスクリーン上で言ったブルース・リーみたいな 境地に至ったおれですが、実は、もう気付いてしまったのです。そこに行き着けたのは、喜 久江との長い年月があったからだと。彼女は、実に細やかに、おれという人間を創り上げて 来てくれた。ずい分と手間隙かかったことだろう。時には、夜なべもしたことだろう。でも、 彼女は、つらさなんて、つゆほども見せなかった。自分の功績など少しも感じさせることも なかった。

愛人は妻がつくりあげた夫を好きになり、夫も妻がつくりあげた自分が愛人を好きになっていると自覚している。結婚というのは、つくりつくられる関係ということなのだろうか。ぱっと見えぐい話だけど、意外と誰も傷ついてないし、ベタベタしていなくて爽快な話だった。ので、泥沼ではない。

真夜中乙女戦争(本) F

Fさんの、この、虚しさとスパイスのような書きぶりが好きなんだよな〜小説だけど抽象的な話が多いので、小説ぽくない。

真夜中乙女戦争(映画) 

本を読まないと作品の良さが全くわからんと思う。私がFさんを好きだからかもだけど。先に本を読みました。話の山場と細々シーンを切り取りくっつけられてた。この作品の良さは、言葉の中にある大学生の無意味さ、人生の虚しさと儚さなのに、それが映画だと伝わらないなーーー。本の再現度を上げるためか、本そのままのセリフは結構あり、本に忠実だと違和感もあるな。これだけだと、宗教感強いなって印象になりそう。あまり評価高くないけど、これは映画にしないほうがいい作品。永瀬廉と柄本佑とエライザはハマってたと思う。

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス

あらすじまとめられないので他に託す。アクションとヒューマンとコメディの統合系。奇妙な行動をするとジャンプできて最強になれる設定おもろい。違う選択をしていれば他の人生があって、現実より幸せそうに見えるが、やっぱり今の人生が良い、周りの人を大切にする、というそのあたりはあるあるな締め方。こういうストーリーってよくあって、それをいかに効果的に深く伝えるか、がコンテンツの良し悪しを分けるんだろうな。洋服の色が違ったり、選択を変えて人生が変わる、みたいなあたりがブラッシュアップライフと重なる。実際にブラッシュアップライフもエブエブも仏教思想が根底にある、みたいな記事を見かけていたので、私が結びつけちゃったのかもだけど。改めて仏教ってなんなんだろうな?となった。エブエブに関しては、人間はちっぽけな存在で、虚しいこと無意味なこと苦痛(=ベーグル)があるけど、人生って素晴らしいよね!みたいな?途中でトイレ行ってしまったけど、ほんと一時も目を離したくないなと思った。もう一回見たい。

RRR 

いやー噂に聞いてた通りの。頭と感情が揺さぶられすぎて朦朧としている。ラーマかっこよかったー。最高のハッピーエンド。これを期待してたけど、途中このまま終わるんじゃないかと何度も思った。
「感情が武器になる」最後に読み書きを教えてほしい、っていったのは、ペンは剣よりも強しってことなのかな。
ナートゥかっこよい。エンディングも踊りたくなった。
イギリスのマッリ(連れ去られた少女)に対する異様な執着、すんなり出会ってしまう王妃、無敵な身体、減らない銃弾や弓矢、水と火の対比など、のあるあるー!オンパレードも楽しめた。
アクション系(についてくるぐろい系)が苦手なので所々目を瞑ってたけど、話には十分ついていけた。むち打ちのシーンの歌の字幕は薄目で字幕だけ読んだ。


ちょっとでも、あなたの心にひっかかったら。