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「原発は必要だよ」と言われたら私たちはどんな対話をするといい? 【インスタライブより❷】

3/15に明日香壽川さん(東北大学東北アジア研究センター/環境科学研究科教授)をゲストに表題についてインスタライブを開催致しました。

Instagramのストーリー機能で募集したアンケートでは
多くの人から「原発に関する対話に困ったことがある」という回答をいただき、あわせて質問が寄せられました。

多く寄せられた原発に関する「どう対話したらいいのか分からない」という声

寄せられた声は大きく分けると以下の3点でした。

1.原発がないと電気代は高くなりませんか?/原発再稼動すると電気代下がるから必要だよ!
2.EUも原発回帰しているでしょう? 世界的に見ても今は原発も有力な選択肢なのでは?
3.再エネでは無理!やっぱり原発がないと電気は足りないよ(再エネは不安定だよ)

Instagramストーリー機能、コメントなどで寄せられた意見を3つに分類


本日は後半です!

前半はこちらからどうぞ!(後半を先に読むことも可能です)

——チャットでコメントが入っています。

『原発はCO2を出さないから地球温暖化に影響を与えないでしょ』という人に対してどのように対話すればいいでしょうか?

という質問です。

明日香:原発がCO₂を出さないからといって、色んな選択肢と比べてベストか?と考えるといいと思います。

(もし気候危機に興味がなくても)
「電気代が安い」かどうかは、多くの人にとって重要なことじゃないですか。
CO₂を出さない選択肢の中で、発電コストが低い方がいいですよね。
再エネ・省エネ・原発、どれが安いか、考えたとき、現時点では、再エネが断トツに安いです。
省エネに力を入れることでも安くなります。
再エネは確かに10年前は高かった。ですが、太陽光パネルなど再エネの発電コストは、原発を新しく作る発電コストと大きく差ができています。

——CO₂削減効果についてはどうでしょうか?

明日香:新しく発電所を作るために、仮に再エネと原発同じお金を両方に使ったら、再エネの種類など条件によりますが、CO₂削減効果においても、再エネのほうが原発の5~10倍あると言っていいでしょう。
電気は発電方法が何で作っても同じ電気、それなら、安いので作ったほうが良いし、CO₂を沢山減らせるもので作ったほうが良いですよね。

なので、原発は選択肢として非合理性な選択肢ということになります。

明日香:そういったことを(講演会などでは)数字をもって言っているのですが、なかなか浸透しないですね……。多くの人は"CO₂を出さないから良い"と聞くと「ああ、そうか」とそこで考えが止まってしまいますよね。

——発電コストとあわせて、CO₂削減効果での経済的合理性の話をするということですね。

明日香:1トンのCO₂を減らすために、どれくらい費用がかかるか、という“コスト”の議論までなかなかされていないです。
その背景は、日本政府がずっと言ってきた「原発は安い」というイメージ戦略が、頭に植えつけられちゃっているからだと思いますし、
また「再エネは高い、使えない」イメージも埋め込まれちゃっていますよね。
発電コスト、そしてCO₂削減コストを考えないで「原発は安い、再エネは高い」と思っちゃっている人が多いかな。


——IEA(国際エネルギー機関)の報告書を見ても、長期的にみると、原発は主力電源、という印象はうけません。

——チャット欄より

「私も、会社で「日本は原発を活用するべきだ」と話す人になんて言ったらいいか、ともやもやしていましたが、今の話を聞いていて、みんな再エネの最近の事情(安くなっているなど)を知らなすぎるのかと思った。再エネについて、どう話したらいいでしょうか」

という質問がきています。重なる部分はあると思いますが、いかがですか?

明日香:再エネも色々あります。太陽光、風力、バイオマス、地熱など。太陽光もどこに置くかによって全然違いますね。
森林を壊すメガソーラーや風力など、自然破壊をした再エネは良くないというコンセンサスが、世界中でできています。

再エネポテンシャルとして期待することは
太陽光であれば
・屋根上…日本の建物の屋根上に載っているのはまだ1割弱です。ポテンシャルがまだまだある。
・営農型発電…ソーラーシェアリングという言い方の方が浸透していますか?荒廃農地・耕作放棄地にも設置できるので、
農業を継ぐ人がいなかったり、過疎化で荒れ放題な場所など、そういった場所の土地を有効活用する考えです。

風力に関しては、陸上より洋上風力のほうがポテンシャルがあります。

再エネ普及に関して、自分の周りの景観に構造物ができるのはいや、という人はいます。
一番悪いのは、違う地域や海外の会社がきて住民に説明せず山を切って、太陽光パネルを建てて、お金を他の地域に持っていってしまうパターン。

地域分散型に、自分たちで作って使って、自分たちの収入になるような再エネの選択肢が良いです。
また原発の代替にもなります。
コミュニティパワーといいますか。日本でも他国でも地域のエネルギーを増やそうとしています。

ヨーロッパでは、
ドイツはウクライナ情勢もあり、2035年に再エネ100%にしようとしています。2030年再エネ導入目標80%。日本2030年目標は30%台。
むしろ、再エネが増えて停電が減っています。そして、景観は悪くなっていません。
どういう技術があるか、国の技術力が試されているところです。
日本は技術力があるはず。

話はそれますが、よくある誤解として
「ドイツはフランスに電力を頼っているでしょ」と言われます。
実際にはドイツはフランスに電気を輸出してて、発電量は余っているんですね。フランスの原発の半分が(故障・点検などで)停止しているから。
ドイツに足りないのは天然ガス、ウクライナ侵攻・戦争でロシアからの供給が止まったので、高温が必要な工場でガス不足に困っているから、一時期は原発を使わざるを得ない状況だったりしました。

——フランスの原発が停止した背景には、それこそ気候危機がありますよね。


——G7でのサミットで気候変動アクションなどもありますが

明日香:今、是非注目して欲しいのは「GX(グリーントランスフォーメーション」に関する法案ですね。

GX関連の法案2つの問題点、できること

明日香:日本政府がGXに関する法律を進めています。
その中で問題だと感じる点は
①GX経済移行債・カーボンプライシングの不十分さ
②原発回帰・推進(電源関係)

です。

この2つの点がこれから国会で議論されます。
今月中(3月中)、来週くらい(ライブ配信は3/15)に委員会などで議論され、決定します。
もし採択されてしまうと、法律になって「原発回帰」の動きがほぼ固定化されてしまうんですね。
G7も大事ですが、この法案が通るか通らないかが非常に重要です。

——今月中!今、できることはありますか?

明日香:野党に対して「GX推進法案に賛成しないで」と陳情すること、声を届けることが大事です。
自民党にも。それを僕の周りで(市民団体やNGO)で今やっています。

——カーボンプライシングとはなんですか?という質問がチャットできています。お願いできますか?

明日香:ほんとうにざっくり言うと
カーボンプライシングは、排出される炭素に費用をかけること。
たくさんCO2を出した人・企業が、出した量に比例してお金を払う仕組みで炭素を出すような活動は少なくなります。
 経産省が作っている法案の内容では、カーボンプライシングは
2033年から導入することになっています。
EUは2005年に既に導入済みで、日本は28年遅れて、33年にやっと入れることになるんですね。

特に、非常に重要な問題は、経産省がコントロールすることになることかもしれません。

——今までカーボンプライシングは環境省も検討していたように思います。また、カーボンプライシングは“気候変動対策として絶対やったほうがいい”と常々聞いていたので、2033年と時期は遅くとも、やること自体は良いことなのだと思っていました。

明日香:正に、そこが騙されてしまうところです。カーボンプライシングは、入れば万歳、ではなく、中身が大事、
そして誰がコントロールするかが大事です。
今の法案は、中身も、お金の流れ・いくらかも経産省が決めてしまいます。
また、今のエネルギーシステムを変えないような炭素価格だろうし、
そのうえで時期も遅いので。

——報道・メディアでは原発に関する大転換について報道されていますが、カーボンプライシングについてはあまりとりあげられていない印象をうけます。

明日香:移行債など踏まえて中身・詳細が決まりきっていません。そのため「これから決めます」という形なので分かりにくく、報道もし辛いと思います。ですが、経産省の権益の強化・固定化という点はもっと報じていいはずです。

——私のように「カーボンプライシングは入れるといいんじゃない?」みたいな反応は、国民だけでなく国会議員でもあり得るのではないでしょうか?

明日香:はい、そうです。
自分の周りの研究者・学者がアプローチを行っています。
ですが、「カーボンプライシングは入れること自体はよいこと」
「経済移行債、歳入になるなら、法律はわるくないんじゃないの」
と思う議員もいます。
そもそも、ずっとカーボンプライシング入れたくないと議論が停滞していました。今になって形だけでも取り入れると言い始めた理由は、
EUが炭素関税・炭素国境強制措置を決めたことにあります。

「カーボンプライシングを入れていない国からの輸入品には関税をかけるよ」とEUの方針があるんですね。これが2026年から本格的に実施される。
日本もカーボンプライシングみたいのを入れなきゃいけないねって、議論が不十分な形で、「成長型カーボンプライシング」っ法案にしようとしています。成長型、って名前も変ですね……。

——先ほど、野党に対して「GX推進法案に賛成しないで」と声を届けることが大事だと言っていただきました。
これはあくまで憶測ですけれど、共産党は賛成しないような気がします。
そうすると、しっかり押さえておくべきところは、立憲民主党や維新の会の議員さんでしょうか?

明日香:そうですね。でも一応自分の地域の議員さんで有力な人がいたら、(GX推進法案や原発の方針について、今国会でどのような姿勢で向かうかは)聞いてみることは大事だと思います。

——例えば私の住む神奈川県の立憲民主党の議員さんに、立憲のエネルギー政策にも関わっている山崎誠さんがいます。同じ立憲のエネルギー政策を見てる方だと、「ネクストキャビネット経産大臣」といわれる田嶋要議員の考えなども、分かるといいのですが……


——今後も、2024年のエネルギー基本計画の見直しなど、エネルギーに関する動きもあるので、各政党や主要議員の、
GX推進法案への賛否は、是非聞いてみて欲しいなと思います。
電話だとどきどきしてしまう人もいるかもしれませんが、
議員さんに電話することは、悪いことでもなんでもないし、
いつでも聞ける人でないと、本来はダメですよね。

明日香:是非、今実はすごく大事な話をすているということで、国会の動きを注目してほしいです。

——明日香さん、今日はありがとうございました。



ライブ配信中、チャットでもコメントをいただきまして
なんと2時間近く、原発に関する疑問・質問に答えていただきました。
明日香さん、ありがとうございます。
実際にインスタライブはこちらからどうぞ⇩


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