見出し画像

〈読書5〉働かないアリに意義がある 長谷川英祐

うわぁ働きたくねぇなと思ってアリに学ぶために読みました。

ざっくりまとめ

アリを観察すると7割くらいのアリが「何もしていない」時が結構ある。との結果が出たそうです。生物は人間と違って繁栄のために無駄なことはしないので、一体これはどのような理屈だろうと長谷川先生が研究された内容が書いてあります。

結論は「働かないアリに意義がある」です。

理由はアリの巣に発生する仕事には放置しておくと巣が崩壊してしまう仕事が多く、全員が疲れて動けない状態になると巣が滅びやすくなるので余力として常に働かないアリを用意しておくことで巣の存続可能性が高まる。という結論でした。

ちなみに働かないアリは「絶対に働かないアリ」ではなく「働く意欲はあるけど働いていないアリ」なのです。本著で掃除に例えた部分があったので下に抜粋すると

人間のきれい好きの例で考えます。 部屋がある程度汚れてくると、きれい好きな人が掃除をします。また部屋が散らかってくると掃除をするのは誰でしょう? そう、きれい好きな人です。なぜなら、きれい好きな人はある程度以上に散らかるのが我慢できないからです。 長い時間で見てみると、いつもきれい好きな人が掃除をしていて、散らかっていて も平気な人はいつまでも掃除をしないことになります。人によって掃除という仕事に対す る際の軽さに差があることで、長期的に見た働きの度合いも違ってくるのです。

とのことでした。「まぁこれくらいの散らかり方なら掃除しなくてもいいかぁ」と考えていた個体も、ここからさらに部屋が散らかってくると「さすがに汚いから掃除しよう」となるわけです。こうやって"掃除"="巣の中で発生する仕事(卵の世話、食料確保など)"の量に合わせて巣の中のアリたちから最適な量の労働力を確保するために働かないアリが存在しているのです。

上の例えに則って話を続けると「どの程度部屋が汚くなったら掃除するか」は生態学の世界では"反応閾値"という専門用語があるわけです。これが個体によって違うので、うまく仕事量に応じた労働力が調達できるのです。

これを読んだ働き者の方はこう思うんじゃないでしょうか。「え、てことは一番敏感な人間はずっと働き続けないといけないの?」と。シェアハウスの掃除なんかも多分一緒ですよね。一番綺麗好きがずっと掃除やってるみたいな。アリの世界でも基本はそうなんですが、一番敏感なアリに疲れが出てくると活動をしばらく停止して休息を取るらしく、その時はもう少し鈍感なアリが働き始めるそうです。

こうやって群れ全体で発生した仕事を非中央集権的かつ最低限の力で解決するために生まれた仕組みが反応閾値であり、それが働かないアリの正体だ、ということでした。

ちなみに"チーター(cheater:初めからまじで働くつもりのないやつ)"というのもいて、こいつらはみんなが働いていても本気で働かずに巣の資源を食いつぶすやつなんですが、こういう奴が増えすぎると群れ自体が滅ぶのでチーターも死んで、アリという種族全体ではチーターは一定の割合に治るそうです。アリの仕組みは偉大だ。

なんかピンときたポイント

一言でまとめれば、生き物の「群れ」とは「集団全体がなんらかの機能をもつ、互いに相互作用のある複数の生物個体の集まり」と定義できるでしょう。

群れの定義。ただ集まってるだけじゃなく、集団がが機能を持って相互作用がないと群れって言わないんですね。

伝染病は個体同士の接触や感染した他者の呼気から別の個体へとうつっていくため、群れている場合、群れのなかの誰かが伝染病になると、みんなが危険にさらされます。こんなときは一人っきりでいたほうがよいことになります。

群れのデメリットについて、コロナだ。

遺伝的に同質な個体の集合は伝染病に対する抵抗性が弱く、コロニーが滅びやすいからという仮説です。
もう一つの仮説は、遺伝的に同質な個体からなる完全な群体では、個体間に充分な反応閾値の変異をつくりだすことができず、分業がスムーズにいかないためコロニー全体の効率が落ちてしまう、というものです。

クローンいっぱい作れば、意思統一簡単だから最強の群れができるんじゃね?という問いに対する答え。俺が100人いたら滅びます。

スラムで出てた質問に関わる本書の記述

画像1

7割くらいのアリは仕事らしい仕事はあんまりしていないそうです。1ヶ月観察しても全く働かないアリもいたとか。

画像2

自分の体を舐めたり、目的もなく歩いたり、ぼーっとしてるらしいです。

画像3

画像10

画像9

上に書いてある反応閾値の話が回答になりそうです。ちなみにこの反応閾値はおそらく遺伝で決まっているのであろう、という仮説が提示されていました。ただそれだけでは説明できないこともあるらしく、環境説もあるとか。

画像4

直接的な記述はなかったと記憶していますが、面白い逸話が。
アリが餌を見つけた時に、巣から自分が歩きて来た道を辿って巣の仲間に伝えて、同じ道で運搬するのですが、この道が平地なのにU字になっていたりするとかなり効率が悪くみんな疲弊しちゃうのですが、遊んでたアリが偶然最短経路を見つけて群れの動きが効率化する。みたいな話があるそうです。

画像5

上でも書きましたが働かないアリに疲れが溜まって動けなくなった時は、働かないアリが働くそうです。

画像7

上で書いた「群れの余力」が役割になると思います。

画像8

単位時間当たりに処理できる仕事量は個体間でそこまで大きな差はないと書いてあった(気がする)ので、反応閾値が低い(仕事に取り掛かる腰が軽い)個体はめちゃくちゃ働くアリに該当するのかもしれません。



この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?