見出し画像

短編小説『コーヒーの香る街』

この街の川沿いは、コーヒーが香る。

何十年も続いている老舗の喫茶店に、多くの人に名を知られている大手チェーンのカフェ。

コーヒー豆だけを売っているお店なんてのもある。どう注文していいのか分からず、足は進まない。私がどんなコーヒーを好きかなんて、自分でもよく分からないのだ。


春がにぎやかにやって来て、夏は太陽の主張が激しく、秋は情緒が激しい。冬は人手が少なく、時には真っ白な景色に見惚れる。

季節がいつだろうと、コーヒーは香る。

いつだって変わらないその香りは、なんだかどっしりとしていて、私を支えている。黒のような、深い茶色のような色も、どこかどっしりとしていて、力強い。


──みいちゃん、弱いんやから。何かあったらいつでも連絡するんよ。


コーヒーの香る街へ引っ越したのは、弱い自分と別れ、力強い自分でありたいから…なーんて。理由は単純。この街を選んだのは、職場が近いからだ。

それでも、コーヒー1杯が私を支える。



サポートしてくださった分は、4コマに必要な文房具(ペン・コピック等)やコーヒー代に使います。何より、noteを続けるモチベーションが急激に上がります。