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料理を作りまくったら、ゲームの苦手意識が減った話

私はボタンをたくさん使うゲームが苦手だ。

ボタンがどこにあるのか、コントローラーを見ないと分からない。見ないままプレイすると混乱し、キャラクターを無駄死にさせてしまう。ごめん…。


一方、夫はゲームが得意。ゲーム歴はかれこれ30年近い。

コントローラーで親指だけじゃなくて、人差し指も中指も使うなんてウソやん…え?…ウソやん…と思いながらゲームプレイを見ている。


夫とゲームする日は何度もあったが、使用するボタンが多すぎて私には難しい。使うのは方向キー、ボタン2〜3つで精一杯。

なんとか楽しめるゲームはあるものの、数は非常に少ない。無双シリーズみたいに「ボタンを押せばなんとかなるゲーム」はめっちゃ楽しい。



ところが、予想外のきっかけで「ゲームって楽しい〜!」と思える日が訪れた。


夫とゲームとUnity

夫とゲームエンジンUnityについて少し語る。今回どうしても外せない。


夫はゲーマーで、理想とするゲームがある。しかし残念ながら、理想と100%合致するゲームはまだ登場していないらしい。

Unityというゲームエンジンが登場し、夫の生活を大きく変えた。



ゲーム開発には、数え切れないほどたくさんの工数がある。

たとえば『勇者が悪魔を倒すゲーム』を作る場合、勇者や悪魔といったキャラクター作りをはじめ、背景の制作、メニュー画面・ボタン・当たり判定の設定、効果音の管理…などなど、とにかくやることが多い。

“倒す”という動作1つにせよ、

・ボタンを押すとどんな攻撃をするのか
・敵にはどれぐらいの体力があるのか
・戦闘中にアイテムは使えるのか
・攻撃があたった時、どんな音を流すのか
・敵を倒すとどうなるのか
(例:敵が煙になって消える、勇者が喜びを表現する)

他多数、決めることが山のようにある。体感では富士山3つ分。


全部まっさらな状態でゲームを作ると、機能を一から作らなければならない。気が遠くて、私なら気絶してしまう…。

そこで役立つのがゲームエンジンだ。

ゲーム開発は「画面に3Dモデルを表示する」「ボタンで操作する」「位置を測定する」などの似通った要素がある。

ゲームエンジンにはその似通った要素が詰め込まれ、物理演算や3Dの処理、ボタンの設定などの難しいことをサラサラッとできてしまう。便利〜!



Unityは個人利用が可能だ。しかもほぼ全部の機能を無料で使える。夫いわく「あり得ない」ことで、無料と発表された日は衝撃が猛スピードで走った。

『アセットストア』と呼ばれるWeb上のお店から素材を追加すれば、便利な機能をさらに増やせる。私はUnityを使ってはいないが、夫の手間や開発時間をめちゃくちゃ省いているため、心底ありがたい。


夫は理想のゲームを作るため、Unityで日々格闘している。(ちなみに今はOculus Quest 2を使ったVRゲームを開発中。本業ではない。)


BitSummitでの思わぬ出会い

京都では毎年、BitSummit(ビットサミット)というインディーゲームのイベントが開催されている。

今年は憎きウイルスのせいでオンライン開催だったが、普段はみやこめっせで開催。


BitSummitには夫と同じような、インディーゲーム開発者が参加する。長テーブルにスマホやPC、テレビ、コントローラーなどを置き、訪れた人はゲームで遊べる。

基本的には開発者がテーブルにいて、質問したり、一緒にゲームしたりと交流できるのが大きな魅力だ。開発者を目の前にして話せる機会なんて、一般人にはそうそうない。


京都に引っ越した私たちは、何度かBitSummitへ足を運んだ。
運命の出会いは2017年、第5回目のBitSummit。


任天堂のブースにあった『オーバークック』が私を変えた。

オーバークックは2等身ほどの可愛いキャラクターを動かし、料理を作るゲームだ。

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さすが任天堂。ブースは大きく、目立っていた。

「楽しそうだなあ」と思いつつも、大きなモニターに映されるゲーム画面に、少し「うっ…」と拒絶反応を示した。大きな画面に私の下手なゲームプレイが映されるなんて、とても耐えられない。


しかし夫は、少しでも多くのゲームに触れたい。せっかく会場まで足を運んだのだから、そりゃそうだ。

私だけ躊躇していたところ、近くにいたスタッフの方がやさしく声をかけてくださり、オーバークックで遊ぶことに。

あろうことか、他の来場者の方2人と一緒に遊ぶことになった。私の脳内に警報が鳴り響く。

私はゲームが苦手すぎて、基本的には私1人、または夫と2人でしか遊ばない。夫と私と知らない方2人…。見知らぬ人と一緒に遊ぶオンラインゲームを避ける私にとって、4人で遊ぶなんて非常事態だった。



オーバークックのルールは端的にいえば、料理を作って出すだけ。

突然オーバークックという名のキッチンに放り出され、夫も私も

「トマト…トマトこっち!」
「なるほど!こうやって切るんや…」
「お皿がない!」
「え?お皿洗うの?!」

などと叫びながら、せっせと作ったスープを運んだ。1ステージだけプレイし、あれよあれよと時間が過ぎ、ゲーム終了。

対戦相手のお2人と「ありがとうございました」と声をかけ合い、任天堂ブースを後にした。



「ひゃー!楽しかったね!」
と思わず夫に伝えた。

──そう、楽しかった。楽しかったのだ。


あんなに苦手意識があった、3人以上でのゲーム。たった数分だったけど、4人でわーわー言いながらゲームを楽しんだ時間は、思いのほか私に大きな影響を与えた。


ひたすら楽しいオーバークック

2019年1月。我が家にNintendo Switchが加わり、オーバークックを買うのに時間はいらなかった。

起動すると、ゲームエンジンUnityのロゴが登場し、2人で興奮した。オーバークックもUnityで作られていたのだ!なんてこった!


いざオーバークックを始めると、興奮は止まらない。

野菜を切ったり、お肉を焼いたり、お皿に盛り付けたり、汚れた皿を洗ったりとなかなか忙しい。そして楽しい!!


ピザを例に挙げ、簡単にゲームの流れをご紹介。
(※オーバークック2の画像です。)

左上にメニューが表示され、生地・トマト・チーズの絵が描かれている。絵の下の四角いアイコンはオーブン。3つの材料を合わせ、オーブンで焼く。

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トマトを取り、

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まな板にのせて切る。ボタンを1回押せば、自動で切ってくれる。

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生地とチーズも同様に切り、3つを合わせたらオーブンへ。

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オーブンに入れると、勝手に焼いてくれる。緑のバーは焼き時間を示す。緑が満タンになれば、出来上がり!

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完成した料理はベルトコンベアーへ。これでピザは終わり!

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こんな風に食材を運んだり、切ったり、焼いたり、煮たり、混ぜたりして、ひたすら料理を完成させる。

ミスなく、素早く料理を運べば高得点。ステージごとに点数が決められ、点数に応じて星の数が変わる。星は最高で4つ。4つはかなり大変…。


BitSummitで作った料理は、無論ほんの一部だった。

ハンバーガーにサラダ、フィッシュ&チップス、パスタなどを左上のメニューを見ながら、ひたすら作る。つねに繁盛してるキッチン、つらくて楽しい。


また、ゲームならではの要素もたくさん詰まっている。実は先ほどご紹介したピザのステージは、食材が移動しているのだ。

時には足場が動き、やたらと川に落ちる。
時には横断歩道を渡らないと、料理を運べない。
時にはお肉が焦げて火事になり、消化器を振り回す。

これらをわーわー言いながら遊ぶのは、とっても楽しい。


1人でも遊べるが、キャラクターの切り替えがなかなかしんどい。これまでオーバークックはすべて2人プレイでクリアしている。

ステージによっては、役割分担しないとクリアが難しい。声かけがかなり大事だ。夫と遊ぶ時、必然的に話す。

「私が皿洗いと材料切るのやる」
「あー!キュウリ投げて!」
「ボタン押して!」
「わーー焦げるーーーー」

こんな風に声をかけながら(叫びながら)進めないと、オーバークック完全制覇の道は厳しい。


すると、日常生活でも声かけが上手になった。

「私、お湯沸かす」
「じゃあ箱開けるね」

「ご飯何合炊く?」
「2合!」

もともと夫婦仲は良いが、さらに良くなったように思う。何より家事の手際がすこぶる良くなった。星3つから4つに増えた感じ。


もうアレだ…アレです。全世界の夫婦、カップル、親子、友達。皆にオーバークックで遊んでほしい。

ケンカせずにオーバークックを進められる人とは、きっと相性がいいと思う。相性というか、一緒に家事できるか・住めるかの指標になる。


苦手意識の向こう側へ

オーバークックは2も発売され、そちらも楽しんだ。

2では、大きな大きな中華鍋でラーメンを作ったり、ソンビに料理を提供したりと、盛り盛りパワーアップしている。


2で初登場のブリトー。ブリトーにご飯が入っているなんて私も夫も知らず、謎の白い物体を「白煮込み(しろにこみ)」と命名した。名残で未だに「白煮込みが足りない!」と叫んでいる。

※以下がブリトーのメニュー。青く囲まれているのが白煮込み。

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「しばらく遊んでないな…」というタイミングで無料アップデートが来るのも最高。アップデートで出現したステージも、追加コンテンツも全部クリアした。
(蒸し器があるステージ、足場が動くステージは大体苦手。淡々と作って無になれるステージは大体好き。)

先日はPS5用にオーバークック1と2、ダウンロードパッケージがすべてセットになった『OVERCOOKED! オーバー クック 王国のフルコース』が発売された。PS5をお持ちの方は協力プレイでぜひ遊んでほしい。



たくさんのボタンを使うゲームが苦手な私でも、オーバークックは心の底から楽しめる。方向キーとボタン2〜3個で遊べる。

ロード中にボタンの説明があらわれるのは、本当に本当にありがたい…。ちなみに私の脳内でエモートは排除している。使うボタンが増えてしまう。

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欠点を挙げるなら、やたらとお腹が空くぐらいだ。

ハンバーガーを作ればハンバーガーを食べるし、夜中にひたすらエビを切れば翌朝はエビを食べたくなるし、ブリトーを作ればブリトーが気になる。



オーバークックは確実に私のゲームの壁を壊し、苦手意識を小さくしてくれた。Unityで作られたことにも不思議な縁を感じている。


オーバークックをきっかけに、夫とゲームをする時間が格段に増えた。

オーバークックを開発した会社が作った脱獄ゲーム、ガチョウを操作して人間に迷惑をかけるゲーム、夫が昔遊んでいた格闘ゲームなど、さまざまなタイプのゲームを一緒に楽しんでいる。楽しめている。

ゲーム熱は高まり、最近はVRヘッドセット『Oculus Quest 2』を交互につけて遊んでいる。もしこんなにゲームで遊んでいなければ、興味を示さなかったかもしれない。



──ゲームが苦手で、2人以上でゲームをしたことがない。でも協力プレイで遊んでみたい。でも邪魔にならないかな…大丈夫かな…でも……。

そんな方にオーバークック、おすすめです。お友達やご家族とぜひ!



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