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短編小説『クリスマスイブにお別れを』

しまった。つい、習慣で来てしまった。

今日はクリスマスイブ。カフェの店内にはカップルしかいない。女性の一人客なんて、私しかいない。

心なしか、カップルの距離がいつもより近いように思う。斜め前のカップルなんて、キスしそうな距離でスマホを見てる。近い近い。

隣も、その隣も、そのまた隣もカップル。別に、クリスマスイブに一人で過ごしてるからって、罪に問われるわけでもない。だけど、ここまでカップルだらけだと、どうも分が悪い。



今日、私はめでたく退職した。来週に有給休暇を使うから、今日が最後の出社日。

一週間を乗り越えたご褒美に、金曜日にこのカフェへ来るようになったのは…あれ、いつからだっけ…。思い出せない。

でも、よりによって、今日こんな孤独を味わうハメになる?私のテーブルだけ、前の席が空いている。


しばらくこのカフェには来ないだろう。もう来ない私を寂しいと思い、空いた席をわざと見せつけているのかもしれないな。



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