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短編小説『新しい生活』

パッキパキの制服、後ろに倒れそうな大きなランドセル、初々しい黒スーツ。ふわっと光を放ち、新しい生活が歩いている。

あっちの桜は満開、こっちの桜は散り始め、コンクリートにピンクの水溜まり。皆が避けていた水溜まりは、黄色のバッグをかけた園児がしゃがみ、ピンクの山へと変わった。

「パパ!見て!桜の山!」
女の子はスカートを地面につけ、父を叫ぶ。

「あー!ここちゃん、スカート!」
父もまた、叫ぶ。微笑ましい。

うっ、強い風。目に砂が入りそう。

「うわーん、山がぁなくなるー。パパァー」
「ここちゃん、急ごう。入学式に遅れる」
「うわーん……」

鳴き声とともに山もなくなり、桜ははらはらと舞った。


「すみません、ブレンドコーヒー」
今日、最初のお客さん。初めて見る女の子だ。

「かしこまりました」

コーヒースタンドをオープンし、最初の春。カウンター越しに、新しい生活。

見慣れない人が増えた道から、こうして何人かが寄ってくれるといいな。



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