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スナック菓子に浸る時

 私は普段、スナック菓子を食べない。

 嫌いというわけではない。好きなスナック菓子はいくつもある。ただ、いつ食べればいいのか分からないのだ。食べるタイミングが分からない。

 朝起きて、スナック菓子へ手を伸ばすのは気が引ける。お昼になれば、ご飯をもりもり食べる。夕方に小腹は空くが、スナック菓子を食べてお腹が満たされるとは限らない。もしお腹を満たしても、晩ご飯が入らなくなるのは嫌だ。夜は、当然のごとくもりもり食べる。

 スナック菓子は思ったより満腹にならない。お腹が空いたなら、おにぎりやパンを食べたい。もしくは耐え抜いて、お昼ご飯や晩ご飯をしっかり食べたい。お腹を確実に満たしたい。

 そして、私は面倒くさがりだ。スナック菓子を食べると手が汚れるし、菓子袋を捨てる行為が発生する。まどろみたいおやつタイムも、晩ご飯を食べた後も、ゆっくり過ごしたい。面倒な行為を進んでするわけにはいかない。やはり、スナック菓子を食べるタイミングは分からない。

 夫は私と真逆で、スナック菓子を食べるタイミングを知っている。おそらく、スナック菓子が好きだ。いや、大好きだ。先日の休み、「今日はダラダラする!」と急に高らかと宣言し、ポテトチップス1袋を晩ご飯にしていた。ある時は備蓄用のビスケットをいつの間にか平らげていた。私は全く気づかず、夫の自白により判明。しかも2度だ。 

 夫婦で買い物に行き、たまにスナック菓子を購入する。しかし、私はスナック菓子を食べる習慣がないため、数日後には買ったことすら忘れている。「食べたい」という意思すら起こらない。夫はそんな私を察してか、「食べないなら食べるよ?」と聞いてくる。その時に私は思い出すのだ。スナック菓子が家にあることを。

 私は外ではお酒をよく飲むが、自宅ではほとんど飲まない。金曜の夜や、繁忙期を乗り切った月末はたまに飲む。ただでさえ気分がいいのに、なおいっそう気分がいい。

 今年の6月、人生で初めて梅酒を作った。作ったといっても、青梅と氷砂糖とホワイトリカーを混ぜるだけ。ホワイトリカーのかわりに、スミノフでも梅酒を作った。混ぜた後はひたすら待つ。面倒くさがりの私でも簡単にできた。「簡単」は好きな言葉の1つ。飲む前から最高だ。3ヶ月ほどで飲めると知ったが、口にしたのは約4ヶ月後。これが驚くほど美味しかった。

 梅酒の出来が大変よく、最近自宅でお酒を飲むのが習慣になりつつある。おつまみはなくてもいい。お茶やコーヒーを飲む時のように、梅酒だけで構わない。

 まれに、スナック菓子をおつまみとして食べる日がある。「今日は家で飲もう!」と決めた時はだいたいテンションが高い。突然「プリングルズ食べたい」「ハッピーターンが恋しい」などと思うのだ。なじみのスーパーはとっくに閉店し、コンビニに行くしかない日もある。近所のセブンイレブンを目指して歩く。夜のコンビニはひときわ明るい。いつもは入口のコーヒーに惹かれるが、今晩はおつまみを目指して迷いなく進む。

 セブンイレブンで販売している、チーズ味のカリカリコーンはおつまみの常連だ。チーズの風味がふわっと広がるし、カリカリの食感は飽きがこない。そうだ。思い出した。私はチーズがたまらなく好きなのだ。テンションが高いので、チーズインスナックも手に取る。チーズインスナックは3種類のチーズが凝縮され、食べると口も心もチーズで満たされる。どちらも棚の高い位置に並んでいると嬉しい。無論、しゃがんで取るのは面倒だからだ。ありがたい。

 自家製梅酒のロック、チーズ味のカリカリコーン、チーズインスナックが揃った夜更け。仕事をやりきった後の梅酒は、そりゃあもう格別だ。スナック菓子は袋を開ければすぐに食べられる。簡単。これまた最高。さらに、食べても食べてもお腹がふくれない。いくらでもお腹に入るあの感覚。ずっとチーズ。ずっとチーズに浸れる。おつまみに最適だ。夫の手には2本目の発泡酒。仕事のいざこざも、面倒な行為も忘れ、今は2人でチーズに浸る。

 スナック菓子は、夜更けが似合う。




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