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短編小説『多忙な日だけのコーヒー』

「いらっしゃいませ。お名前を書いてお待ちください」

あーあ。ぜんぜん客減らねー。

「どれぐらい待つの?」

俺が聞きてーよ。5組待ってることしか分かんねーよ。客がいつ食べ終わるかなんて、誰が分かんだよ。

「1時間はお待ちいただくかと思います」
「1時間ねえ。じゃあキャンセルで」

帰れ帰れ。これ以上、来てほしくねーよ。

「またのお越しをお待ちしております」

待ってないけど。



「馬場くん、お疲れ。今日お客さん続くと思うから、休憩入っていいよ。ごめんね、遅くなって」

リーダーの渡辺さんが、レジ横でさっと話しかける。なんで笑顔なんだよ。

「いえ。連休で覚悟してたし、大丈夫です」

休憩1時間押し。まだマシ。

「コーヒー淹れたから、好きなだけ飲んで」
「やった。ありがとうございます。休憩入ります」

駐車場がやたら広い、田舎のファミレス。

渡辺さんは忙しい日、自腹のコーヒーをポット満タンに淹れてくれる。やれやれ。飲んでがんばるかー。



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