チラシの裏の宇宙


最近、物を書くのがまた少しだけ楽しくなってきた。

エッセイを書くにしても、小説を書くにしても、とにかく夢中で書けている気がする。

まっすぐに自分が書きたいものをただ書き綴る。そして、書き終えると『あぁ、書いたぁ』と言いながら、床にごろんと横たわる。その時の何ともいえない達成感は、しずしずと心に小さい星たちを降らせる。

なんだか懐かしい。この感覚。

あ、そうだ。昔チラシの裏に絵を書きなぐってた時のあの気持ちだ。


                        ◇


まだ小学生にもならないくらい小さかったあの頃、おじいちゃんはチラシの裏側が真っ白なものだけをたくさん取っておいてくれた。

それを貰って、私は鉛筆を握りしめて、ただひたすらに絵を描いた。

女の子の絵、動物の絵、ステッキを持った魔法少女の絵。

絵はお世辞にも上手な物ではなかったけれど、そんなこと気にせずとにかく夢中で描いていた。

あの時の私は本当に【夢の中】にいた気がする。チラシ裏の白から広がる宇宙の中で、無重力に身をまかせながらとにかく筆を走らせていた。

描き終わったチラシを見せると『うん、うまい』とおじいちゃんは言った。

感想も嬉しかったけど、私は描き終わった達成感がただただ嬉しかった。

【何か1つ達成する度に、心に小さな星たちがちらちらと降ってくる】

私はその感覚が嬉しくて、何度もチラシの裏の宇宙に、決して上手ではない何かを描き続けた。

                       ◇


あれからだいぶ大人になってしまって、私はチラシの裏の宇宙のことなどすっかり忘れていた。

『できあがり』の美しさが気になり始めた頃、私は自然とチラシの裏から離れていってしまった。

秋は色々な思い出が降っては湧いてくる。

なぜだか、ふとチラシの裏の事を思い出したのだ。

最近のチラシはあまり裏が白くない。スベスベしたあの茫漠な白さに出会うことはもうないのかもしれない。

けれどあの頃、私は確かにチラシの裏の宇宙と繋がっていて、密かな達成感の星でこころが満たされていた。

それを思い出せただけで、私はまた1つ何か変われたのかもしれない。










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