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推しを訪ねて三千里 ①パリ前編

 せっかく時間が沢山あるので、なんだかんだで書けていなかった旅行記をこれから少しずつ書いていこうと思う。第一回目の今日はパリ。ノートルダムの火災から今日でちょうど1年だったので。

 今年の1月17日~20日の3泊4日でパリに旅行してきた。留学先のポーランドから週末を利用しての旅だ。日本からだと直行便でも15時間半はかかるパリも、ポーランドからはトランジットの待ち時間を含めても4~5時間ほどで着く。飛行機に乗っている時間はあっという間だった。

 今回のパリ行きの目的は、ルーヴル美術館で開催されるダ・ヴィンチ生誕500年特別展だった。ルーヴル美術館はモナ・リザが所蔵されていることで有名だが、今回の特別展に際してダ・ヴィンチの絵画作品10点を集めるという。

 10点、と聞くと特別展にしちゃ数が少ないのでは?と思うかもしれないが、ダ・ヴィンチが完成させた絵画作品は数が少ない上にどれも非常に価値がある(少ないから価値がある部分もある)。どんな美術館にあっても必ず目玉になる作品なので、貸出されること自体が非常に珍しいことだ。それが同時に10点も同じ場所に集まるというのは、何と言うかもう、とにかく凄いことである。実際、この展覧会の準備には相当な年月がかかったようだ(10年かけたという情報をどこかで見た)。

 この展覧会がなかったら、留学中にパリには行かなかっただろう。もちろんフランスにもパリにも憧れはあるし、いつか絶対行きたい!とは思っていたけれど、「いつか」だった。日本から直行便はあるし、一緒に行ってくれる人もたくさんいるだろうし、いつ行っても楽しいだろうし。

 だが、特別展があるなら話は別だ。

 今しかない。モナ・リザもサモトラケのニケもミロのヴィーナスも逃げないけれど、ダ・ヴィンチ特別展は今だけだ。日本にいたら展覧会を見るためにちょっとヨーロッパまで、というのは無理だけれど、今なら行ける。行くしかない。行かない理由がない。行かねばならない。

 実は展覧会の情報を見つけたとき、興奮のままに「パリ行っちゃおうかな~」などとツイートをしたのだが、数十秒後に友達から「行くなら一緒に行きたい!行こうよ」という旨のリプライが届いた。そこからとんとん拍子に話は進み、何だかんだで友達3人でのパリ行きが決定。何というか、希望を口に出すことって大事なんだなぁと思った。協力したり共感したり賛同してくれる人が思わぬところから現れたりするものだ。

 パリ行きが決まってからは、展覧会のチケットをオンライン予約したり、飛行機を予約したり、ホテルを探したり。今回の旅行は準備期間に余裕があったので、事前に映画『ノートルダムの鐘』『タイピスト!』『アメリ』でパリのイメージを膨らませ、中野京子先生の著作『はじめてのルーヴル』でルーヴル美術館について予習した。人生初のパリがとにかく楽しみで楽しみで仕方がなかった。

 人々がパリに惹かれる理由は沢山ある。例えば、街中に溢れる歴史的な場所、有名な観光スポット。エッフェル塔、ポン・ヌフ、ノートルダム大聖堂、オペラ・ガルニエ、コンコルド広場、シャンゼリゼ通り。もちろんグルメも重要、有名なレストランやパティスリー、カフェやブーランジェリーが軒を連ねる。さらにはファッションの発信地でもある。

 私の場合、「美術館が沢山ある街だから」というのも理由の一つだ。ルーヴル、オルセー、オランジュリー、ロダン美術館、ポンピドゥーセンター、ピカソ美術館、グラン・パレ美術館、ギュスターヴ・モロー美術館、ケ・ブランリ美術館……。挙げればキリがない。けれど、多くの美術館に収まっている素晴らしい作品に勝るとも劣らないパリの魅力は、やはり街自体がもつ磁力だと思う。それは美しい景色であり、重厚な歴史であり、人々が作るコミュニティだ。

 街を歩けば、そこは既に画家たちが惚れ込んだ風景の中なのだ。知識人や芸術家たちゆかりのカフェがあり、古いアパルトマンが立ち並び、セーヌ河畔をカモメが飛んでいる。淡い朝日を照り返すセーヌ川を見たとき、あ、同じだ、と思った。印象派、モネが海を描いたいくつかの作品に、空気がよく似ている。朝もやで輪郭がぼやけた建物のシルエットや、複雑な色の混ざり合う水面に、初めて見るのに不思議な懐かしさを感じると同時に、パリに来たという実感が湧いた。(写真は朝日が出てくる直前。左奥の方にノートルダムが見える)

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 ああ、ピカソもゴーギャンもゴッホもダリもサルトルもボーヴォワールもヘミングウェイも、かつてこの街に存在していたんだなあ~……パリは芸術の都として、あらゆる人の夢や野望を受け入れ、飲み込み、育んできた街なんだと思うと、何とも言えない感慨のようなものが湧いてくる。そんなことを考えてエモーショナルになりながら歩いていたら、盛大に道を間違えていた。南に進んでいるつもりで西に向かっていたのだった。その後、ウロウロと彷徨いながらもなんとかルーヴルにたどり着くが、今度は敷地が大きすぎて入口がどこだか分からない。ルーヴルはかつて王宮だった場所なので、美術館単体が存在しているわけではなく、様々な建物や庭園が敷地内に集まっている。ぐるりと半周ほど回ったところで、なんとか入口を発見できた。セーヌ川にかかるカルーゼル橋の正面、重厚な門(門というよりは建物の一部に通路が開いている感じ)をくぐるとガラスのピラミッドが見えてくる。

ガラスのピラミッド


うわ~~~~!!!!テレビで5億回みた見た光景!!!女優とかタレントさんがマイク持って立ってた!!うわ~~~!!!来ちゃった!!!  と、ひとしきり暴れ回る(もちろん心の中で)。というのも、今回は友達とは別行動だったからだ。私はルーヴル美術館をじっくり見物すると決めていたので、友達が気を遣って別行動にしてくれたのだ。お互いに目当ての場所が違ったので、ホテルには一緒に泊まりつつ、私は朝から晩までほぼ一人旅状態だった。こんな変な旅行を一緒にしてくれる理解のある友人は本当に貴重だと思う。ありがとうございました、感謝しています。

 そんなこんなでいよいよ憧れのルーヴル美術館に足を踏み入れるわけだが、入場を前にして既にだいぶ長いので今日はここまで。前編は以上です。次が後編になるか中編になるかは長さと相談しつつ、近いうちに続きをアップします。良ければ続きも読んでもらえると嬉しいです。

 

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