今回の33GAKUマガジンでは、 ライフスタイルに寄り添う家具のように、人にやさしい情報技術の在り方を目指す「mui Lab株式会社」(本社:京都)の小林さんと白鳥さんに取材をさせていただきました。 取材の中では、情報テクノロジーと人と自然の調和を考えて作られた、コミュニケーションデバイスの「muiボード」(mui) を実際に操作させていただきました。本物の木を使用した「mui」から感じられたのは、デジタル機器の硬さではなくテクノロジーが穏やかに人の生活にたたずむ未来。 そんな未来を目指す小林さんと白鳥さんの熱い思いをお伝えします。 「mui Lab株式会社」公式ホームページはこちら⇒ https://muilab.com/
木の素材が温かい「muiボード」(左:小林さん、右:白鳥さん)
◆企業概要 2017年10月創業。 会社のビジョン: 『情報テクノロジーと人の佇まいが無為自然に調和した世界の実現』 mui Lab株式会社は、京都の400年以上続く家具街の夷川通りに本社を構え、京都に残る伝統的慣習や美観などの自然と共生するあり方をインスピレーションに、自然素材のIoTデバイスやソフトウェアの開発、UX/UIのデザイン行う企業です。 マーク・ワイザーが提唱したカーム・テクノロジーの設計思想を基に、技術とデザイン力を通じて、これまでの情報テクノロジーの設計の中で見過ごされてきた「情報テクノロジーが人と自然と調和した世界」の実現を目指しています。 そのなかの一つとして、スマートフォンなどの発展により家や街中にあふれる黒いスクリーンが、心の健康面に悪い影響を及ぼしていることを課題とし、デザイン力の応用で解決していくことに取り組まれています。
◆muiボードについて教えてください。 muiは、室内のあらゆるスマートホームデバイスを一つにまとめるIoT機器です。 天気予報や日々のニュースを確認したり、エアコンや音楽などの調整、ボイスレコーディングやメッセージ機能を使用した家族とのコミュニケーションができます。 メッセージボード機能がついているので、カフェなどのお店に置き、お客さんとの会話のきっかけやコミュニケーションになるんです。 muiのショートムービーはこちら⇒ https://youtu.be/KYpbf69X8tU
メッセージボード機能をつかった手書きの文字入力 ―素材にもこだわりがありそうですね
そうなんです。 素材の候補として大理石などもあったけれど、素材を決め兼ねていた当時、岐阜県の飛騨で合宿をしました。そこで、子ども達を含め人は木に温かみや癒しを感じるというインサイトがあり、木を採用することにしました。 木を電化製品に採用するということで、結果的には、1年越しの開発苦悩がありましたが。 弊社のクリエイティブディレクターが厳選した材料の中から、空間に程よくなじむ部分をさらに選び出して使っています。 斑模様、光の入り方や表面のつやなどもこだわっているので、木目や色味のバラエティとさまざまな木の個性を楽しんでいただけると思います。
―今後、松本や長野へどのように展開していきたいですか?
そうですね。 まだあまり認知されていないのですが、松本の協力してくださる会社やエンジニアの方とコラボレーションしていきたいと考えています。 muiをただお店に置くだけではつまらないと感じています。 最近よく見かけるようになったレジ周りのQRコードやポップを このシステムですべてまとめることができます。スッキリしますよね。 ほかにも店員さんやお客さんが直接メッセージを書き込み、表示させることで、コミュニケーションの一つにすることもできます。 コーヒーショップの導入事例:https://youtu.be/YyCHgoW4jbg IoTデバイスなので、見栄えがよいだけでなくお客さまへプラスαを生み出せる使い方をしたいです。もし良いアイデアがあればぜひ教えてください。
◆これまでを振り返ってみて失敗した出来事はありますか? じつは失敗を考えている暇がなくて、、 毎日がジェットコースターみたいです。笑 そんな環境を結構楽しみながら働いていますね。 ただそのなかで、これならいけるだろうと考えていたものが、 実際に作った後に、これじゃないなとなる事が多々あります。 でもこれは、失敗というよりも「正常なプロセスの一つ」だと考えています。失敗してなんぼ。これじゃなかったな、というのを繰り返してなんぼ。 それを積み重ねたからこそ、今の形にできているのだと思います。失敗が悪いと言っていたら、何も新しいことができないです。 誰もやったことがないことをやってるので、全ての要素を鑑みた見積りもできず、予算を大幅に超えてしまうこともありますよ。ハードウェアを作っていると、ものをつくるためにどうしても資材調達や生産計画など、さまざまなことを検討する必要があります。 そこが難しいところなのですが、面白いところでもありますね。
―ものづくりならではの、難しさや面白さがあるんですね。
そうですね。 ものづくりでは、10台作るのと1,000台作るのと1万台作るのとで難しさが違ってきます。 10台なら、少し知識があれば誰でもできる。 1万台となると、部品の調達や販路を考える必要があるので大変。 ただ、1万台以上となるとそれを請け負ってくれる協力会社様がいらっしゃるので、お願いしてやっていただくことができます。 なかでも、一番難しいのが100~1,000台作ることです。
―それはどうしてですか?
いくつか理由があって、 まず部品の調達。 半導体部品は5,000個や1万個単位で取引するものなので、100個や1,000個程度では、代理店に相手にしてもらえず部品を購入することが難しいんです。 それに加えて、昨今の半導体不足も影響が大きいですね。 つぎに生産ライン。 1万台なら工程を組んでもらって行うことができるけれど、 100~1,000台だと、自分達で生産ラインを組むことも可能な規模なんです。ただ、僕らは開発しないといけないので、全てを自分たちでやることは厳しい…。 この規模では生産ラインを組んでも利益を出すことが難しいので、対応してくださるパートナー様を探すのも苦労します。 そして組み立て。 IoT機器ですので、クラウドサービスと接続するために一台ごとに固有の情報を書き込む必要があったりするのですが、こう言った部分が工場では意外に難しく、対応いただくためにご苦労をおかけしています。
◆ものづくりの難しさに対して何か取り組まれていることはありますか? いろいろな工夫を行っていますが、私が気に入っているのが、生産工程管理にクラウドを使いどこにいても検査データを管理できるシステムです。 生産システムをクラウドに構築し、全体で共有・管理ができるようになっているのは割と珍しいと思います。 一般的には、工場の中で生産システムの管理を完結させているところが多いのですが、私たちは「ファブレス」でも工場を持っている場合と同様の見える化を行うことで、様々な問題に対し早めに対応できるようにしています。 工場の内外からクラウドの管理システムに入ることができるので、どの部門でもリアルタイムで生産状況を把握することができるんです 。
◆0から1を生み出すアドバイスはありますか?・・・難しい質問ですね(笑) 個人的には、まずは小さな規模で試してみるのが良いと思います。『迷ってるなら手を動かせ』 手を動かして初めてわかることがある。失敗を繰り返して、どんどん次のステップを繰り返して、そうすることで新しい物を生み出せると考えています。 新しいことを始めようとすると、最近はすぐ起業とか創業とかって言葉がでてくると思うのですが。。。 私は起業や創業は楽しそうなことだけでなく、辛いことが多いと思っています。 だけど、それを超えてでもやりたいことがあるのであれば迷わずやってみるのが良い、そう思いますね。 起業は手段であって、目的ではないはずです。 ますはやりたいことを整理する。 個人的に起業は最後の選択だと思っています。
インタビューは以上です。 今回のインタビューを通して、お二人がものづくりの難しさを楽しさと感じながら働かれていることがとても伝わってきました。 まずはやってみる、失敗してなんぼ。トライ&エラーの精神だからこそ、新しいことに挑戦していけるのだと感じました。 小林さん、白鳥さん、お忙しい中ありがとうございました!
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