焦る気持ちをかみ砕こう ドラマ「ゴハン行こうよ」 #555
映画・ドラマ・音楽・食など、いまや韓国コンテンツは世界中でもてはやされています。わたしもそれなりに夢中になっておりますが、なんでもあるような気がするのに、これがないというものもあります。
それが、おひとりさまの食事文化。
韓国へひとり旅をして、なにより困るのは食事です。最近ではひとりで食事できるところも増えてきましたが、おいしいごはんは、だいたい2人前以上の注文になってしまう……。
なにより、ワイガヤしながら食べる方がおいしい!
グルメドラマがほとんどなかった韓国で、注目されたのが「ゴハン行こうよ」シリーズです。グルメブロガーのク・デヨンをメインに、各シリーズにヒロインが登場。恋のドタバタや、通り魔事件といったミステリー要素を入れ込みつつ、おいしそうな食事が登場します。
主人公は、「ごはん」というドラマです。
「ク・デヨン」を演じるのは、アイドルグループHIGHLIGHT(旧・BEAST)のメンバーであるユン・ドゥジュン。33歳、バツイチで一人暮らし、食べることが大好きという女性イ・スギョンを演じるのは、まんまイ・スギョンという俳優です。
10年ものあいだ、スギョンに片思いしてきた弁護士のハンムン、超絶ポジティブ思考の隣人ジニが、話を盛り上げてくれます。
トッポギ、サムギョプサル、プデチゲなど、日本でも知られている韓国料理について、毎回さまざまな“うんちく”が披露されます。その姿はまるで、「ソムリエ」。うーん、おいしそー!
(画像はAmazonより)
ワインソムリエの田崎真也さんが書いた『言葉にして伝える技術――ソムリエの表現力』には、「職人のこだわりがつまった逸品」とか「肉汁があふれだす」といったグルメ記事でよくお目にかかる表現は、実はなーんも伝えていないと厳しい一文があります。
「ゴハン行こうよ」には、そんなありきたりな表現はひとつも出てきません。おいしい料理、味わい、香りを表すのに、これだけ多彩な言葉が使えるようになりたいなーと思いながら観ました。
韓国料理が食べたくなってしまう楽しいドラマなのですが、残念なことに、このドラマにはひとつだけ瑕疵があります。
それは「外見」を揶揄するところ。2013年に放送されたドラマとはいえ、ここまで露骨な表現は、現在では作れないだろうなと思います。そこはちょっと残念なところ。
最終回に紹介された詩人チョン・ヤンヒさんの詩は、じーんと沁みました。
ごはん
寂しくて食べるというあなたへ
退屈だから寝るというあなたへ
悲しいから泣くというあなたへ
炊いてあげよう
焦る気持ちをかみ砕きなさい
どうせ人生は自ら消化するものなのだから
「ゴハン行こうよ」シリーズは3まで制作されています。人生の”味”をかみしめながら観たいドラマです。
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