ツチヤ

ヘリクツは身を助ける 『われ笑う、ゆえにわれあり』 #213

哲学書というと、眉間にシワが寄る気がしませんか?

分厚くて、一文が長くて、翻訳調で、屁理屈っぽくて、意味不明。

なんでこんなに詳しいかといいますと、いちおう哲学科卒だからです……。読むのにめちゃくちゃ苦労した本もいっぱいあります。というか、そんな本しかない!

のですが、哲学教授の土屋賢二さんのエッセイは違う。あらゆる人生の悩みと苦悩と失敗とダメダメを、笑いに変えてくれます。

「週刊文春」に連載されたエッセイをまとめた本です。会社員時代、ツチヤ教授のエッセイが読みたくて、「週刊文春」のある喫茶店でランチを食べていました。

ツッコミのいないひとり漫才といいましょうか。

自虐を超えるひとり笑いといいましょうか。

ヘリクツをこねすぎて蹴られてしまうみじめなおじさんの姿が目に浮かんでしまうのです(勝手な想像です)。

脳科学者の茂木健一郎先生によると、ユーモアとは知性なのだそう。自分たちの置かれている状況を客観的に認識する「メタ認知」こそ、ユーモアに通じるからです。

ツチヤ教授はお茶の水女子大学名誉教授で哲学者ですが、本にはほとんど哲学の話は出てきません。日常的な妻とのおしゃべり、秘書とのやり取り、学生との授業風景がほとんど。

そこに、知性を感じる!

……かどうかは分かりませんが、笑えることは確かです。

古代ギリシャの哲学者ソクラテスだって、見方を変えればただの偏屈親父でしょう。道行く人に議論をふっかけて、「こいつ、なんも考えてねえじゃん!」って。やなヤツ!

ツチヤ教授の論理に触れると、哲学の見方が変わるかも。



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