韓国版「座頭市」 映画「雲を抜けた月のように」 #296
韓国の演技派俳優ファン・ジョンミンのフィルモグラフィーを追っていると、時代劇への出演が少ないことに気がつきました。まだすべてを観たわけではないのですが、友情出演した「平壌城」と、「雲を抜けた月のように」くらいしか見当たらないんですよね。
大ヒット映画「ベテラン」のパンフレットで、自身の俳優としての魅力について、「人懐こそうな顔をしてるからかもw」と語っていますが、時代劇と合わない顔立ちというわけではなさそうなのに。
たぶん唯一、時代劇で主演を務めているのが「雲を抜けた月のように」です。
<あらすじ>
舞台は1592年。豊臣秀吉による朝鮮出兵の直前です。日本軍と戦うために結成された組織「大同」のトップが反逆の疑いをかけられて処刑されてしまう。「大同」の新しいトップとなったイ・モンハクは政権奪取を狙うが、これに反対するファン・ジョンハクは、少年キョンジャと共に、彼の後を追い……。
ファン・ジョンミン演じるファン・ジョンハク。ややこしいな……。彼は盲目ですが、剣の達人です。下品で、スケベで、口が悪い。彼に命を救われた少年キョンジャは、父の敵であるイ・モンハクを討つため、剣術を教えてくれとお願いするのですが。
見事にポカポカやられちゃう。
毎日、ポカポカやられているうちに、よける術を身につけ、徐々に武器の扱いにも慣れていくんです。設定は「座頭市」、展開は「ベスト・キッド」な感じですね。車磨きはしてなかったけど。
韓国の時代劇を観ていると、剣も剣術も、日本のものとはずいぶんと違うんだなーと感じます。調べてみたところ。
日本刀:片刃で反りがある刀身→一番効果的な攻撃は切りつけること
西洋剣(一般的な長剣の場合):まっすぐな刃で両刃の揃った切っ先→一番効果的な攻撃は突き叩きつけて押し切ること
日本の剣術では刀を両手で握りますが(居合術ではわたしもそう習った)、韓国の剣士は片手で刀を振ることが多いんですよね。ジャンピング切りつけ!!!という感じで、体重を乗せて「突き差し込む」ような技です。
そのせいか、動きがとてもダイナミックです。
「雲を抜けた月のように」はマンガが原作の映画です。ただし、登場人物の設定を利用しただけで、ストーリーはまったく違うそう。
日本軍がすぐそこに迫っているというのに、党派争いをしていて、迎え撃つ、逃げる、どっちの方向に逃げる、なーんも決められない様子は、滑稽でしかない。
ファン・ジョンミンのセリフにこんなものがあります。
雲に隠れているというだけで、月がなくなったわけじゃないだろ?
盲目の剣士が月の存在を感じる。この映画で、「月」はさまざまなものを象徴して語られます。そのひとつが「夢」。
見えないからといって、「ない」わけじゃない。
もっと「見える」の奥にあるものを感じられるようになりたい。
(※画像はKMDbより)
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