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生き方を変える勇気 『自分の中に毒を持て』 #285

「何のために絵を描くのか」

岡本太郎が生涯悩み続けた問いは、「何のために生きるのか」でもあったのだと思います。『自分の中に毒を持て―あなたは“常識人間"を捨てられるか』に綴られている岡本の厳しい言葉には、何度も何度も胸を貫かれました。

1911年生まれの岡本太郎は、芸術一家に育ちました。父は漫画家の岡本一平、母は小説家の岡本かの子です。20歳でパリに留学。1970年に大阪で開かれた万博でテーマ展示プロデューサーを務め、「太陽の塔」を完成させました。

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(画像はWikipediaより)

フランスの哲学者ジョルジュ・バタイユに大きな影響を受けたと語っていますが、初めて彼の演説を聞いた時には「素手で魂をひっつかまれたように感動した」のだそう。たとえも激しいな。岡本の本を読んでいると、「自分らしく生きる」なんて言葉がとても軽く聞こえてしまうんですよね。

実は公開延期となってしまった映画「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」の予告編に「今日も“自分らしく”を連れて行く」というコピーを見て、正直「また出たー」という気がしていたのでした。(観るのは楽しみなんだけど)

現代はそんなにも“自分らしく”生きることが難しいのでしょうか……。うん。難しいんですよね。

本の中で飛ばされる岡本の檄はただただ「出る釘になれ」です。自分らしくあるために覚悟を持つことを訴える。

才能のあるなしにかかわらず、自分として純粋に生きることが、人間のほんとうの生き方だ。頭がいいとか、体がいいとか、また才能があるなんてことは逆に生きていく上で、マイナスを背負うことだと思った方がいいくらいだ。
他人に対して自分がどうであるか、つまり、他人は自分のことをどう見ているかなんてことを気にしていたら、絶対的な自分というものはなくなってしまう。
あっちを見たりこっちを見たりして、まわりに気をつかいながら、カッコよくイージーに生きようとすると、人生を貫く芯がなくなる。

安全な道と危険な道。迷ったら、危険な道を行けという岡本。何かをやろうと決意した時、意志もエネルギーも湧き出してくるからです。

それこそ、生きるということなんじゃないか。


4月は毎年、新人研修を担当するので、激務の一か月となります。特にわたしが講義では「正解のない」問いを考えてもらうことにしているので、なおさら消耗します。

「正解を教えてください!」

そう言われる度に、「正解はありません」「もし正解と呼べるものがあるとしたら、自分の中にしかないよ」「自分のすべてだと思えるまで考えることにトライして」と言い続けてきました。それでも抜け出せない「正解主義」の呪い。

岡本とジョルジュ・バタイユが熱く語り合った時代には、ナチスをはじめとする民族主義の台頭や経済不安がありました。もしかしたら現代ととても似ているのではないかと感じます。こんな時代に学校的「正解主義」を抱えてはいられない。

大胆に、鮮やかに。生き方を変える勇気を持ちたい。

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