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“山内”の存亡をかけた「インデペンデンス・デイ」な戦いに泣く 『弥栄の烏』 #507

長いシリーズほど、「終わり方」は難しいもの。韓国ドラマだって長ーい話ほど、うまく終わらせるのが難しかったんだろうなーと感じてしまいます。昨年公開された「スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け」も、「とうとう」という気持ちと、「え?」という気持ちと、両方を味わいました。

「八咫烏シリーズ」は第6巻で第一部が完結すると聞いていたので、『弥栄の烏』が発売された時は、けっこうドキドキしていました。で、読んでみて思ったこと。

「インデペンデンス・デイやな!!!」

和風ファンタジーと評される雅な世界から、異星人と人類の攻防を描いたSFパニック超大作へと変貌する力。一大スペクタクルなストーリーと、「真の金烏(きんう)」のナゾに、圧倒された一冊でした。

八咫烏の一族が支配する異世界「山内」を舞台に、一族の長である「金烏」の座を巡っての権力闘争、「ぼんくら次男」と呼ばれてきた少年の成長、そして外界から攻め込んできた天敵との対決を描く「八咫烏シリーズ」。

金烏の側近である雪哉は、八咫烏の軍を率いる参謀へと昇進しています。ですが、要となるはずの金烏・奈月彦には、金烏として持っているはずの「歴代の記憶」がない。「山神」はなぜこのタイミングで動き出したのか。神をなだめる方法はあるのか。

「山内」の存亡をかけた手探りの状況が「インデペンデンス・デイ」を彷彿させたのでした。

「八咫烏シリーズ」は第1巻と第2巻が対になっています。そして第5巻と第6巻も。『玉依姫』の裏側で何が起きていたのかをのぞくことができる構成です。猿と烏の戦いだからなー。蟹が出てきもよかったかもと思った。笑

「うつけ」と呼ばれた若宮・奈月彦と、「ぼんくら次男」の雪哉は、雪哉がどれだけ主である奈月彦を信頼できるかという物語でもありました。その雪哉の成長というか、変貌というかに、ちょっと心を持っていかれてしまいます。

ふたりは主従関係にありながら、「迷コンビ」として友情も支えになっていたのではないかと思います。だから、ラストの青い朝顔が咲き乱れるシーンに、思わずウルッとしてしまった。

弥栄の烏2


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