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中年にも、もう慣れたとはいえモヤる日々のこと 『こんなの、はじめて?』 #415

女性には、名字で呼ばれる女と名前で呼ばれる女の二種類がいる。

エッセイストの酒井順子さんはそう語り、「あゆ」や「くーちゃん」など、名前で呼ばれるアーティストには、“湿気”を帯びた異性ウケを感じるとしています。

名字で呼ばれる女として浮かぶのが「アムロちゃん」。「アムラー」という社会現象を引き起こすほどの人気は、同性に支持されたからこそ、成し遂げられたといえるかもしれませんね。

わたしも先日初めて「ひとりカラオケ」に行って、ひとしきり「アムロちゃん」の歌をうたいました。アスリートのようでもあり、武士のようでもある「アムロちゃん」。カラオケのMVもかっこよかったです。

1966年生まれの酒井順子さんが、40代前半に書いたエッセイをまとめた『こんなの、はじめて?』には、「中年にも、もう慣れた」とあります。それでも世の中には「初めて」のことがいっぱい。「不惑」のお年頃ではありますが、惑うことだっていっぱいあるんです。

中高年男性向けの雑誌である「週刊現代」に連載されていたエッセイのせいか、「現代のアラフォー女性ってこんなことが気になって、迷って、とまどってるんですよ」というガイド本のようにも感じます。

中でも笑ってしまったのが「下座の醍醐味」という章です。

入社して三日目という新人編集者と仕事をすることになった酒井さん。「二十歳年下の法則」を発見されたそう。

「相手が二十歳以上年下だと、多少失敗されても礼儀知らずでも、イラッとせずに可愛く思える」

たとえば新入社員時代は接待に行くと、オーダーやタクシーの手配など、お世話と気配りで忙しいものでした。「いつか後輩にやってもらえる日が来るのかしら」と思っていたけれど、いざ自分が先輩になり、上座に座るようになると、その居心地の悪さにモゾモゾしてしまう……とのこと。

わたしも、若かりし頃は「オトナっていいなー」とも思っていたのですが。いざ、その「オトナ」の世代に突入したころ、時代も変わりました。

誰も気を使わなねー!!!

接待の席で、タバコをふかしながら爆笑している新人を横目に見つつ、あれこれと手配に忙しいわたし。いちおう「接待研修」というものを受けているらしいのですが、なんだこの状況は? ここは合コン会場ではないぞ?

「いつか後輩にやってもらえる日が来るのかしら」

わたしの場合、「いつか」は永遠に来ないと知った夜でした。きっと、「五十にして天命を知る」ことも、「六十にして耳順」することもない気がする。それでも、やることがはっきりしている「下々の者」は、気持ちは楽。いまさら「上座」に座らせられても、たしかにモゾモゾしちゃうかもしれません。

この本の前作である『いつから、中年?』と一緒に読むのもおすすめです。

先日リタイア生活に入ったダンナは、毎日「お片付け」を楽しんでいます。「上座」に慣れていた人が、こんなにせっせと動くとは意外でした。酒井さんは「中年にも、もう慣れた」そうですが、「この年齢を生きるのは初めてだから」の気持ちも持っておきたいな。

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