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自分の偏見に気づかされる秀作 映画「無垢なる証人」 #433

躍進中の韓国映画で、注目したい俳優のひとりがチョン・ウソンです。日本でもすっかり有名になったソン・ガンホ(53歳)、ファン・ジョンミン(50歳)より少し年下の47歳。1994年に映画「クミホ(九尾狐)」でデビューして以来、映画を中心に活動しています。

とにかく演技の幅が広いんですよね。「アシュラ」と「私の頭の中の消しゴム」なんて、別人のようです。

新たな一面を見せてくれたなと感じた映画が「無垢なる証人」でした。チョン・ウソンはこの映画で「百想芸術大賞」映画部門大賞、「青龍映画賞」の主演男優賞などを受賞しています。

<あらすじ>
弁護士のスノは、出世のかかった仕事として、殺人事件の弁護士に指名される。容疑者の無罪を立証するためには、唯一の目撃者である少女ジウを証人に呼ぶ必要があるが、彼女は自閉症のため、コミュニケーションが難しい状態。何度も通ううちにジウのことを理解するようになるが……。

チョン・ウソン演じる「あきらめモードに入った弁護士」が、再び“熱”を取り戻せるのかどうかが見どころです。

コミュニケーションがとれない少女ジウを演じるのは、子役出身のキム・ヒャンギちゃん。ドラマでも姿を見たことがありましたが、やっぱり印象に残っているのは「神と共に」シリーズの使者役です。かわいかったー!

推理劇のどんでん返しはスカッとすることが多いですが、この映画の場合、自分が“色メガネ”をかけていたことに気がついて、呆然としました。

この記事でも何度も書いている「コミュニケーションがとれない」という言葉。これは努力の放棄であり、本当の意味で相手の言葉に耳を傾けていなかったということなのかもしれない。

映画の中で、ジウは青いゼリーが好きという設定があり、太陽に透かしてキラキラする様子を楽しんでいます。このゼリーは映画のために特別に作ったものだそうで、これだけで700万ウォンも使ったそう。

そのおかげか、映像がとても美しく仕上がっているし、「人と会話するよりも、ゼリーに夢中な女の子」感がとても強いんです。これがイ・ハン監督の演出力。チョン・ウソンの「誠実なフリ」、キム・ヒャンギちゃんの「会話になっていないようにみえる言葉」のかみ合わせも、いい演技を生んでいたんだなと感じます。

意外なラストに、しびれる映画です。自分の偏見に気がついていなかったことに、打ちのめされました。


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