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奴隷貿易のリアルを描いた人間ドラマ 映画「アミスタッド」 #344

「日本人はアイヌが山奥でひっそり暮らしていた人だと誤解している」

以前、北海道の学校に勤める先生に聞いた話です。日本人は彼らの生活の場を奪ったことに気づいていない、ということです。同じように、アフリカ系の人々がアメリカで暮らしている理由を知らない人がいるのだそう。彼らの場合は「強制的に連れてきた」のですが。

その、「強制的に連れてきた」奴隷船をめぐる事件を映画化したのが「アミスタッド」です。

<あらすじ>
1839年。ライオンを倒し、村の英雄となったシンケ。拉致されてアミスタッド号に乗せられます。嵐に乗じて反乱し、船を乗っ取ることに成功しますが、着いた先はアメリカでした。そこで海賊行為と謀殺の容疑で裁判にかけられることになり……。

キューバの海岸沖で発生した「アミスタッド号」事件を元に映画化。監督したのはスティーヴン・スピルバーグです。ドリームワークスを設立して初めての作品となりました。音楽ジョン・ウィリアムズ、脚本マイケル・カーン、俳優はアンソニー・ホプキンスやモーガン・フリーマンと、超重量級をそろえたぞ!という布陣です。

日本で公開された1998年当時、映画館で観たのですが、嵐のシーンが終わるまで、画面のほとんどは薄暗い船の底。PCやテレビで観る時は、解像度の高いモニターを使った方がいいかもしれません。ま、後半は法廷劇となるんですが。

そんな視認するのも難しいような、真っ暗な船の底にすし詰めにされた人々。食べ物も十分に与えられまま、長い航海を送ることになります。

観ているこちらも怒りがわいてくるよ……。

アミスタッド号がスペイン船籍だったことから、スペイン女王は「積み荷」の返還を求め、奴隷に対する所有権を主張する購入主、謝礼を求める将校ら、それぞれの思惑が入り乱れ、裁判が中断する事態に。

アフリカ人の支援者も現れ、大きな注目を集めることになった裁判は、結果的には奴隷廃止運動を前進させることになりました。

白人にとっては商売の品である「積み荷」でしかない。人間として扱われないとは、こういうことなのかと感じます。航海の途中、食糧が足りなくなりそうな時、どうするか。衝撃の展開でした。

「奴隷貿易」という言葉は学校で習った記憶があるし、本や映画でも何度も目にしていました。でも、言葉として知っているだけだった。

53人のアフリカ人の目的はただひとつ、母国に帰ること。「強制的に連れてきた」人々のリアルがこの映画にあります。


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