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事件発生! 漫才コンビは「山内」を救えるか!?『黄金の烏』 #504

ファンタジー小説といえども、あまりにも現実世界とかけ離れていると、のめり込むのが難しいものです。その点、「八咫烏シリーズ」は、平安朝を彷彿させる舞台設定であること、陰謀と冒険、友情と活劇というテーマなこともあって、読みやすさもおもしろさも百倍です。(当社比)

シリーズ第3巻目の『黄金の烏』では、八咫烏の天敵が大暴れ。「山内」の外には“人間”が住む世界があり、「金烏(きんう)」の秘めた力が明らかになっていきます。

「金烏」のお妃選びに秘められた陰謀を描いた『烏に単は似合わない』、その裏側で「金烏」は何をしていたのかを追った『烏は主を選ばない』。宮廷では「うつけ」と呼ばれている「金烏」の奈月彦は、北家出身の少年・雪哉を側仕えにします。

おかげで雪哉は危険な目にもあい、権力争いにも辟易し、第2巻のラストで辞意を表明してしまいます。

第3巻は、実家のある垂氷郷に帰った雪哉の話から始まります。仙人蓋と呼ばれる危険な薬の被害、大猿によって全村人が亡くなる事件など、不穏な事件があいついで発生。ついに雪哉の元へ宮廷から呼び出しがかかります。迎えに来たのは「墨丸」という部下のはずが……。

「金烏」の奈月彦、その人やないかーい!

この巻でも、漫才コンビのような奈月彦と雪哉の会話が楽しめます。大猿は八咫烏の天敵なため、これまでは「山内」に入り込まないよう厳重に管理されていました。なのになぜこんなことに?

そんなミステリー要素も加えつつ、徐々に明らかになっていく「金烏」の秘密に興奮してしまいました。

「金烏」は八咫烏界の長です。地位は世襲制ですが、「真の金烏」と「金烏代」がいる。「真の金烏」がいない時だけ、代理を務めるのが「金烏代」です。「金烏」はいくつかの点で八咫烏とは違う性質を持っているため、「真の金烏」と「金烏代」はハッキリと分かってしまうのだそう。

「うつけ」と呼ばれながらも、兄宮を差し置いて奈月彦が「金烏」に選ばれたのは、奈月彦が「真の金烏」だからなのですが。

本人はその運命を受け入れるのか。

受け入れるも何も、そう生まれてしまったのだからそう生きるしかないのですけれど、「運命」って変えられないものなのだろうかと読みながら何度も思いました。

これまでは宮廷が舞台でしたが、今回は平民の暮らしも出てきます。貧しさや家族の確執など、わたしがいま暮らしている現実世界と変わらない絶望があります。これはもうページをめくる手が止まらないほどのストーリー。でも実は、ここからがもっとおもしろいのですよ。

第1巻の『烏に単は似合わない』と、第2巻の『烏は主を選ばない』は、同じ時期の話の裏表なので、どちらから読んでも大丈夫。そしてぜひ3巻へと進んでください。


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