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なんでそうなる!?の連続に引き込まれていく非現実の世界 『猫たちの色メガネ』 #389

SF小説に登場する動物といえば、「猫」だなと思います。なにを考えているのか分からないところが合うんでしょうか。「犬」だと現実的すぎるのかもしれません。ハインラインの『夏への扉』なんて、ここは「猫」じゃなきゃ!と思わせてくれる小説でした。

そんな「猫」と共に、というか、「猫」が不思議世界への扉を勝手に開いちゃって収集がつかなくなっちゃう小説が、浅生鴨さんの短編集『猫たちの色メガネ』です。

読んでいて、星新一のショートショートを思い出しました。不条理で不合理。なんでそうなる!?の連続。わたしがショートショートを好きになったのは、まさにこういうところだったなと思います。

電車に乗っている時に本を読むことが多いのですが、一駅くらいで一編を読み終えることができるショートショートってちょうどいいんです。「あぁ」と思いながら電車を降りて、階段を歩きつつ、ニマニマしてしまう。

長編小説だとこうはいかないですよね。週末に寝っ転がって読みながらゆっくり没頭したい。

本の話に戻りますと、浅生鴨さん自身、猫を飼っておられるそうで、作品にはよく猫が登場します。たとえば、KADOKAWAの文芸WEBマガジン「カドブン」に掲載されている『猫たちの色メガネ』特別番外編には、「猫型AI」が登場します。これまたニマニマしてしまうお話。

今年1月に出版された『面白い!を生み出す妄想術 だから僕は、ググらない。』には、接続詞をつないでお話をつくる方法が紹介されています。こちらにもやっぱり猫が登場。

その猫はかわいかった。

“適当に書いた”というこの一文から、順接と逆接の接続詞でお話をつないでいきます。

だから、猫には自信があった。
しかし、いまいち人気はなかった。
そこで、猫は人気を集めようと考えた。
けれども、どうすればいいのかわからなかった。

このお話がどこに向かうのか、予想もつかなくてワクワクニマニマしてしまいます。

そんな予想もつかない、読み出したら止まらない27の物語がつまった『猫たちの色メガネ』。鴨さんもやっぱり星新一や筒井康隆を読んでらしたそうで、“浅生さんの迷子読書遍歴”選書にて、「僕の人生を狂わせた一冊」として紹介されています。

長い文章を読むのが苦手という後輩に、短編なら読める?と紹介したのがこの本でした。後日、感想を聞いてみると。

「話が非現実的すぎじゃないですか?」

とのことでした……。リアリストにSFはムリだなんて。猫好きだからいいかなと思ったのに。いやー、ナハハと笑いながら、本好きになれそうな一冊なんですよ、ホントに。

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