ほっといて

腹筋が痛いよ 『私のことはほっといてください』 #210

日常の出来事に無駄な妄想で切り込んでいく。読んでも何の役にも立たないけれど、思わず笑いがこみあげて、不思議と元気が出てくるエッセイ集。

わたしがいま求めているものは、そんな、何の役にも立たないかもしれないけれど、読むと気持ちが楽になる「心の柔軟剤みたいな本」です。

要するに、燃え尽きております。笑

誰かの成功談を聞いて、そのやり方をマネをしたり、お役立ちTIPSが流行ったりする昨今。20代新人に橋本治さんの『桃尻娘』をおすすめしたら「この本から何を学べばいいですか?」と聞かれて、「ふーむ」となったこともありました。

そんな人に北大路公子さんの『私のことはほっといてください』なんか薦めたら、さらに「???」となるのかもしれません。でも、わたしとしては超絶おすすめしたい本なんです!

北海道で暮らす北大路さんの日常と、さまざまに、あちこちに、ふらふらと吹き飛んでいく妄想が綴られています。

カッパとの出会いと別れ。

深夜にテレビの音量と格闘。

ストリートビューで郵便局まででかけて迷子。

なんじゃそれは!?と感じる展開の、あまりのバカバカしさに笑いが止まらなくなります。

「電車で読んではいけない本」シリーズにぴったりの一冊。

と、ここまで書いていて思ったのが、「役に立つ」ってなんだろうということです。大学の文系学部不要論が取りざたされたり、自分の仕事の価値を疑ったり、どこかでだれかになにか貢献していないと「存在価値」がないとされてしまう。

でも、それってどうよと思うのです。

存在を認める理由は、価値のある・なしではないんじゃないか。誰かにとっては意味がないかもしれないけど、他の誰かにとっては日常の潤いになるかもしれない。

「自分は価値ある存在だと認められたい」という承認欲求にとらわれると苦しくなるばかりです。そんな時こそ、「おや?」というものに自分なりの価値をみつけてみると、視点が広がりますよね。なにより気持ちに余裕が生まれます。

北大路さんの本につまっているものは、仕事の役に立つことはなさそうだし、家事の時短にもなりません。でも、日常を豊かにしてくれる最高の贈り物「笑い」がいっぱいつまっている。

読むと気持ちが楽になる「心の柔軟剤みたいな本」です。腹筋は痛くなるかもしれないけど。


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