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他者への「愛」を知らない自意識高い系 『女帝 小池百合子』 #356

こんなにも「愛」のない人が、政治家、しかも都行政のトップにいていいんだろうか?

ノンフィクション作家・石井妙子さんの著書『女帝 小池百合子』を読んで、最初にそう感じました。

ドイツの政治学者マックス・ウエーバーは、政治家に必要な資質として「情熱」「責任感」「判断力」の三つを挙げています。

現在、東京都知事選挙戦が絶賛開催中で、今週の日曜日7月5日には投開票が行われる予定。立候補者の中に、上の資質を持っている人はいるのでしょうか。

投票する人を決めた方も、まだの方も、2016年8月2日に都知事に就任からの通信簿をチェックしたい方も、投票前に『女帝 小池百合子』を一読することをおすすめします。

わたしが「小池百合子」という名前を知ったのは、細川護煕内閣ができた頃だったと思います。テレビキャスター出身という華やかさ、ハキハキとした話し方は、ドスンと重苦しい雰囲気の政界の中で際立っていました。

「政治家」としての「小池百合子」について知りたい方は、第四章から読んでもいいかもしれません。とり入る→嫌われる→切り捨てるを繰り返してきた様子がよく分かります。

彼女に関して、何度も取り沙汰されているのが「カイロ大学卒業問題」です。本でも多くのページを割いて、留学生活の実態について触れられています。

学歴よりも実力では?と考える方なので、なぜそればかり突かれるのだろうと思う程度の興味しかなかったのですが。読んでみて驚きました。

彼女がエジプトで同居していた女性は、「真実を知る者」として身の危険を感じるほどだったのです。

ちなみに、経歴詐称自体は、基本的に犯罪とはならないのだそう。ただし、公職選挙の候補者が経歴を詐称した場合は、公職選挙法第235条により罪に問われます。また、卒業証明書などを偽造した場合には、公文書偽造の罪に問われる可能性があります。

小池さんの場合、著書に名刺大の不鮮明なものを掲載。これが、2017年にテレビ出演した際に公開したものとは違っているのだとか。

キャスター時代に、「ごめんなさい! 難しくて卒業できませんでした。テヘペロ」って告白しておけばよかったのに……。

同居していた女性が小池さんのノートをのぞいて、そこに書かれていた「This is a pen」レベルの文章のあまりのつたなさに驚いたという記述に、わたしも驚きました。留学して外国語を学んだ経験者だから分かる「ムリ」感といいましょうか。

韓国語やアラビア語のようにローマ字を使わない言語は、アルファベットを覚えるだけでも大変なのです。

わたしは韓国の私立大学にあるランゲージスクールに半年間通いました。日本で韓国語のアルファベットを学んで行ったので、なんとか下から2番目のレベルに入学。それでもわずか6か月です。このまま学部入学なんてしたら死ぬな、と思いました。

小池さんの場合、日本でまったくアラビア語を学ばずエジプトに渡り、とある大学のランゲージスクールに入学。そこからカイロ大学に入学して数々の試験を突破、主席で卒業したと語っています。

いやー、「主席」とまで言わなきゃよかったのに……。

なぜ、ここまで経歴を疑問視されつつ、突っぱねることができたのか。その原因に、男社会の闇を感じました。

小池さんがなにより得意なところは、権力者にとり入ることです。トップとの関係を絶対的なものにしてしまえば、異論は鶴の一声でかき消されてしまう。そこに“あえて”もの申すサラリーマンは日本にいないことが、よく分かります。

「小池百合子学歴問題」は、諦めと萎縮の結果なんですね。

彼女がテレビ東京の番組に抜擢された当時のことを、「自分が起用した」と語る人の多いこと。これがいわゆる「アレ、オレ詐欺」というやつなのか。笑

陳情に訪れた阪神淡路大震災の被災者たちや、拉致家族の前で繰り返される無神経な発言は、彼女が「愛」を知らない人なのだなと感じさせます。

「もうマニキュア、塗り終わったから帰ってくれます? 私、選挙区変わったし」

マニキュアを塗りながら陳情を聞いて、この発言。誰かのためになる、でも地味な仕事には興味が持てないようです。

2016年の都知事選立候補時に、掲げた公約は「7つのゼロ」でした。

・待機児童ゼロ
・満員電車ゼロ
・残業ゼロ
・都道電柱ゼロ
・多摩格差ゼロ
・介護離職ゼロ
・ペット殺処分ゼロ

言ったことをやらずに、思いつきのパフォーマンスに終始した3年ちょっと。東京都の自治体専門誌「都政新報」が発表した、都庁職員による知事評価は「46.4点」だったそうです。もちろん、満点は100点ですよ。

政治家に必要とされる資質「情熱」「責任感」「判断力」。彼女の「情熱」は、あきらかに自分をよく見せることに使われています。自意識高い系なんでしょう。公約を実現していないことに対する「責任感」もなく、築地市場の移転問題を見ても「判断力」がないことを感じます。

なによりこの本を読んで感じたのは、他者への「愛」を知らない人が為政者となっていることへの恐怖でした。





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