怪物の大暴れに思う。やっぱコレでしょ! 映画「悪人伝」 #373
「戦後の韓国で日本語が一番残っている分野は、警察。あと、新聞と教育もあるね」
韓国に留学していた頃、植民地支配前後における韓国語の変化を研究している先輩に話を聞いたことがありました。警察・新聞・教育分野に日本語が残っている理由は、支配の徹底のために利用した機関だからとのこと。
ヤクザ組織にもだいぶ入り込んでいるんでは……。なんて、映画を観ていると感じます。オヤブンやナワバリといった言葉が飛び交っているから。
韓国映画で組織の親分を演じさせたら、右に出るものはいないと感じるマ・ドンソクが、またもや大暴れしてくれました。
7月17日に公開された映画「悪人伝」です。
<あらすじ>
ヤクザの組長チャン・ドンスは、ある夜、何者かによってめった刺しにされてしまう。はみ出し者のチョン刑事は、最近起こった事件に連続無差別殺人鬼ではないかと疑う。手がかりを求めてドンスにつきまとうが追い返されることになる。しかし、警察の科学力、組織の動員力が必要であると悟ったふたりは、共闘して犯人を探すことに……。
なんといってもマ・ドンソクの怪物ぶりが見どころです。マ・ドンソクは、日本では2017年に公開された映画「新感染 ファイナル・エクスプレス」で一気に人気俳優となり、2018年には「犯罪都市」など4本、2019年には5本の映画が公開されています。
このほとんどがアクション映画なんですよね。タイプの違う、ちょっとかわいらしい役を演じていたのは「神と共に 第二章 因と縁」くらい。ここでは逆に、腕っ節を封印して「人間に暴力を振るえない屋敷神」役でした。
こんなに怪物系アクションばかり演じていては、あっという間に消費されてしまうのでは……という心配の声も上がっていましたが、「悪人伝」で見せた姿は、「やっぱり、コレでしょ!」なものでした。
韓国に生まれて、18歳で家族とともにアメリカに移住。皿洗いのバイトをしながら家計を支え、フィットネストレーナー、ボディービルダーを経て、俳優デビューします。シルヴェスター・スタローンの「ロッキー」を観たことがきっかけらしいです。
昨年、「悪人伝」のハリウッドリメイクが決まったそうなのですが、プロデューサーはなんと、スタローン!!
すげー、夢ってホントに叶うんだなー。
キアヌ・リーブスの人気シリーズ「ジョン・ウィック」最新作に出演オファーがあったそうですが、この映画のために断ったんだとか。ハリウッドデビュー作となったマーベル映画「Eternals」は、今年11月にアメリカで公開されます。どんな鉄拳が繰り出されるのか、こちらも楽しみ。
ビンタ一発で部下を黙らせる、迫力満点の親分ですが、Instagramではお茶目な姿も見せています。マ・ドンソクのアイマスク。欲しい。
運の強さ、押しの強さ、腕っ節の強さを兼ね備えているものですから、並みの俳優だとすべてマ・ドンソクに飲み込まれてしまうんですよね。でも、はみ出し刑事を演じたキム・ムヨル、殺人鬼を演じたキム・ソンギュはガッツリくらいついていて、3人の対決に目が離せなくなりました。
劇場映画はこれが2作目となるイ・ウォンテ監督は、脚本も担当しています。
ひとつ難点をいうならば。
ラストシーンの、いっこ前で終わってほしかった。殺人鬼が初めて感情を露わにするところ。もうあの後は予想できるので、あそこで終わってくれた方が、怖さが倍増してよかったかもなーと思います。
どよんとした重苦しい湿気を振り払いたい方にもおすすめです。マ・ドンソク独占インタビュー付きなので、パンフレットも買いですよ!
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