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迷える青年の成長ストーリー 『花よりも花の如く』 #277


校正者の職業病は「眼精疲労」と「肩こり」です。「腰痛」もかな。

ほとんどの人がナナメ読みしているのであろうWebの記事だって、ガン読み。忙しいときはご飯を食べる暇もなくずーーーーーっと原稿を読んでいます。最近はこれに加えて新人研修を担当しているので、ハイテンションでしゃべりまくる→黙々と原稿を読むを繰り返すという、引き裂かれるような日々です。

そのせいか、「眼精疲労」が悪化。パソコンのモニターを見ていると涙が止まらなくなってしまったので、目薬をもらいに眼科に行きました。で、お医者さんに約束されられてしまったのです。

「まーた寝転んで本読んでるでしょ。仕事以外で目を使うの止めてね」

バレたか。

寝転んで本を読んだりテレビを見たりすると、目と対象までの距離が左右で違ってしまいます。そのため視力に差が出てしまうのだとか。わたしは左右の視力がかなり違うため、この眼科に初めて行ったとき、キツく言い渡されていたのでした。

とはいえ本は読みたい。映画も観たい。いまは映画館に行けないから、iPadでデジタル配信されている映画やドラマを観ています。毎日noteを書いているネタも、そうして作っているのですが。

止めろと言われても本を手にしてしまうのは、性のようなもの。これがなくなったら、わたしではなくなってしまいそうな気がする。

榊原憲人にとっては「能」が、そんな存在です。3歳で初舞台を踏み、20年以上も能役者をやりながらも「ペーペー」という、迷える青年。そんな憲人を主人公に、能をテーマにしたマンガが成田美名子さんの『花よりも花の如く』です。

「能」の舞台って観たことありますか?

劇場での公演、野外の舞台、薪能、実はいろいろやっています。ですが、その裏側は謎だらけですよね。謡いも聞き取りにくいし、ストーリーもよく分からないという超えもよく聞きます。わたしもそう思います。そんな「能」初心者にとっても優しいガイドになっています。

成田美名子さんの前作『NATURAL』のスピンオフ作品である『花よりも花の如く』。タイトルはもちろん、「能」の創始者・世阿弥の言葉です。

母方が「能」の一族だったこともあり、自然と舞台に立つことになった憲人。養子に出された弟との距離、記憶喪失だった母の友人との旅、痴漢騒動、そして恋。稽古と舞台漬けの毎日を、役者として消化していく様子が描かれます。

美女にも鬼にもなれる能役者という仕事。「拷問芸能」と呼ばれても、止めろと言われても、謡の本を手にしてしまうのは、憲人の性のようなものかもしれません。

迷える青年の成長ストーリー。「メロディ」連載中で、単行本は19巻まで発売されています。電子書籍でも読めますよ。


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