姿を変えて続く“奴隷制” 映画「13th -憲法修正第13条-」 #345
「アメリカの人口は世界全体の5%にすぎないにも関わらず、受刑者は世界全体の25%を占めている」
オバマ前大統領の問題提起から始まる映画「13th -憲法修正第13条-」。
「修正第13条」とは、「奴隷制廃止条項」を指しています。
<奴隷制と不本意な隷属を米国内では禁止する。犯罪への処罰を除く。>
すべての人に自由を認めるはずの条項ですが、但し書きの部分「犯罪への処罰を除く」は、法律の穴として利用されているのではないか。多くの学者や活動家にインタビューし、「奴隷制は終わったのか」を検証しています。
1915年に公開された無声映画「國民の創生」は、アメリカで最初に作られた長編映画だそう。南北戦争と再建に翻弄される家族を描いたもので、すべて「白人の視点」から作られています。
映画は大ヒットしたそうですが、この映画に描かれた「怠惰で、野蛮で、レイプ魔」というアフリカ系アメリカ人のイメージが、現在も続いていると指摘されています。逮捕され、連行される黒人。檻の中で不満の声を上げる黒人。メディアが作り上げたそんなイメージは、わたしの中にもありました。
「13th -憲法修正第13条-」のインタビューを観ていてハッとしたのが、南北戦争後の「奴隷」たちについてでした。
彼らは望むと望まざるとに関わらず、奴隷主の農場や家で働いていたのですが、「はい、解放しまーす」と言われても行き場所はありません。
多くの黒人がロサンゼルスやニューヨークに移動したそうですが、その理由は経済的なチャンスを求めたからではなく、白人による投獄と暴力を恐れたから。彼らは「難民」だったという指摘です。
「怠惰で、野蛮で、レイプ魔」を取り締まるべく、歴代の大統領がさまざまな法律を整備します。これは時代に合わせて姿を変えた「奴隷制」であり、どんどんと刑務所に送られるアフリカ系アメリカ人の数は増えていく。
映画の中に出てくる受刑者の数、社会的な出来事と、奴隷や人種問題に関する映画を一覧にしてみました。以前はほぼ横ばいだった受刑者数が、「大量投獄」の時代と呼ばれた70年代から、一気に増えていきます。「監視下の黒人の数は1850年代の奴隷の数より多い」という話も出てきました。
トークのテーマが切り替わる時、ラップが流れるのですが、その歌詞もまたイタい。
「We still in chains」
彼らはまだ、鎖につながれているのです。
今週はずっと奴隷制度とアフリカ系アメリカ人に関する映画について書いてきました。奴隷たちの境遇には、観ていて何度も胸が詰まりました。アメリカでの彼らの闘いに共通する想いはただひとつ。
「人間として認められたい」
これは、上の表にある映画にも共通するテーマでした。
1849年、奴隷として生まれながら脱走し、多くの奴隷たちを救出する活動に身を捧げた人物がいます。アメリカの新しい20ドル札の「顔」になるはずの人物。ハリエット・タブマンです。
「人間として認められたい」という当たり前のことを求めて活動したハリエット。彼女の活動を描いた映画「ハリエット」のコラムが、今日の18時に街角のクリエイティブで公開されます。こちらも読んでいただけるとうれしいです。
※追記
街角のクリエイティブの記事はこちらから!
「ハリエット」失敗しない女が向かった“夕日”の意味とは
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