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カラスの国家のあり方に衝撃 『楽園の烏』 #509

世界を、上から見るか、下から見るか。

それによって、見え方は大きく違うのではないでしょうか。わたしは「mame」という名前のとおり、世界を「下から」見ていることが多いんですよね。だからきっと、背の高い人とは見えている世界が違うんだろうなと思います。

体格だけの話ではなく、たぶんずっと「下から」見ている。

ミシュランの星付きレストランを経営する村山太一さんの本『なぜ星付きシェフの僕がサイゼリヤでバイトするのか?』には、「リーダーこそ、一番下っ端から見える職場を見るべし」という話が出てきました。

わたしは年をとることで、どんどん自由になったように感じています。ただ、「叱ってくれる」人が減ってしまうのも事実。社会人一年生の人にはうらやましい話かもしれませんが、実はこれほど怖いことはないのです。もちろん「星付きレストランのシェフ」ではないけれど、一番しわ寄せがいってしまうレイヤーのことは、頭に置いておきたい。

本の内容を紹介した記事もありますよ。

第1部が完結した「八咫烏シリーズ」。天敵である猿との戦い、記憶の戻らない「金烏(きんう)」によって、「山内」は徐々に滅びることが決定的となりました。それから20年後を舞台とした『楽園の烏』では、少年だった雪哉が「エライ人」へと変貌。その危うさと、裏側にハラハラしたのでした。

<あらすじ>
養父が亡くなり、奇妙な遺言とともに、「山」の権利を相続した安原はじめ。タバコ屋を営みながらぐうたらと暮らしています。が、「山を売ってほしい」という人が次々と現われ、ついに拉致されるようにして、奇妙な「山」の奥地へと連れてこられます。そこに暮らすのは八咫烏の一族。はじめは、遺言の秘密を探ろうとしますが……。

『弥栄の烏』から20年後とあり、これまでの作品に登場していたメンバーも貫禄がついているようです。第4巻『空棺の烏』で、「金烏」の側近である雪哉は武官を養成する「勁草院」に入所します。ここでの確執が、『楽園の烏』に引き継がれているんです。

「山を売ってほしい」と“横柄”な雪哉に頼まれたはじめは反発。まずは「山内」を見学することにします。

予定されていた宿や視察先は、どこも「きれいな場所」ばかり。こんなところばっかり見てもなーと思っていた矢先、襲撃をうけてしまう。避難したはじめの目を通して、「山内」のド底辺の生活を知ることになります。

雪哉は権力を握ったはずでは?

肝心の「金烏」はどこへ?

疑問ばかりが浮かびますが、最後に「そう来たかー!」と思わせてくれる展開が待っています。

最後の最後の、めっちゃ大事なシーンに誤植もあり。公式が訂正ツイートをされています。これは校閲ガールとしてドバッと汗が出た案件でした。

「山内」の存亡をかけた戦いを描いた第1部から、ひとつの国家のあり方を問う第2部へ。今後の展開にも期待大。

やっぱり。

物事は「下から」見た方が、真実に近いように感じますね。

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