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たまゆら(あさのあつこ)

第18回島清恋愛文学賞を受賞した作品です。ただし、普通の恋愛文学とはかなり趣が異なります。恋愛の内容がかなり濃く衝撃的です。

解説には、

異界と人里の境界線で暮らす老夫婦と、ある日そこを訪ねてくる年若き女性との交流に始まって、それぞれの現在と過去が交錯し、やがてそれぞれの秘密が露呈していくさまを巧みな構成で描き、私たちに山の永遠と、それとは対照的な、人の命の儚さと一生の短さを見せてくれる作品です。

とあります。主題は恋愛なのですが、半分程度は自然(山)の事に言及しています。自然と人の対比を読んで感じる事ができます。

主題と外れた部分で私が「そうだなぁ」と思った箇所がこちら。

何度も申しますが、真実を語れる者などどこにもいないと、わたしは思うております。まして、愿一に会ったこともない、沼幡の屋敷に住んだこともない、山に抱かれる恐怖も甘美も知らない者に、沼幡愿一を僅かも語れるわけがないと。わたしが海を語れないのと同じように、です。

事件を起こした人について、元妻が語った言葉です。

今、世界中でいろいろな事件が起きています。そしていろいろな報道が流れていますが、絶対的に足りないのは、当事者の言葉です。日本で語られているのはどこまで専門家であろうと、「憶測」に過ぎません。あとになって全然違う展開になっていてもおかしくはないと思います。

真実を知ることは、実に、非常に難しい。情報の受け手はそれを胸を刻んで、簡単に「こうだ」と決めつけないようにしなければ。この本を読んでそう思いました。


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至ってごく普通のサラリーマンのつもりですが少し変わった体験もしています。