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妄想リスニング#2 Jonsi "Go"×Jamire Williams "Effectual"

世の中に、"ドラムの音だけを延々聴いていたい"と思う人はどれほどいるだろうか。
まぁ、間違いなくそんなに多くはないでしょう。
で、その多くない人たちの中のほとんどがドラマー、もしくは打楽器奏者なんじゃないだろうか。

鍵盤打楽器のように、しっかりした音階があるなら、そこにはリズムと同時にメロディも聴き取れるでしょう。
ところが、ドラムって、、、基本的に音階らしい音階はなく、高い音低い音、硬い音柔らかい音、その他諸々の、いわゆる"非音楽的"な音の数々が出てくることがほとんどです。

多くの人がドラムに持つイメージは、"リズムを刻む"ことに特化した楽器というものじゃないかな。
だから、一定のパルス、なんらかのパターンになっているとそこに音楽の片鱗を感じられらようになると思います。

さて、今回のお題であるJamire Williamsの作品"Effectual"にはそういう一定のパルス的なものはほぼ見当たりません。
エレクトロニクスを含む数曲はあるものの、リズムパターンを刻むようなシーンはなく、文字通りのドラムソロ!

ドラマーだからって、1枚を通してドラムソロの音源を楽しめるかと言われると、全然そんなことないでしょうけど、僕はこのジャマイアの作品、大好きなんです。
じゃ、なんで好きかというと、この作品は、うーん、言葉で言うのは難しいけど、"外の音"のようだと言えばいいかな。
窓を開けたら入り込んでくる、そんな外の音に近いんです。
耳を澄まして聴くとたくさんのいろんなことが起きてるけど、ただ耳に入ってくるだけなら環境の音に混じって溶けていってしまう、そういう音楽です。

僕的に1番贅沢な音楽鑑賞は、優れた音響のホールの高価な席で聴くものではなく、何気なく流れてくる外の音の隅々にまで耳を傾けることなんです。
もう、この時点でかなりマニアックなリスニングなんですが、そういう環境音を意識と無意識の間で作り出すというのが、ドラムはどうも向いてるんじゃないかなぁと僕個人は思うんですね。

そんなジャマイアウィリアムスの音楽と繋がるのが、Sigur RosのボーカルのJonsiのアルバム"Go"ですね。
ジャマイアのドラムソロに対して、ヨンシーの歌ものとじゃ、まるで対極じゃないか!と思うでしょうが、ヨンシーの歌はメッセージ性もさることながら、やっぱり気になるあのファルセットの美しい"サウンド"。
そしてヨンシーの作品では、打楽器のように散りばめられたたくさんの音を聴くことができます。
ランダムのようでそうでなく、規則的なようでそうでないその音は、まるでドラムソロと同じように響いています。
近年のシガーロスやヨンシーの作品は、かつてのものと随分違って、ダイナミックなリズムアプローチが目立つようになっていますが、もともとオルタナティブな音楽はそういうものを内包しているわけで、時代の先を行くヨンシーが今現在のリズムアプローチの最先端であるジャズやEDMを聴かないわけがないと思うんですね。
Goをはじめて聴いたときの僕は音大でジャズを勉強中で、そのあまりの衝撃に、"これはジャズを勉強するには絶対必要な音楽だから、みんなで聴かなきゃ!"と思って、学校の図書館に置いてもらうよう書類申請したのでした。

ジャマイアとヨンシー、繋げて聴くと、僕の知りたかった音楽の核が見えてくる気がします。




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