子どもが人生の岐路に立った時:人生の選択に親が出来る事
1 親としての無力さ
「会社辞めようと思うんだけど」GWが近づくと思い出す息子からの電話。
尖った性格と家庭の事情で大学を卒業した時の就活はほぼ全滅。
卒業直前に受けたプログラミング講座のスキルだけを頼りにようやく採用された小さな会社。しかも契約社員という不安定な身分。
当時はいろいろあって頼りになるはずの企業人の父親とは断絶状態。
「母である私が何とかしなくては!」そう覚悟を決めたものの、人生で教師の仕事しかした事がなく企業の事はさっぱり分からなかったあの頃。
息子が必死に電話で聞いてきた事は今でも、はっきり覚えてる。
・本当に辞めて大丈夫かな?
・次を決めてから辞めた方がいいのかな?
・そもそも会社勤めは向いているのかな?
・この仕事を続けるとして、いつまで体がもつかな?
・他の仕事も考えた方がいいのかな?
東京に住む息子と電話で話をしながら、その時に自分が話せる事は精一杯伝えたつもりだったのに…。
「親に相談した僕がバカだったわ」
「もっと、よく自分で考えてみる」
そう言って切られた通話の後の「ツー。ツー。」という音が今でも耳の奥に残ってる。
息子の人生の大きな決断に責任を持つのがこわかった私は、おざなりな事しか言えなかった。
どっちともとれるような、誰でも無責任に言える事。
それが自分でも分かっていたから自分が情けなくて泣きそうになった事を覚えてる。
2 違うやり方の可能性
子供が人生の大きな岐路に立った時、親に出来る事は何だろう?
当時は、何をどう言っていいか分からず、何の支えも参考に出来る事もなかったけど、今仕事で使っている「進化思考」の視点で考えたら、全く違う事が言えたかもしれない。
進化思考は大きく2つのプロセスに別れていて変異と適応という2つのプロセスを螺旋のように繰り返しながら思考していく思考方法。
この変異の9つの視点や適応の4つの観点から、子どもが人生の岐路に立ち、どの道進むかの選択に迷っている時、もう少し親らしいましな事が言えたのかもしれない。
まず【適応】を使って聞いてみる。出来れば時間を取り書き出していくといろいろな事が見えて来る。
系統:自分がこれまでやって来た事はどんな事? それはどうに今につながって来た? そこにはどんな思いがあった?
(何がどうつながって行くか家系図みたいにつないで行くと一目で分かり使いやすい)
生態:今の自分がつながっているのはどんな事? 今の仕事は誰と何とどんな場所でどんな風につながっている? それは自分にどんな意味を持つ? 自分にとってプラスになる事とマイナスになる事は?(これも出て来た事や物や場所等を線でつないで見るといろいろな事が見えてくる)
解剖:そもそも自分はどんな人間? 自分を形づくるものや事は何?学歴や資格? 趣味や特技?幼い頃からの信念は? どんな未来への希望がある?(見えるものも見えないものも全て書き出してみる)
予測:もし、このまま今の会社に勤め続けたら、どんな将来になる? もし転職したら、どんな将来になる?(数値やデータなど客観的な指標となるもので考えると現実を直視出来る)
〇年後本当は何をしていたい?どんな未来を望むの? どんな仕事をして、どんな人生を送っていたい?(〇には好きな数字を入れて望む未来を描いてもらう)
ここで自分の理想がはっきりしてきたら、その観点で今の状況を見直して新しい取り組み方を考えてみる。
次は【変異】使ってみる。
欠失:今の仕事の仕方でやらなくても困らない事は何? 習慣でやっているけど失くせる事はどんな事?
増殖:仕事の中で興味があって、もっと積極的に膨らませてやってみたい事は?
変量:自分が関わる業務の中でやる量を減らしたり増やしたり、手順や使っているツールの中でサイズを変えたり対象になる人の人数を変えたりメンバーの数を変更したり出来る事は?
擬態:どんな仕事の仕方をしたいの?「~みたいな仕事」「〇〇型ワーク」に入れるとしたら、どんな言葉?
交換:会社はそのままで業務を入れ替えるとしたら、どんな業務をしてみたい?
移転:今の仕事を、その会社ではなくて別の場所でやるとしたら、どんな場所? どういう環境が考えられる?
融合:仕事の中で合わせて出来そうな事、一見全く別に見えるけど一緒にするといいかもって事、何かある?
分離:今の状況でこれを切り離したら仕事の負担やストレスが減るとか会社を続けれそうな事はある?
逆転:会社でなく起業や真逆の働き方をして今のしている仕事の内容を続けるとしたら、どんなやり方が考えられる?
3 親としての思い
多分、こんな事は就活指導や転職相談、キャリアコンサルティングなどを受けた時に聞かれたり書き出ししていると思う。
今回「進化思考」という思考法で整理しながら何がそれらと違うと感じるのかを考えると、様々な要素のつながりやその底流に流れる思い・願いを汲み取り、全体を俯瞰した上で現状とは全く違う視点で未来を創り出そうとする考えの磨き方にあるのだろうと思う。(これは私見)
こんな事を全部子どもと一緒に話したり、聞いたりするのは正直無理だけど子どもの気持ちに寄り添ったつもりで「そうだよね、大変だよね」「どっちの道に進んでも親として応援するよ」などというおざなりな対応よりはずっと真摯な態度だったのかもしれない。
もし可能なら親から見た子どもの事を適応で書き出してみるのもいいかもしれないと思う。
誰よりも身近で子ども達の事を大切に見守って来たのは親御さん達なのだから…。
これからも、転職・起業・結婚・出産など子ども達はいろいろな人生の岐路に立つ事だろう。
その時に少しでも親として成長していけたらと心から思う。
そして、この内容が人生の岐路に立ち、どの道を選ぶかを悩むお子さんをお持ちの親御さん達の何かの参考にしてもらえれば、これ程うれしい事はありません。〈終わり〉