「宿命」本を読んだ感想

「宿命」 東野 圭吾(著者)

 1990年の東野圭吾作品としては比較的初期のものになるであろうミステリ作品。あらすじを簡潔にまとめるのが難しいのだか、ざっくり言うと、主人公の刑事・勇作は、日本屈指の電気メーカーの新社長殺害事件を担当するのだが、そこで学生時代に因縁のあった宿敵である電気メーカー創業家の御曹司・晃彦と再会する。

 昔から知る晃彦の性格、再会したときの彼の言動、そして過去にあった勇作にとって思い入れのある事件。様々な要因から勇作は晃彦を犯人だと疑い、独自に調査をしていく。

 ぶっちゃけ物語の序盤はフツーのミステリとして進行していくので、官本が刑事物・ミステリばかりの留置で長期間過ごした身としては、「ザ・ミステリって感じはもう飽きたから、あんまり心そそられないな…」と思っていた。

 でも、後半になるにつれてだんだん「何かありそうだな」となってきて、ぺージをめくるスピードがあがってくる。そして終章、というかラスト10ページくらいでこの作品は本性を、あらわしてくる。

 東野 圭吾の別の名作「秘密」のような感覚だ。もうこのラスト10ページというかラスト1行のためにこの本を読んでいたと言ってもいい。

 殺人事件とは別のところで、マジで全く予想をしてきなかった展開になるので驚かされる。巻末の解説にも書いてあるが、作者もミステリの本質の部分とは別のところでの意外性を意識したらしい。

 登場人物たちが背負っている“ 宿命 ”とはいったい何だったのか、ぜひ読んでみてほしい。

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