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カレーの美学

カレーが好きだ。辛ければ辛いほど、受けて立とうじゃないかって気にさせられていい。職場近くにインド人のやっているカレー屋さんがあり、コロナ禍に見舞われる前は、週に2回は通って激辛カレーを食べていた。

大好きなカレーを前にするとき、私なりのカレーとの向き合い方というか、作法のようなものがある。それは、「逃げ道を作らない」ということ。サラダやデザート、フルーツなどの脇役は先に食べてしまい、逃げ道を断ってから、いざ大将であるカレーに集中する。ひと口ひと口、スプーンで口に運んでは、舌に辛さがゆきわたるのをじっくりと味わう。あぁ、辛い。時には休憩し、大きく息を吐き、ヒリヒリする舌を冷ます。水は食べ終わるまで飲まないのがルール。額ににじむ汗を拭きつつ、辛さと向き合う時、今この瞬間を生きているって実感する。

心がそわそわして落ち着かない時、辛い物を食べるといいと聞いたことがある。辛さという刺激の強い感覚に脳が集中せざるを得ないので、雑念の入る余地がなくなるんだそうだ。それを聞いてから、集中したい日のランチは迷わず激辛カレーを選ぶ。普段から周りの音や声が気になると気が散りやすい私にとって、自分の感覚を取り戻すためにも、カレーは好物である以上に大事な食べ物なのだ。

そんな大好きなカレーだから、武道っぽいアプローチでストイックに楽しみたい。それが私にとってのカレーの美学、いや、単なる趣味だ。


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