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ウェブ会議時に必ず顔を出す理由-メラビアンの法則

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ニュースタンダードという言葉でコロナ下への対応を促される私たち。

ちっとも良いことなんてないため、この変化に順応しなければ疲弊していく一方だろう。

私が働いている会社は3月より全面的に在宅勤務を採用し始めて、今は全社員の95%が在宅勤務になっている。

グローバルのIT企業であるため元々各国担当者との会議用にウェブ会議の仕組みは充実していたしおじさん社員に大人気だったレトロチャットシステムを撤廃して肝いりで導入したslackもある。Boxなどの情報共有のソフトウェアはなぜか5つほど同時に走っていて至れり尽くせりだ!一日10回はクラッシュする赤子のように繊細なメールシステムを除けば、在宅勤務の仕組みは世界一整っているという確信がある。うちで10回クラッシュするんだから他社様は20回はクラッシュしていることでしょう。

そんな好環境であっても、この環境下特有のストレスは皆一様に抱えているようで、職場の人に聞いているとストレスのピークは4月頃だったと聞いている。私は今月、5月だった。

そのストレスはウェブ会議時に今まで容易にできていた意見の着地が困難になったり、水掛け論が多くなりはじめ、じわじわとチーム内に不信感が広がるのを感じたられたためだ。

私のチームは一日平均トータルで1〜2時間ほどのウェブ会議でしかチームと交流しなかったが、その不信感の広がりは明確に感じ取れた。会議以外の時間はイライラすることが多かった。

3密と並んで今年の流行語大賞筆頭のソーシャルディスタンスという言葉がもてはやされている。それは慣れるが、心のディスタンスが広がっていくことは慣れない。

ひとしきり妻に愚痴を聞いてもらった後、解決策の思案に移った。

この原因はウェブ会議時特有の情報の少なさにあるという仮説を立てた。情報が少なくなったのでコミュニケーション不足に陥り、勘違いや理解の相違が多発し、不信感につながった。という考えだ。

では、ウェブ会議時に発信される情報が少なくなる原因は?私のチームにとっていえば、全員がカメラオフにしていることがその主要な要因であると考えた。


この考えに至った理由は、顔は情報伝達手段として大きな役割を担っていると聞いたことがあったためだ。その法則を調べてみた。

人と人とが直接顔を合わせるフェイス・トゥー・フェイス・コミュニケーションには基本的に以下3つの要素がある。
1. 言語
2. 声のトーン (聴覚)
3. 身体言語(ボディーランゲージ) (視覚)

これらの要素が矛盾した内容を送っている状況下において、メッセージ伝達に占める割合、つまり言葉の受け手にとっての解釈の重要度は言葉が7 %、声のトーンや口調は38 %、ボディーランゲージは55 %であり、正しく意図を伝えるためのコミュニケーションには3要素が一致している必要があるというのがこの法則。

例えば以下が3要素が一致している場合。

1. 言語 -「申し訳ありませんでした」
2. 声のトーン (聴覚)- 「か細く弱々しく」
3. 身体言語(ボディーランゲージ) (視覚)- 「お辞儀最敬礼(傾斜角度は45°~90°)」

この場合伝え手の意図は誤解なく受け手に伝わる。

しかし、時に3要素が一致しない場合がある。例えば次のプロポーズの場合。

1. 言語 -「私と結婚してください」
2. 声のトーン (聴覚)- 「低い声、厳かに」

『私と結婚してください』という言葉と真剣な声のトーンだ。今のところこのコミュニケーションの意味するところは明るい未来、新たな人生、幸せに向いている。

しかし人間は慎重だ。この2要素をもってしても言葉の受け手は理解の決着を急がない。その言葉とトーンに対して、ボディーランゲージが一致しているか“答え合わせ”するまで理解の決着は保留するのだ。ではトドメとなるボディーランゲージを見ていこう。


3. 身体言語(ボディーランゲージ) (視覚)- 「いかがわしい本を読みながら目を合わせない。」

ここではボディーランゲージがいかに重要か、法則の55%の強さを見た。このカップルの行く末は読者の想像に任せたい。

なるほどボディーランゲージはコミュニケーションにおいてとても重要なのは分かった。では私のチームのウェブ会議では何が起きたか?仮説を分解してみた。


1. ウェブ会議は言葉とトーンは伝わるが、私のチームでは顔は見えない。

2. ボディーランゲージが見えないため声とトーンから個々人の解釈によってそれぞれのイメージでボディーランゲージ(表情など)が逆算された。

3. それぞれのイメージするボディーランゲージが一致しない機会があり、真の意図が伝え手と受け手または受け手間で共通認識にならなかった。

4. 結果、チーム内で勘違いや理解の相違が増えた。


例えば私のチームのウェブ会議の時、私の報告に対してチームリーダーが『それをもっと早く言ってよ』と言った。この意味について、私は経験則からいって、瞬間的に怒っているイメージを想像した。

しかし彼は見えないカメラの奥で、笑いながら言っていたかもしれない。これは彼の性格的にありえることだ。あるいは、ウインクしながら全然気にしてないよ!というホワイトボードを手に掲げていたかもしれない。これは経験則からありえないが、0%ではない。もしこの2つのボディーランゲージがあれば、私が受け取る意味は違っていた。

ここでのポイントは彼が怒っているというイメージを持つことは根拠の無い妄想であり、また精神衛生的に無価値であるばかりか有害で「早くいうべきだったかもしれない」という意味以外の解釈は不要ということだ。なぜならボディーランゲージは見えないのだから。見えない敵と戦う必要はない。ただし、これは無意識に近い思考であるため、顔をお互いに見る以外の解決策は有効性に乏しい。


ここまで考えてみた結果、次回以降ウェブ会議ではもれなく顔出し率先することを決め、これにメンバーも倣うように実行してみた。長老のようになっているリーダーや、謎のTシャツを着ているメンバーが画面に映し出された。

結果、意思の疎通がうまくいくようになり不信感のある雰囲気は明らかに払拭された。不信感があったときはなぜかすっかり棚上げされていたが、優れた人たちがもともとチームにいたということが再確認された。

副産物として、ただの苦痛でしかなかったカメラオフ無言の瞬間が、顔が見えることで無言の時間が互いの表情を読み取るための重要な時間に変わった。各自のプライベート感まるだしの画面はとても暖かく、コミュニケーションを円滑にした。意思決定が迅速化し、ウェブ会議時にあるあるだったミーティング予定時間が定常的に延長されていた行為が緩和された。

私はこれを続けようと決めた。

負の副産物は、顔に清潔感がないと指摘されたことだ。私は濃厚接触を避けるため6か月間髪を切っておらず、ひげを剃るのも適当だった。

先ほどメルカリですきハサミを300円で購入した。妻に切ってもらおう。


*もし記事用の挿入絵を書いてくださる物好きな方がいたらご一報ください。

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