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生きてるって感覚

認知症の義母は歌が大好きで、以前はコーラスグループに入って活動していた。
今は、BS日テレ 月曜日19:00~ 「BS日本・こころの歌」で『フォレスタ』というプロのコーラスグループが歌う番組を繰り返し見るのが楽しいようだ。

今日も例のごとく、朝からその番組を見ていた。時々、一緒に口ずさみながら。
そして、手を合わせながら、

「音楽聞いてると、生きてるって感覚がすんねん。」

と言った。

す、すごい、なんて音楽は偉大なんだ!!

しみじみ感心していると、今度は、
「アカンかなあ?」と言う。
「どうしたん?」
「ここ、入りたいねん。」
「このコーラスグループに?そ、そうか、そうか、うん、もうそろそろやなあ、うん、行こう!」

そうなのだ、今日は満を持して、オペラのチケットを取っていたのだ。
このご時世、悩んだが、感染対策もされている様子だし、こちらもしっかり気をつけて行ってみよう。
活動的だった義母がもう、デイサービスとショートステイしか行けないなんて、悲しいではないか。

そのオペラにはフォレスタの男性メンバーが数名、出演されるのだ。
予習は充分、会場へ向かった。

初心者にもわかりやすいオペラで、素晴らしい歌声はもちろん、笑いもあり、まるで喜劇を観ているような楽しい公演だった。

義母も、手を叩きながら真剣に観ていたので、連れて来て良かったー、と思った。

帰りの車の中で、
「歌、すごかったなあ。」と話しかけると、
「えっ?あんた、どこ行ってたん?」と、もう忘れてはいたが、観ていた最中は、
『生きてるって感覚』を味わっていたに違いない。
まだまだ生きて、私たちを笑わせてくれるに違いない。

オペラの合間に、フォレスタのメンバーが、狩人の名曲、
『あずさ2号』を歌われた。
拍手をしながら義母が、

「何時って言わはった?」

「8時ちょうど ですよ、おかあさん。」



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