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ビジネス書評

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2018年5月の記事一覧

書評:『すべての道はローマに通ず──ローマ人の物語[電子版]X』(塩野 七生)



ローマ帝国とはすなわち、ローマ文明である。その根幹をなすものは、インフラであろう。インフラすなわち、街道、水道、医療、教育である。

その目的はというと、安全保障、すなわち、平和である。

ローマ人の物語を私は、電子版で読み、kindle端末で読んでいる。しかし、この巻に限っては、iPadでカラーで読んだ。写真が多いからだ。

イタリアに旅行に行ったことがある。一度ではなく、三度ぐらい。面白か

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書評:『賢帝の世紀──ローマ人の物語[電子版]IX』(塩野 七生)



前巻とはうって変わり、賢帝シリーズである。

皇帝と言うと世襲のイメージがあるが、この時代のローマ皇帝に血の繋がりは薄い。一応、血縁ってことになっているけど、養子縁組で次の皇帝を外から取ってきている例も多く、実子が継いでいる例は少ない。世襲というよりは、日本企業の社長が勝手に公認を決めて、禅譲するのに似ている。但し、任期は死ぬまで。伝統的な日本の大企業における社長システムは、ローマ皇帝的なのか

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書評:『危機と克服──ローマ人の物語[電子版]VIII』



一年で何人も総理大臣が変わった自民党の末期を思い出すのが、ガルバ、オットー、ヴィテリウスの「馬鹿三人衆」である。カエサルの血筋による皇帝の継承が終わり(血筋といっても養子が多いけど)、民間人が採用される。採用されるのだが、世襲でない場合、皇帝という仕事がわかっていない人がやるものだから、全く機能しないということが起きた(こちらは、菅直人総理大臣を有した民主党政権を思い出す)。

世襲の社長を批

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書評:『悪名高き皇帝たち──ローマ人の物語[電子版]VII』



アウグストスの後のティベリウス、カリグラ、クラウディウス、ネロを以って、「悪名高き皇帝たち」とされている。悪名が高いのは確かだが、愚かな皇帝だったのとはどうも違うように描かれている。

ティベリウスに関しては、ローマ市民の人気はなかったが、実績は、賢帝の部類の方である。アウグストスの政治をよく継いでいる。ドイツのあたりでは、エルベ川からライン川への戦略的撤退を果たしている。パクスロマーナもしっ

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書評:『ギリシア人の物語III 新しき力』(塩野七生)



塩野七生さんのギリシア三部作の最終巻。マケドニア王フィリッポスとその息子アレキサンドロス大王を巡る物語。あえて、父親としてのフィリッポスに注目して読んでみたい。

漫画「ヒストリエ」に詳しいが、アレキサンダー大王の父親はフィリッポスである。この父、塩野さんも書いているが、なかなかに王としても優秀、父親としても優秀である。

アレクサンダー大王は、騎兵とファランクスという長槍を持った重装歩兵を駆

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